2009.7.28 (tue) @ Shibuya O-EAST, Tokyo
ニュー・シングル「BACK ON MY FEET」のリリースを記念しておこなわれた、BOOM BOOM SATELLITESの一夜限定プレミア・ライヴ。平日の夜にもかかわらず、もちろんフロアは超満員だ。1曲目「ALL IN A DAY」(ニュー・シングルに収録された新曲)のオープニングとともにステージ上のライトがゆっくりとせり上がり、黒幕にシルヴァーのラメで描かれた「b」マークが徐々に顔を出す。音の洪水に呑み込まれながらそれを見ていると、しだいに重力がなくなり、上下右左がわからなくなっていくような不思議な感覚に包まれる。たとえるならそれは、ライヴ・ハウスという名のスペースシップに乗って、宇宙遊泳を始めるような高揚感。中野雅之と川島道行、ふたりの機長は次々と移り変わっていくリズムを自在に操り、右へ左へ激しく航路を変えながらばく進していく。
「ALL IN A DAY」に続き、早くも2曲目に投下されたのが「BACK ON MY FEET」。肉感的なドラミングと切っ先鋭いデジタル・ビートが共存するこの曲は、現在のふたりのモードとテンションを端的に伝えるものだ。10年以上も前からエレクトロとロックの融合を推し進めてきたが、いま彼らが手にしているのはダンス・ミュージックの享楽よりも、ロックの衝動のほうが強いと言えるだろう。この日、会場の空気を操っていたのは、生ドラムによる躍動感あふれるビートだった。ヒトが叩き出すリズムには、かすかな揺らぎがある。ステージ上のふたりは、その数値化できないわずかなブレや間合いを楽しむように体を揺らし、呼吸を合わせ、ステージ前方に進んではギターとベースを弾きまくる。ときには川島がギターを置いてヴォーカルに徹することもあれば、ときには中野がベースを振りかざして観客を煽ることもある。そんなふたりの熱いアクションが、フロアとステージの距離を近づけていった。
中盤に披露された「Moment I Count」といったライヴの定番曲も、音源よりもはるかに大仰で暴力的なサウンドに変貌。何度も何度も派手に展開を変えていく特盛りのアレンジで、マシンガンのような重いビートを打ちまくる。そして川島がヴォーカリストとしての力量を見せつける「CAUGHT IN THE SUN」では、エコーがかった歌声が幻想的に響くイントロから、アッパーなブレイクビーツによる陶酔ノイズの渦へ。サイケな音の波に身をゆだねていると、こめかみを掴まれ、ぐぐっと上に持ち上げられているような快感に襲われるのは私だけだろうか。川島が真っ白な強い光に包まれて歌い上げるさまは、まさに太陽に近づいてしまったスリルと恍惚感を体現するものだった。
本編ラストの「FOGBOUND」では、床も空気もビリビリと震える轟音とギターのハウリング音、レトロフューチャーなシンセ音の三つ巴でフロアを頂点へ導いていく。ドラマーがハイハットを打ちまくり、一瞬の無音から爆音への急展開を繰り返し、最後にはもはや原曲のかたちもなくなるカオスな展開でフロアは沸騰状態。この日、2度のアンコールを経て、寡黙なふたりが発した言葉は演奏後のただ一言、「ありがとう」だけ。もちろん、それ以上の言葉は必要なかった。新たなステージへ向かうふたりの心意気は、そのサウンドから充分伝わってきたからだ。
Text : Reiko Tsuzura
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