2011.7.6 (wed) @ Shibuya WWW, Tokyo
2009年6月、DEERHUNTERとのカップリング・ツアーで初来日を果たした際は、残念ながら筆者は会場に駆けつけることができなかったのだが……。レーベル資料によると、「イルカは飛ぶわ(もちろんぬいぐるみです・笑)、ダイブしまくるわ、更に移動中にはパトカーに追いかけられるわ、花火付けて会場側に怒られるわ、卓球大会は始まるわ…」なんていうとんでもない逸話が(笑)、かつ、それはどれも痛快で楽しすぎるほど楽しかったことが伝わるエピソードが紹介されている。そんな記念すべき初来日から約3年、AKRON / FAMILYはまたしても新たな伝説を残したと、間違いなく断言できる!
そのライヴの幕開けは、ベーシストMiles Seatonがサンプラーを駆使して鳴らす揺らぐサウンドに、Seth Olinskyのギター・アルペジオが重なった「MEEK WARRIOR」。浮遊感たっぷりのやわらかな音像が広がる中でMilesがベースにスイッチ、Dana Janssenの重厚なドラムも加わりアンサンブルがどんどん分厚くなっていく。それでいて、そのサウンドの中から響いてくるメロディは、なんとも叙情的……。アバンギャルドでありながらキャッチーなエッセンス、ポップなセンスも確実にかいま見せるAKRON / FAMILYの世界観、その真骨頂がライヴ冒頭からいきなり炸裂だ。
そして、メンバーとオーディエンスがひとつになったハンド・クラップで埋め尽くされる渋谷WWW。「RIVER」はDanaが笛の音を奏で、Milesは口笛でやわらかな音色をそこへ重ねる。まるで、会場全体に涼やかな夏風が吹いているかのような心地よさの中、激しいリズムへ再び展開! 延々とループするサウンドが恍惚感を誘う中で、Danaはおもむろに立ち上がりビートを鳴らすのをリズム・マシンに託したのは「ISLAND」。この1曲は間違いなく、前半戦のハイライト・シーン! ステージ上には巨漢の白人男性が登場、Sethのスピーチを流暢な日本語でオーディエンスへ訳して伝える。
「元気ですか? この曲には特別なダンスが付いています、教えたいと思います。最初は右手を伸ばして、そして、人差し指を伸ばして、深呼吸して、まだ深呼吸……。そして、目を閉じて、想像して……。自分は、ビーチにいます。海は穏やかで、美しく、木々が揺れる。オッケー、レディー! 1、2、3、4──」
延々と刻み続けるリズム、そして、どこまでも広がっていきそうな雄大な音像。そのアンサンブルが醸し出すムードはまるで、何かの呪術のよう……。そして、ステージ上のメンバーもフロアのオーディエンスもみな両手を掲げ、音に合わせて揺らし続ける。そして、吐息も楽器の一部と化したかのように全員でタイミングを合わせ、それをリズムの一部と歌詞となり、その場にある音と声全てがひとつになる。一見、自己啓発セミナーか何かの光景にも見えなくないが(笑)、ステージと客席の垣根は一切ない、その場にいる全ての人間が音の世界に入り込んでいるその光景はただただ幸福感に満ち溢れている。
ステージと客席の垣根は一切ないといえば、「Another Sky」から始まった中盤ブロックも強烈だった。躍動的なイントロのギターからジャングル・ビート的リズムへ展開、身体の芯までズンズン響くサウンドにオーディエンスが踊り狂う。そのフロアへSethが飛び降り、白いガムテープで客席全体をグルーッと取り囲む(笑)。そして、その人波の前方ではMilesがオーディエンスの頭上にダイヴをかまし、激しくボディ・コンタクト! Danaが刻むリズムに乗って、会場全体が手拍子とコーラスで埋め尽くされる中でステージに目をやると、今日の対バン相手・不失者の灰野敬二が登場! AKRON / FAMILYのラテン系ビートに轟音ギターを重ね、耳をつんざくような爆音、そして躍動的なリズムを生み出すセッションは、このまま朝まで続いていくんじゃないかと思うほど両者の呼吸が見事に融合していることが伝わってくる。あまりにも激しく、かつ恍惚的、そして圧巻の音像に、灰野がステージを去ったあとはその場にしばし立ち尽くすしか術はなかった。
他にも、雷鳴のような激しいSEから激しく割れた音がうねり、Sethが指を鳴らしてほのぼおとしたムードのテンポを奏でた「SO IT GOES」や、爆音ギター・リフから美しい音の粒が煌いた本編ラスト「SILLY BEARS」。そして、本編の尋常じゃない興奮を癒すかのように穏やかな音色で幕を空け、かと思えば轟音が再び鳴り響いたアンコールの「FUJI 2」「LIGHT EMERGES」など……。神経に直接刺激が響くようなアグレッシブなサウンド、その刺激を癒すかのような穏やかなサウンド、そして、ときに意味不明な(笑)メンバーのパフォーマンスなど、一寸先の展開がまるで予想できないこんな空間はAKRON / FAMILYにしか絶対に作ることが出来ないものだろう。ライヴが終わった瞬間の数十分間は、ステージ上のメンバーとフロアのオーディエンスが作った濃密な空気を吸いすぎたために筆者はほぼ茫然自失状態になるほど(笑)、それはあまりにも凄まじい空間だった。音楽とは、かくも自由な表現方法なのか……。既成概念にとらわれない、刺激的な音楽体験を久しぶりにさせてくれたAKRON / FAMILY、その存在はまさしく唯一無二と表現するほかない!
Text : Toshitomo Domei
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