2011.7.17 (sun) @ YOKOHAMA ARENA
ASIAN KUNG-FU GENERATION / 佐野元春 and The Hobo King Band / 星野源 / THE RENTALS / THE YOUNG PUNX! & PHONAT / MANIC STREET PREACHERS / ストレイテナー / BOOM BOOM SATELLITES / モーモールルギャバン / WE ARE SCIENTISTS
"NANO-MUGEN FES.2011"2日目。フードエリアで腹ごしらえ、グッズのチェックなどなど、開演前からフェス全体の空気を楽しむオーディエンスのリラックスしたムードが、約10時間に及ぶ濃密な時間へのタフなものに感じられて頼もしい。全10アクト、約10時間。少々、端折り気味な紹介になることをご了承いただきたいが、さぁ2日目のハイライトを振り返っていこう。
開演に先駆けての前説にキヨシくん&山ちゃんが登場。やんやの歓声の中、「僕が大好きでずっとオファーしてたんですが、今年やっと念願が叶いました」(キヨシ)という紹介で、のっけから大ネタ投入のBOOM BOOM SATELLITESがオーディエンスに手を振りながら登場。クールに構築されつつ、徐々に熱を帯びてくる「DIG THE NEW BREED」でスタート。新しい息吹を探し続けるというメッセージが今年の同フェスに偶然かもしれないがすさまじくマッチしている。
川島のみならず、中野もよく動き、すっかりBBSの心臓部となった福田洋子の重くソリッドなドラムが全体像を引き締める。その後もキラー・チューン「KICK IT OUT」で昼間の横アリをダンス・フロアに変貌させ、ラスト・チューン「STAY」の真摯なサウンドとメッセージに会場が一体になった時、50分弱のセットとは思えないほどBBSの<痕跡>が残された。意表を突くオープニングに、早くも興奮と背筋の伸びる思いが交錯する。
続いてカオティックかつポップなステージで度肝を抜いたモーモールルギャバン。そして、ステージ下手にしつらえられたACOUSTIC STAGEに星野源が登場。アコギの弾き語りを前触れもなく開始し、いきなり歌の世界へ会場が集中するのがわかる。
ソロ・シンガーとしてのデビュー作『ばかの歌』から、「キッチン」「ばらばら」「くせのうた」など、日常の中にある別にかっこよくも美しくもないリアルな情景を切り取った歌が続くのだが、MCでも自身の作風に触れ、「昔から僕の歌は『死にたくなるねぇ』とか言われるんですけど(笑)、それは褒め言葉として捉えてて。最近、いつ死ぬかなんてわかんないじゃないですか? だから死を思うほうがいいと思ってるんです」と淡々と話した。日々を少しでも楽しく意義あるものにするために考えるごく普通で本当のこと。ラストの「くだらないの中に」で、多くの初見の人も涙を流していたように思う。明らかに前半のハイライト。余談だが、ゴッチの母上は星野くんの歌に感動し、さっそくCDを購入したことをゴッチのツイートで知った。そんな力のあるステージだった。
続いてバンドっぽさを増したWE ARE SCIENTIST、カラフルな映像でDANCE STAGEを小さなクラブに変身させたTHE YOUNG PUNX!&PHONAT、そしてNANO-MUGEN史上最高のベテラーノ、佐野元春の登場に若いリスナーも歓声を上げる。ゴッチもヴォーカル参加した「約束の橋」をはじめ、「SOMEDAY」「アンジェリーナ」と代表曲のオンパレードであるにも関わらず2011年の佐野元春をしっかり印象づけてくれた。
後半戦は同フェス最多出演のストレイテナーが怒涛のような歓声に迎えられて登場。ホリエ自身も「NANO-MUGENはホームだから(笑)」と、主催者を食う勢いで、しかもマイペースに文字通りの鉄板ナンバー「KILLER TUNE(Natural Born Killer Tune Mix)」や「PLAY THE STAR GUITAR」で走り続ける。
ひなっちの太く流麗なベースがアリーナの端々まで響き渡る「VANDALISM」などでフックをつけつつ、「ゴッチが大好きな曲」とホリエが曲紹介した「CLARITY」のコーラス・ワークの必然に酔い、新曲「羊の群れは丘を登る」では新しいテナーの緻密なアンサンブルを含めたメロディへのアプローチが印象的で、その余韻に浸る間もなく「Melodic Storm」で果てしない世界に飛んでいくような自由を体感。
続くACOUSTIC STAGEでは連日、大暴れ(とういか大はしゃぎ?)のマット・シャープ率いるTHE RENTALSを、ASHと時にアジカンのメンバーもサポートしての大騒ぎが羨ましいほどのパーティ感。そんな和やかさに浸っているとMCで建ちゃん&山ちゃん登場。前回はすんでのところでメンバーの急病により出演が叶わなかったMANIC STREET PREACHERSについて「もうオーラが違ってて、声かけられなかった」と建ちゃん。言葉少なに敬愛するバンドを紹介した。
さてそのマニックス、もう貫禄が違う。フジロックでもライヴは観ていたが、室内の巨大スペースが恐ろしく似合う。のっけから「You Love Us」のバランスのいい轟音でリスナーを吸引。ビッグ・アーティストでありつつ、ラスト・パンクヒーローの矜持を残す佇まい。そしてジェームスの力強く伸びやかなヴォーカル、リフからリードまでシュアなギター。バンドとしての基礎体力はさすがベテランなのだが、彼らの推進力はやはりメッセージにあるのだとも思う。ニッキーが「リッチーに捧げる」と紹介した「Motorcycle Emptiness」の失われない輝き。ブリティッシュ・ロック、美メロの血脈「A Design for Life」まで充実した約1時間のステージ。曲折を経てきたバンドの重厚な存在感はもちろん、バンドで音を鳴らすという"事実"がかけがえのないものなのだと感じた。
そして今年の大トリはアジカン。ワンマン・ライヴ並みのオリジナルなライティングなどの演出にいい緊張感が高まる中、なんと「リライト」でスタート。ベスト的選曲というより、あまたの代表曲が今どう伝わるのか? それはバンド/リスナー双方にとってのチャレンジだと言わんばかりにこの後も初期ナンバーを盛りこんでいく。曲目が進んでいく中で音のバランスも音量もベストなものに進化していく。
同イヴェントのコンピ盤にも収録された「All right part2」の祈りを遠くに飛ばすようなゴッチの歌。演奏の緩急が心象の変化を彩る「アフターダーク」(この日の"進め!"の強度と言ったら!)。建ちゃんとゴッチのギターの抜き差しも決まった「ブルートレイン」、シンプルなだけじゃない8ビートの強さを感じる「未来の破片」、大きなグルーヴを湛えた曲に育った「ソラニン」と、1曲ごとにバンドの音を鳴らす意思が伝わる。そして終盤前、ゴッチは「正直、今年は開催できるかもわからなかった。それ以前に表現者ヅラしつつも東北がどうなってるのか見に行きたいなんて野次馬根性もない訳じゃなかったけど、俺が行っても迷惑だろうし。俺の音楽を好きじゃないヤツにとってはクソだろうし」と、震災後の心の揺れを吐露。
「でも好きで音楽作ってるんだから、何言われても関係ないなって思った」……決意と覚醒は彼の個人的な活動(被災地支援や新聞『THE FUTURE TIMES』の発刊)のみならず、今年のNANO-MUGENでのバンドとのコラボレーションなどにも繋がったんだと思う。
終盤はマット・シャープらも飛び入りしての「君という花」、本編ラストは、発表以上に鮮烈な希望を演奏で体現した「転がる岩、君に朝が降る」。そしてアンコールで登場し、ラストを飾ったのはアジカンがバンドとして、リズムやアレンジにアグレッシヴに挑んだ「新世紀のラブソング」! 音楽的な挑戦を果たし、ツアーでモノにしてきたこの曲は、今年のNANO-MUGENを象徴していた。
新しいバンドと出会う喜びに加え、この日に感じた人と人のつながりや、音楽が鳴っている原初的な歓喜は、翌日からの日常を慰めるものではなく、現実に活かしていきたい本物のパワーに満ちていた。3.11以降の新たな音楽フェスがそこにはあった。
Text : Yuka Ishizumi
Photo : TEPPEI (BOOM BOOM SATELLITES / 星野源 / ストレイテナー / MANIC STREET PREACHERS) / Kazumichi Kokei (モーモールルギャバン / 佐野元春 and The Hobo King Band / ASIAN KUNG-FU GENERATION)
"NANO-MUGEN FES" OFFICIAL WEBSITE
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