2015.6.21 (sun) @ Shindaita FEVER, Tokyo
3月20日に交通事故に巻き込まれたことによる負傷でライヴの振替を余儀なくされたジラフポット。その後、サポート・メンバーを入れライヴ活動を行い、6月からはメンバー3人でのライヴを再開させて、6月17日の大阪・心斎橋JANUSでの感覚ピエロとの2マンに続き、東京でのBrian the Sunを迎えてのこの夜。両バンドとも大阪のバンドが東京のライヴハウスで2マンを開催できることの喜びをMCで語っていたものの、気心の知れたバンドの慣れ合いなんかでは決してなく、緊張感漲るパフォーマンスが続いた。
ヴォーカル/ギターの森良太を中心にしたパワフルなグルーヴで魅了するBrian the Sunに続き、FEVERのステージに登場したジラフポットの3人。2月にリリースしたEP『Last Man Standing』のオープニング・ナンバーでもある「Black designer」からライヴはスタートした。彼らの持ち味である疾走感にダークさを加えたこの楽曲は彼らのパワーで押し切るだけではない、なんとも言えない色気が横溢する。そのままEPの2曲目でもある「Stone cold」に続く。インタヴューで「ライヴ映えする曲」という最初のイメージがあったというだけあり、強力なギターのリフがオーディエンスをひきつける。そして『Hydro human』から「HECTOR-G」と、前半は彼らのアグレッシヴなバンド・アンサンブルをたっぷりと見せつける展開だった。
短いMCの後、彼らのリリカルなセンスが開花した「Full Volume Pedal」。どこか郷愁を感じさせるメロディ・ラインとサビへ突き抜ける展開にグッとくる。そしてこちらも耳にこびりつく旋律とダンサブルなビートが融合した「オレンジテレフォン」。『Last Man Standing』は、彼らの野性的で破壊力溢れるサウンドのダイナミック・レンジを4曲に落とし込んだ作品だったが、この夜の彼らの演奏は、イベントやフェスティヴァルの短いセットリストではあえてそぎ落としていた彼らの多様性をステージで拡張していた。
そんな衝動を叩きつけるだけではないジラフポットの魅力を象徴するのが中盤から後半にかけての流れだ。切なさに満ちた「sky walk」、メロディアスな「ウルトラカラフル」、タイトルの通り深い海の底を漂っているような世界観を持つ「超深海魚」、そして『Last Man Standing』ラストのエモーショナルな「ラストソング」。この並びにこそジラフポットの真価がある、と言っても大げさではない、じっくりと、ときにしっとりと曲ごとのカラーを提示するバンドの意志が感じられる時間だった。そして、その「静」の部分があるからこそ、「I don't know don't I」でオーディエンスとのコール&レスポンスを交えフロアとステージの一体感を高め、圧倒的なテンションの「nocebo effect」で締めくくる本編ラストの爆発が引き立っていた。
アンコールに応えた彼らは、冬に新たなミニ・アルバムをリリースするとともに12月に同じこのFEVERでワンマンを行うことを発表。今年3月の下北沢SHELTERでの東京初ワンマンに続くワンマン公演だ。FEVERのステージは次はどんなセットリストで彼らのケミストリーを提示してくれるのか、とにかく期待の高まる内容だった。そして最後に演奏された「明日のない花はない」に、不慮のアクシデントから復活を遂げた彼らからの「これからも迷うことなく突き進む」というファンへのありったけの思いが込められていた。
Text : Kenji Komai
Photo : Tomohiro Kazawaza