New Audiogram: オルタナティヴミュージック ウェブマガジン

THE BEACHES "Tour 2008 波に乗りたい～POLICE & GIRLS & BOYS 編～"

THE BEACHESの「POLICE&GIRLS&BOYS」は、シングルでありながらバンドの折衷的な音楽性を濃厚に味わうことのできる作品であった。さらに初となるライヴ音源が収録されていたことも、彼らの現在のライヴ・パフォーマンスへの自信の表われであると思う。

ツアーファイナルに最初に登場し迎え撃った8ottoは、相変わらずブ厚いガレージーな音、マエノソノの存在感ある歌と圧倒的なバンドのタフなエネルギーが満ちていた。マエノソノがパーカッションを抱えながら咆哮するラストのカオティックな「VOO DOO バウアー」まで、とにかく気迫こもりまくりのステージ。

そして"DISCO SANDINISTA"というイベントを仕切っている彼ららしく、ザ・クラッシュの傑作『SANDINISTA!』収録のカリプソな「Let's Go Crazy」に乗ってメンバーが登場。そのBGMのBPMからドラムのdijがビートを繋ぎ「POLICE&GIRLS&BOYS」が幕を開けるというオープニングからしびれる。そしてDJがスムースなミックスをするように、そのまま「wikiwiki」へなだれ込むと、もうフロアはお祭り状態。しかしこんなに踊っているライヴハウスの客席は久しぶりかも。壮観ともいえる会場内、誰もが彼らの打ち出すグッド・ミュージックの波に乗りまくっている。世界のシーンと同様にディスコパンク/ニューウェーイヴ・リバイバルが起こっているとされる日本だが、その先のバイレ・ファンキ/ボルチモア・ブレイクスに至るまでディグしているアーティストはまだまだ少ない。だから、THE BEACHESこそが、その下世話さまでも含めて音にしている、それこそCSSらにもっとも近いバンドなんだ。

最新シングルからまさしくクラッシュ経由なダブなベースラインの「RAY-BAN」。「まだまだ踊り足りないよね」というヒサシTHE KIDの言葉に続き、ザ・クラッシュの秀逸な日本語カバー「BANK ROBBER」これをゆったりとしたレゲエではなく、性急なラテンタッチで料理してしまう彼らの懐の深さ、そしてビートに対する嗅覚というのは他のバンドはかなわない。音源よりもさらにスピード感とキラキラ感を増した仕様の「ファソラDON'T LET ME DOWN」の興奮はライヴがクライマックスに到達してきていることの証だ。ヒサシの、隣の兄ちゃん的カリスマ性もさることながら、彼がギターを持たずに歌う場面も少なくないのだが、その際のTOMOTOMO clubとdijのリズムセクションのとんでもない表現力と、r.u.koのキンキーなキーボードが織りなすグルーヴがこのバンドの要なのだなということを強く印象づける。終盤ではヒサシはフロアに降りてきてオーディエンスとともに踊り、大合唱。ロックな「RIGHT HERE RIGHT NOW」、そしてファンカラティーナなアンセム「SUNSET SUNRISE」で締めくくられた。

「日々ダンス＆ロールして一緒に楽しむだけ」と彼が言うように、THE BEACHESのライヴは、自らの快楽原則に忠実になれる、そんなヴァイヴの満ちた場所であることを再確認する。いつだってTHE BEACHESは僕らをどこかへ連れていってくれる存在なのだ。最高の週末をありがとう！

Text : Kenji Komai
Photo : Kenji Kubo