2008.9.22 (mon) @ Akasaka BLITZ, Tokyo
メンバーが口々に「これまで一番大きい」と言っていたように、シングル「会社員と今の私」、DVD『ラディカルホリデー その0』リリース・パーティは、バンド史上最大キャパの赤坂ブリッツにて。
彼ららしく、生活純子なる女子アナ風の女性がこの日のイベントの前説をするとぼけた映像から、まずはゲストの清水ミチコが登場。ピアノの弾き語りで天才的なモノマネの数々を披露していく。井上陽水、矢野顕子、三輪明宏、山本モナなど新旧織り交ぜたレパートリーがものすごい勢いで繰り出される。思わず目をつぶって聴き入ってしまうほどの完璧なモノマネに感涙した。
もうこれ以上ないほどの盛り上がりを見せた会場に、メンバーが登場。ほのぼのとした「進化」から、アグレッシヴでいて、とても豊かな演奏がスタート。ハマケンによるトロンボーンは、時に牧歌的な、時にせつないムードを漂わせながら、新曲「菌」では、跳ねるリズムがSAKEROCK独特のグルーヴを生み出す。続く新曲「最北端」からは、伊藤大地とグッドラックヘイワも組んでいる野村卓史がキーボードとして参加。星野の巧みなマリンバも加わり、情感豊かな音世界を展開。かと思えば一転、「会社員」ではファンキーなパフォーマンス、と、じつにカラフルだ。
そして、11月5日に決定しているニュー・アルバム『ホニャララ』の告知の後は、のどかな雰囲気漂う「電車」から、名曲「今の私」へと。伊藤は手でドラムを叩きつつ、口笛で、この郷愁感たっぷりの美しい曲を奏でていく。そのメロディはあくまで馴染みの深い歌謡曲や童謡などを連想させるもので、その親しみやすさから、聴き手はインスト曲であってもそこに感情を込めることができる、身近な、日常に寄り添うものとして受け取れるのだろう。
本編最後は、すっかり定番となった、ハマケンのラップ?語り?と伊藤のドラムのアドリブの掛け合いバトル。この日はなかなかハマケンのアドリブが決まらず、延々10分。ようやく収まったところで、「生活」。この、温かで楽しげな幕にふさわしい1曲で、一旦メンバーは袖へ。
アンコールでは「選手」を、思い入れたっぷりに演奏して帰っていった、と思ったのも束の間、それぞれ楽器を持ち替えて、「完全即興バンド」カシュー&ナッツとして再登場。担当は、ハマケンがヴォーカル(ここは変わらず)、ドラム・星野源、ベース・伊藤大地・ギター、田中馨。ここからは完全に、学芸会か結婚式の2次会のような、身内(=メンバー)が楽しむための時間のよう。とはいえ、またしてもフリースタイルで即興演奏に合わせ歌うハマケンは、メンバーでなくてもおもしろい。この後再びSAKEROCKに戻って、ミラーボールがキラめくなか「京都」を演奏し、2時間に及んだライヴが終了。
SAKEROCKの不思議なところは、ある括りで言えばインスト・バンドなのだけど、トロンボーンとギターの豊かなメロディとともに、リスナーには“歌モノ”としてインプットされているだろうし、タイトでアイディアに溢れたドラムやメロディ・メイカーとしての才能も見せるベースを擁しながらも、彼らにジャム・バンドといった気取りはひとかけらもない。彼らのステージには純然たるポップスとしての音楽と笑いがあるだけ。SAKEROCKはまさに、そんな愛おしいバンドなのだ、ということを改めて感じたライヴだった。
Text : Ayumi Tsuchizawa