2010.10.11 (mon) Shibuya AX, Tokyo
こういう形でバンドの"特別な日"に立ち会うことは複雑な気分だったが、彼らがライヴ復活を決定したこと自体、すでに臨戦態勢なのだ。ファンも気持ちこそ「おかえり! おめでとう」なのだが、テンションは超前のめりで、冒頭の気分はとっとと払拭される。
ほぼ定刻に暗転、絶叫に近いファンの声援に迎えられて、JIMが走りこみ、ROYが早速シャウトをかまし、「I'M A LOVE MAN」、「HOTDOG」、「KEEP ON ROCKIN'」3連発。JIMは回転しつつつ、大きくギターをブン回しながら、ステージを駆ける。飛ばしすぎじゃねぇ? と思いつつも泣き笑いを誘うほど、メンバーとファンの再会は尋常ではない熱量に達している。「ちょっと飛ばしすぎました」。ペース配分無視の展開を自分で突っ込むROY。おなじみROYの敬語MCも、ふだん以上に愛と感謝に満ち溢れる。
数曲を演奏し終え、ROYが事故じゃなく普段のツアー中のMARCYの"ONE PIECEのエースのフィギュア溺愛"に触れ、爆笑を誘い、しかし事故でそのフィギュアだけが大破。「MARCYの代わりになってくれたんだね」(ROY)の振りに「ルフィの気持ちが分かりました」と返すMARCYに拍手喝采。会場の壁がひび割れるようなシャウトを聴かせるROYはその瞬間、野獣だが、メンバーに話を振るときはバンドのお母さんみたく、かいがいしい。もちろん、演奏もシュアにソリッドにキメていく。特に広いステージで見る、MARCYのROYの歌のアレンジに沿った気の利いたプレイ、TAXMANのソリッドでシュアなカッティング。どっちがいいという問題じゃないが、エフェクティヴなギター・サウンドに慣れた最近の耳に、恐ろしくいいギター本来の素の音が刺さる。本編中盤では「ゲストはTHE BAWDIES!」という「??」の中、巨大なバンド名電飾がソロソロ下りてくる。最高だ。電飾がこんなに似合うバンド、少なくとも2000年代に見たことない。
本編終盤は踊らずにいるのがほぼ拷問状態の「IT'S TOO LATE」でそこにいる人間のソウル汁を全放出させてしまった。もちろん、今回の不慮の交通事故による、ツアーの一部延期という危機を乗り越え、どれだけバンドがファンや周囲に支えられているかを実感したことにダイレクトに関係しているのは自明だ。でも、彼らのスタイルはバンドがブラック・ミュージックのルーツに痺れ、探求しまくり、結果、非常にオリジナルなものに昇華した、その積み上げがなければここまで若いリスナーをまるでエクストリーム系ライヴの如き、サークルモッシュを生み出させたりはしないだろう。オーセンティックなロックンロールとR & Bをベースにし、しかも全編英語詞のバンドであるTHE BAWDIESが、いかに演奏が素晴らしく、ルックスもいいからといって、何故今、ここまでの求心力を持ちえたのか? そのヒントはロックンロール自体は進化しないが、人間は時代によって変化するからなんだ、とライヴ中、何度も確信した。自分を更新できる人間がやるロックンロールこそが新しい。恐らく、メンバー全員の思いだろうが、この日何度もROYが叫んだ「生きててよかったー!」。200%のリアリティで受け止めさせていただきましたっ。
Text : Yuka Ishizumi
Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)
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