2008.9.23 (tue) @ LIQUIDROOM ebisu, Tokyo
ACTs : ZAZEN BOYS / envy / WRENCH
もし誰かに、今年の9月23日はどんな日だった?と聞かれたら、自分は間違いなく、爆音の日だったと答えるでしょう。この日は、恵比寿リキッドルームの4周年記念&WRENCHのコラボレーション・ニュー・アルバム『drub』リリース・パーティが行われたのでした。出演バンドは、WRENCH、envy、ZAZEN BOYSという、強力すぎる3バンドが集結。爆音といっても、単に音がデカかっただけじゃなく、3バンドの放つ音楽がとにかくバーストしまくっていたのだ。
まず、先発を買って出たのは、ニュー・アルバム『ZAZEN BOYS 4』を発表したばかりのZAZEN BOYS。「MATSURI STUDIOからやって参りました……」という、恒例の向井秀徳の口上からライヴがスタート。超タイトでダイナミックなサウンドを、4人のメンバーが一体となり、これでもかといわんばかりに叩きだしていく。向井は、ギターだけでなくキーボードも弾き、歌いまくり、ドラムの松下敦は、もはやジョン・ボーナム状態。新作で聴かれたクラブ・ミュージック的な音像も、生のプレイでさらに強力なものとなり、観客は彼らの世界観にグイーッと惹き付けられていく。
ファンキーな4つ打ちからマスロック的な複雑な展開も自在に操る彼らのサウンドは、P.I.L.とレッド・ツェッペリンとスタンリー・クラークとスピリット・キャッチャーが、四つどもえの総合格闘技を戦っているかのような(!?)スリリングさを感じてしまったほどだ。
続いての登場は、日本が誇る激情系ハードコアバンドenvy。しょっぱなから、轟音ノイジーなギター・サウンドをこれでもかといわんばかりに畳みかける。Tetsuya Furugawaのエモーショナルなシャウトがこれまたすごい。ミッドテンポでジワジワと攻めてたてるような緊迫感たっぷりの音の塊に、観客も圧倒されっぱなし。さらに、高速チューンやスローテンポでせつないメロディを聴かせるスケールの大きな彼らの世界観は、以前にも増して強烈なものとなっていた。5人が作り上げる壮大なサウンドは、重厚な映画でも見ているような錯覚さえ覚える。
個人的な話をすると、そのころやたらイライラ感モヤモヤ感みたいな気分があったのだが、彼らのライヴを観ていたら、それがどんどん薄らいでいったのだ。音はモノに吸収されると熱に変わるそうだが、彼らの放つ轟音が体の芯までザクザクと突き刺さり、凍てつく気持ちを熱で溶かしてくれたのかもしれない。怒涛のサウンドは、時に癒しを与えてくれるのだということを、彼らの音楽が教えてくれた。
さあ、トリを飾るWRENCHだって、前の2バンドには負けちゃいない。新作『drub』からのナンバーを中心に構成されたセットリストで、アッパーチューンを思いっきり披露していく。シンセに囲まれながら叫ぶように歌うSHIGEの気合いが、ひしひしと伝わってくる。
レーザーがバシバシ飛びカラフルな照明がきらめく会場は、観客が踊りまくり、もはやダンスフロア状態。ヘヴィな変拍子が炸裂するサウンドの中を、オートチューンをかけたSHIGEのボーカルが駆け抜けたかと思えば、ミッドテンポでハードなロック・ナンバーを聴かせたりと、緩急自在の楽曲を続々と繰り出していく4人のメンバー。そのアゲアゲなグルーヴ感は、後半に行くにしたがってますますクレイジーに炸裂。ミニマルなシンセが鳴り響き、気がつけばSHIGEは全裸状態!ハイテンションを最後までキープしながら、衝動の固まりのようなライヴを存分に見せつけてくれた。
強力な個性を持った3バンドが相互作用しながら、ミラクルな空間を作り上げていく様を見せてくれたこの日のライヴ。だいぶいろんな現場で鍛えられた自分の鼓膜も、この日ばかりは耳鳴りがしばらく止まなかった。でも、それでいいんです。この心地良さこそ、ロックの、そしてライヴの醍醐味なのだから。
Text : Keisuke Tsuchiya
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)