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MASS OF THE FERMENTING DREGS "視界をクリアに"

バンドにとって、オリジナル・アルバム・リリース後のワンマン・ライヴやツアーこそが"主戦場"なのだという当然のことをこれでもかっ！ とまでに自問＆投げかけを増幅しながら体感させてくれた2時間だった。1stフル・アルバム『ゼロコンマ、色とりどりの世界』リリース後、初の本格的なライヴとなったこの日のSHIBUYA-AX。

入場してまず驚いたのが客席に設置されたセンター・ステージ。そしてそれを取り囲むファン。必然的にメンバーはプロレス入場になるワケで、走りこむようにステージに上がったなっちゃん、チエミちゃんはお客さんとハイタッチ。ドラムの吉野さんもこんな笑顔の人だっけ？ と驚くぐらいのハイテンション。1曲目はアルバム・タイトル・チューン。黄色のワンピース＆素足のなっちゃんの掛け声もろとも大きなグルーヴを成して、すでにAXの天井を突き破りそうだ。

センター・ステージはメンバーの"視界をクリア"にするのみならず、お客さん同士の顔が見えるという利点も発見。男性・女性、10代から30代と見受けるあらゆる人が爆発するような笑顔。これはアガる。アガらずにいられない。なっちゃんの全身を使ってもなおまだ何かが足りないといわんばかりのアクション、コードでつぶさずに効果的にリフと単音とエフェクトで曲の世界観を作り出すチエミちゃん、しなやかでありつつ怒涛のような地響きを生み出す吉野さん。8月のアルバム・リリ―ス後のタワレコでの全曲曲順通りに演奏したライヴ以来となるこの日までに膨張しきったエネルギーが充満。しかし、アルバムがそうだったように、これまでの轟音オルタナ・バンドのイメージを超えた、しなやかさを備えた曲群が3人3様の演奏で実現している。

リリース後のワンマンのこの日まで「曲を作ったはいいが、曲の行く先がわからなかった」とMCで話すなっちゃん。それをどうしたかったと言葉にせず、一瞬、間を置き「歌います」とはじめられた「ONEDAY」から伝わる、このたった今のかけがえのなさ。馬鹿みたいな感想だが、マスドレはアップもミドルもスローも曲がいいのだ。ことに爆音に近い音量で改めて曲のよさを感じさせる演奏の緩急に感動した。中盤には初期のインタビューなどでは割と語っていた、なっちゃん、チエミちゃん共通のティーンエイジ時代のアイドル、hideのナンバーから「FLAME」をカヴァー。思いっきりラウド・ヘヴィ・ロックでありつつ、サビはポップ。「バンドをやりたいと思ったきっかけのひとりである人の曲をします」。そう。誰もが無邪気に音楽を好きになって、ロックやバンドこそが最強の武器だと信じて疑わない青い季節の芯は今も全くブレていない。ただ、その周りにあった子どもっぽさ……、妙なネガティヴィティなどなどが、音楽を作り続けることで削がれていった先にあるのが、今の笑顔なんだと思う。

メインマイクだけじゃ届かないとばかりにステージ隅にも設置されたマイクへ飛びかかるように歌うなっちゃん＆チエミちゃん。十二分に渾身の力を出してなお、最終盤に「RAT」、「ひきずるビート」、「ハイライト」、「ベアーズ」という超ハイ＆超ど級の4連発。喜怒哀楽とその間、あらゆる感覚と感情が、音という悦びのパワーに転化されていくドキュメントを目撃させてもらった。

Text : Yuka Ishizumi
Photo : Shigeo Kikuchi

-Set List-
01. ゼロコンマ、色とりどりの世界
02. かくいうもの
03. She is inside, He is outside
04. I F A SURFER
05. このスピードの先へ
06. 青い、濃い、橙色の日
07. 終わりのはじまり
08. ONEDAY
09. サイダーと君
10. ズレる
11. FLAME （hide　cover）
12. エンドロール
13. delusionalism
14. まで。
15. ワールドイズユアーズ
16. skabetty
17. さんざめく
18. RAT
19. ひきずるビート
20. ハイライト
21. ベアーズ

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