2010.7.3 (sat) @ Daikanyama UNIT, Tokyo
2010年7月3日、6周年を迎えた代官山UNITのAnniversaryイヴェントに足を運んだ。代官山UNITの"Anniversary"と言えば、これまでにJames Chance and the Contortions、ESG、Silver Applesなど、まさに伝説中の伝説と言えるような"レジェンド"たちのライヴを実現させてきた、その筋のファンにはすでにお馴染みの名物イヴェントである。今回、6周年を迎えた2010年に登場した"レジェンド"は、なんとクラウト・ロックの重鎮、Cluster! 60年代より、KraftwerkやTangerine Dreamらと並行し、数々の冒険心に溢れたエレクトロニック・ミュージックを送り出し、後のシーンにも絶大なる影響を与えた偉大なるパイオニアであり、早い話が、現在のテクノやアンビエント・ミュージックの"元祖"、"源流"とも言える人たちである。
この"レジェンド"を一目見ようと、会場は早くも鮨詰め状態に。四方八方人がびっしりで、身動きとれず、指先しか動かせないほど。そんな会場の熱気とは裏腹に、静かに登場した"レジェンド"は、ある種の冷気を感じさせるような、透き通った電子音をポツポツと鳴らしはじめる。まるで赤道直下から北極へ一瞬にしてトリップさせられてしまったかのような、その冷やかな音の心地よさに、会場は息を飲む。カタチになった曲を演奏するのではなく、すべて即興で演奏していくという今回のライヴは、穏やかな川の流れに身をまかせながら、様々な季節を流麗に旅していくような……、そんな風情というかある種の大らかさも感じさせた。しかしいまこうして聴いても色あせるどころか、近年、脚光を集めるコズミックやアンビエントとなどの潮流にも接続するような(彼らがオリジネイターだから当然と言えば当然だが)、そのエッジの効いたサウンドには感服のひとこと。終焉後、いまだ進化を続ける伝説を目撃した多くのオーディエンスたちからは、惜しみない拍手が送られた。
そして、この夜の目玉はClusterだけではなかった。ここでは、どうしてももうひとつの"目玉"について触れておかなくてはならない。Clusterのおよそ2時間ほど前に、まさに"衝撃"的なライヴをぶちかましたBorisのことだ。あのライヴ体験をなんと形容したらいいのか、いまだに言葉が見つからない。想像してみて欲しい、いきなり、あなたが猛り狂う巨大な積乱雲の中にポンと放り込まれたとしたら……、いやはや、その"衝撃"たるや言葉で語ってしまおうとすると、何かスケールが小さくなってしまうのだ。とはいえ、そこを忍んで書かせていただけば、ハンパないスケールで掻き鳴らされる、轟音と静寂の嵐といった感じだろうか(うまく言えないー!)。ほとんど照明がない状態で登場した彼らは、TAKESHI (Vocal / Bass / Guitar)、WATA (Guitar / Vocal)、ATSUO (Vocal / Drums)の3名の正式メンバーに加え、サポート・ギターの栗原ミチオの4人編成。幽玄なギター・ノイズが幾層にも重なるダウナーな曲「Farewell」で幕を開けた。MOGWAIがチルアウトを演奏しているようでもあったし、FENNESZがヘヴィメタをやっているようにも聴こえてくる。左右にパンされた音が能を揺さぶる。もうこの時点でどっぷり、どこかに別の世界に連れていかれてしまってたようだ。
2曲目はWATAが歌う「Raibow」。気だるいヴォーカルに、TAKESHIの柔らかなベースが溶け込む。そしてアグレッシブな「8」へ。その後のセットとしては、激しい「Statement」へ続くのだが、即興あり、また轟音がものすごいので、正直、はっきりとした記憶がない。最後は畳みかけるようなノイズが延々と注がれ、ストロボが激しく乱射され、まさに"恍惚"状態で、幕を閉じた。とんでもなくでかい嵐に巻き込まれたような、強烈な衝撃だけを残して、Borisはステージを去っていった。僕も経験少ないなりに、これまで幾度となく"サイケデリック"なライヴやサウンドは観てきたつもりだが、Borisのライヴは、そのどれとも違う。もし興味をもっていただけるなら、ぜひ彼らのライヴに足を運んでみてほしい。絶対に損はさせない。
またこの日は、田中フミヤ、瀧見憲司らの素晴らしいDJがあり、evala、TEN、L?K?O、INNER SCIENCE、タカラダミチノブ、Yoshiki、Yone-Koなど多くの出演者たちが、3フロアをぶち抜きで、それぞれに最高のパフォーマンスを披露していた。このあまりに贅沢な夜、そのことが何よりも代官山UNITというスペースの重要さを物語っている。改めて、代官山UNIT、6周年、おめでとうございます! そしてこれからもよろしく!!
Text : Naohiro kato
Photo : Wataru Umeda