2011.9.18 (sun) @ YOKOHAMA STADIUM, Kanagawa
ACTs : Hi-STANDARD / BRAHMAN / FACT / the HIATUS / 磯部正文BAND / KGDR / LOW IQ 01 & MASTER LOW / マキシマム ザ ホルモン / ME FIRST AND THE GIMME GIMMES (from US) / MURPHY'S LAW (from US) / Pay money To my Pain / SCAFULL KING / SUBLIME with ROME (from US) / 10-FEET / TURTLE ISLAND / WAGDUG FUTURISTIC UNITY (Hi-STANDARD以降、アルファベット順)
今回の"AIR JAM 2011"は震災を抜きにして語れない。それが過去の"AIR JAM"とは決定的に違う点だ。11年ぶりにHi-STANDARDが奇跡の復活を果たしたのも、3.11以降に決められたことである。最寄駅・日本大通り駅から横浜スタジアムまで歩くと、すでに通販で購入済みのAIR JAM公式Tシャツを着た人たちで溢れ返り、真夏に逆戻りしたようなギラギラした太陽がやけに眩しかった。これ以上ない天候に恵まれ、スタジアム内に入ると、アリーナ後方にスケート・ランプが設置され、スケーターやBMXライダーが演技を繰り広げる様は、過去の"AIR JAM"が頭をよぎった。
Photo : Terumi Fukano ©AIR JAM 2011
Photo : Terumi Fukano ©AIR JAM 2011
Photo : Yuji Honda ©AIR JAM 2011
Photo : Yuji Honda ©AIR JAM 2011
開演前、電光掲示板に出演者の名前がカタカナ表記で映され、うぐいす嬢が1組ずつコールする粋な計らいに場もドッと沸く。そして、いつもの「磯部正文BAND、始めます!」のイッソンの言葉を皮切りに遂にスタート! ソロ曲ではじまると、後半にはどんどん(平林・Guitar &Vocal / ex.HUSKING BEE)を迎え、田渕ひさ子がヴォーカル、どんどんがコーラスに参加した新境地ソング「琴鳥のeye」を披露した。その形態のままハスキン・ナンバー「新利の風」、「Walk」に突入し、特に後者は絵に描いたような観客の騒ぎぶりで、90年代にタイムスリップしたような感覚に浸った。
Photo : Yuji Honda ©AIR JAM 2011
磯部正文BAND / Photo : Tsukasa Miyoshi ©AIR JAM 2011
いきなり名曲「River」で先制パンチを浴びせた10-FEETは、憧れのステージに立てた喜びを全開にした熱のこもった演奏で、箸休め一切ナシの攻めの選曲で押し切る。雲ひとつない青空とコントラストを描くダーク&ヘヴィな音像を叩きつけたのはPay Money To My Painだ。K(Vocal)は「でっかいサークル・ピットが見たい!」と煽り、この熱さの中で少々体力が消耗してきた観客を巻き込み、腕っ節の強さを見せつける男臭い哀愁メロを存分にアピールした。
10-FEET / Photo : 【H.and.A】 ©AIR JAM 2011
PAY MONEY TO MY PAIN / Photo : 【H.and.A】 ©AIR JAM 2011
SUBLIME with ROMEがバンドの諸事情でキャンセルになり、その代打を務めたSCAFULL KINGは「今年3回目のライヴです」とタガミは苦笑いしながら語っていたが、極上のパーティ感は錆付くことなく圧倒的な求心力を見せつける。AIR JAM世代ど真ん中と自ら言っていたFACTはお馴染みの能面で登場すると、耳をつんざく爆音とキャッチーなメロディを融合させたロック・チューンをぶちかました。
SCAFULL KING / Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER) ©AIR JAM 2011
FACT / Photo : Yuji Honda ©AIR JAM 2011
サックス奏者を従えたNYHCのヴェテラン、MURPHY'S LAWはやりたい放題のファンなヴァイブ満載だった。Jimmy(Vocal)は観客に向かって終始ビールを投げ込み、自らもアリーナに降りてモッシュする始末で笑っちゃうほど最高だった。Hi-STANDARD同様、震災後に復活したKGDRは新旧織り交ぜたセットリストで不敵かつドスの利いたラップをかませば、LOW IQ 01&MASTER LOWは颯爽と駆け抜けるアッパー・ソングでアリーナをダンスフロア化させた。
MURPHY`S LAW / Photo : Wataru Umeda ©AIR JAM 2011
KGDR / Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER) ©AIR JAM 2011
LOW IQ 01 MASTER LOW / Photo : Tsukasa Miyoshi ©AIR JAM 2011
横浜スタジアムのステージを狭く感じさせたのは、和太鼓を含む大所帯バンド・TURTLE ISLANDだ。日本人のDNAに訴えかけてくる祭囃子調のヘヴィなトライバル・ビートを炸裂させ、初見の人もを引き込むどんちゃん騒ぎを作り出す。WAGDUG FUTURISTIC UNITYは直進力に長けたハードコアで威圧すると、the HIATUSはスタジアムの空気を我が物にした貫録みなぎる演奏で、特に細美(Vocal / Guitar )の際限なく広がるヴォーカル・パワーには圧倒された。
TURTLE ISLAND / Photo : Wataru Umeda ©AIR JAM 2011
WAGDUG FUTURISTIC UNITY / Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER) ©AIR JAM 2011
the HIATUS / Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER) ©AIR JAM 2011
NOFXのFat Mike擁するパンク・カヴァー軍団ME FIRST AND THE GIMME GIMMESは、メンバー全員“絶対合格”のハチマキを巻いて現れ、甲斐バンドの「Hero」やザ・ブルーハーツの「Linda Linda」をプレイし、その日本仕様の選曲は彼らなりの「ニッポン頑張れ!」のエールだったのだろう。日もすっかり落ちた頃、「恋のメガラバ」で不意を衝くポップ爆弾を投下したマキシマム ザ ホルモンは、アリーナからスタンド最上段までヘドバンの嵐を作り、最後にカヴァー曲「A・RA・SHI」(*これまで数回しかやってないレア曲)をこの舞台でやってしまう肝っ玉のでかさに悶絶してしまった。
ME FIRST AND THE GIMME GIMMES / Photo : Wataru Umeda ©AIR JAM 2011
マキシマム ザ ホルモン / Photo : 【H.and.A】 ©AIR JAM 2011
ステージ左右のスクリーンに"AIR JAM 2000"時のライヴ映像が流れると、遂にBRAHMANの登場だ。「俺はこの日をいちばん楽しみにしていた」、「ハイスタの3人が立ってくれることを、どれだけの人が待っていたか。俺はいろんな問題を諦めない」と告げ、被災地復興に対する思いへと繋げるTOSHI-LOW(Vocal)の言葉に、僕の近くにいる一人の男性が周囲を気にせずに号泣していた。ラスト2曲でアリーナ下に降りたTOSHI-LOWは観客に両足を支えられ、最終曲「霹靂」を全霊で絶叫する姿に涙腺を刺激された。
BRAHMAN / Photo : Tsukasa Miyoshi ©AIR JAM 2011
Photo : Yuji Honda ©AIR JAM 2011
さあ、残すはHi-STANDARDだけだ。満員の横浜スタジアムのスタンド席では自然発生的に何度もウェーブが起こり、20時12分、遂に難波章浩、横山健、恒岡章の3人が11年ぶりに同じステージに立った。「輝きを忘れるな!」の難波の一言で「Stay Gold」が始まった瞬間、目の前の男性が振りかぶったペットボトルの水が僕の顔面を直撃し、周囲も騒乱状態の凄まじい盛り上がりとなった。今日の見事な晴れっぷりに、この日のために最後の夏が来たのかもしれないと勝手な思いを巡らせる中、難波が「夏は終わらないね。恋してますか?」と言い、「Summer Of Love」で夜空に響き渡る大合唱が沸き起こったときには、ちょっと幻想的な気分に陥った。後半の「Wait For The Sun」~「Teenagers Are All Assholes」の流れも個人的にツボだったし、難波が「俺たちが力を合わせればできないことはない。みんなの心の拳を上げるんだ!」と言い、「Fighting Fists, Angry Soul」で観客一丸となって拳を天に突き上げる光景は、間違いなく今日のハイライトだった。
Hi-STANDARD / Photo : TEPPEI ©AIR JAM 2011
Photo : Terumi Fukano ©AIR JAM 2011
アンコール最後は「Brand New Sunset」の哀切メロにトドメを刺され、50分に及ぶライヴは幕を閉じた。「俺たちは日本のために集まったんだよ。笑わないでくれ、本当だよ!」と真面目に語る横山健の言葉が頭の中で何度もリフレインしていた。日本を元気にするため、東北に元気を届けるため、Hi-STANDARDは親和性の高い自らのパンク・ロックに命を吹き込み、「ユニティ!」を天上高く鳴らした。その祈りにも似た強い意志は横浜スタジアムを優に超え、はるか東北まで確実に響き渡ったに違いない。本当に“伝説”の名に相応しい一日だった。
Text : Ryosuke Arakane