New Audiogram: オルタナティヴミュージック ウェブマガジン

"LAGITAGIDA presents キャタピリズム #02"

LAGITAGIDAの自主企画第2弾が前回と同じく渋谷O-NESTで開催。前回のラインナップでも感じたことだが、彼らが対バンを申し出たアーティストたちの多様さと突っ込み方は、ある意味でバンド自身の音楽性を"共演"というかたちで表現しているようにも感じる。精巧なプロダクションと爆発的なテンション、変拍子やダンスビートなどのポテンシャルを可能なかぎり突き詰めるリズム・セクション。そして新鮮な音楽を求める心意気に至るまで、彼らの審美眼が張り巡らされたイヴェントであったことは間違いない。

最初に登場したLITE。ここ数年でエレクトロニックな音色を随所に導入し飛躍的な成長を遂げている彼らの新たな音の提示が一発で解るライヴ・パフォーマンス。乱暴に言えば近年のBATTLESあたりとも呼応するような実験性をキラキラとカラフルなサウンドへ移植する試みを実践。髪型も変わり、より精悍な顔つきになったギター武田をはじめとしたメンバーのたたずまいにも、この夜も披露された「Red Horse In Blue」、7月6日にリリースされるニュー・アルバム『For all the innocence』からの新曲に顕著にも現れていた。武田がMCで「これほどまでの手ごたえを感じたことはない」とまで言ったその新作に期待しよう。

続いて、噂が噂を呼ぶTADZIO。かわいいルックスと骨太なサウンドによるガールズ2ピース。あまりにも多い絶賛の声を先に耳にしていて、果たして話題先行なのかと勘ぐっていた自分を猛省。まずステージに向かい合ったドラムとギターのふたりのフォルムが完璧。そして、女の子バンドにありがちなつたなさを売りにする態度も皆無。とにかくロックとガレージの本望といえる中音域の音の塊がストレートにかっこいい。アンニュイの欠片もない、ぶっきらぼうに投げ出されるシャウトがモコッとしたドライヴするサウンドと混ざり合う。

TADZIOが終わる間もなくフロア後方のサブステージで急遽出演となったDustin Wongのパフォーマンスがスタートする。卓越したギター・プレイに様々なエフェクトを重ねて豊かな色彩を産み出していく彼の手元にオーディエンスの視線が注がれる。宅録のおもちゃ箱をひっくり返したような風情というよりも、より幽玄で、例えるならHolger Czukayの「Persian Love」がヴァージョンを変えて延々続いていくような味わいをその場で紡ぎ出していく。アフターアワーズでゆっくりと浸りたい、ここではないどこか感に会場が包まれた。

そして主犯のLAGITAGIDA。前回はとにかくカオティックでロマンティックなバンドの持ち味を投げつけるような豪胆さが強かったけれど、この夜のパフォーマンスでは会場限定でリリースされているミニ・アルバム『CaterpiRhythm』からのみならず新曲もプレイされ、これまでのインスト・バンドにはなかなか出せなかった語り口をさらに豊富に吐き出していた。まるで魔法使いのような手さばきで繰り出されるハード・ドライヴィンなサウンドと、それに唖然と、いやうっとりと堪能しているお客さんの姿にある種の多幸感を覚えた。なにかいまわくわくする音を探している、という単純な理由でも構わない。彼らの演奏するライヴ会場に馳せ参じてみることを強く薦める。

Text : Kenji Komai
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)