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LIVE REVIEW

サカナクション "SAKANAQUARIUM 21.1 (B)"

2010.10.8 (fri) @ Kudanshita NIHON BUDOKAN, Tokyo

サカナクションとしてのエンターテインメント、"ロック・エンターテインメント"をたっぷり体感してほしい──。フロントマン・山口一郎は、本編序盤のMCでそんなメッセージを投げかけた。観客は100人もいなかったという、サカナクションとして初めてライヴをおこなった札幌クラップスホールの100倍、1万1千人のオーディエンスを呑みこんだ日本武道館は、開演前からサカナクションの色に染まった。スクリーンに映る水中の景色、そのバックには気泡の効果音。その雰囲気は、青白い水面にかすかな光が差し込む水槽のよう。サカナクションが作るアクアリウム、それが"SAKANAQUARIUM"──。初の日本武道館公演は、サカナクションの世界観の集大成と言ってもいい圧巻のステージに!

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「"SAKANAQUARIUM 21.1(B)"、用意はいいかい! いくぞーーーーっ!」 
山口の高らかな叫びが、ライヴのテンションに火をつける。それに続く「Ame(B)」のビート、電子音、ギター、メロディーのアンサンブル。そのループ感は、大観衆の塊を波のように揺らし……。3曲目「セントレイ」の時点で、武道館いっぱいに響き渡るサビの大合唱が、早くもライヴをクライマックスばりのボルテージまで持っていく。

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圧巻のテンションで幕を開けた序盤から趣を変えたのは、6曲目の「フクロウ」。さっきまでのきらびやかな音と光が沈み、ステージを闇が支配する。そして、寂寥感が漂う森の映像を背に奏でる厳かな音色が、客席の動きを止め……。深く、重く、緊張感に満ちた空気感を、オーディエンスは身じろぎせずに吸い込む。アッパーな曲で攻めるだけでなく、ディープなムードで聴き手を引き込むのもサカナクションの大いなる持ち味だ。

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「シーラカンスと僕」も、陰がかかるステージから繊細なタッチの音色が響く。かと思えば、ビートが一気に加速! 白熱する演奏は、メンバー全員の気迫がぶつかり合っているかのようだ。そして、それを彩るのは鮮やかなレーザー光線。光の筋が舞う中で電子音がうねり、日本武道館という日本有数の大ホールがレイヴ的な空間に変貌した。さらに続くインストパートは「マレーシア32」~「21.1」~「Paradise of Sunny」にリアレンジを施したひとつのセクションとなり、ステージをゆっくりとスモークがたちこめる。メンバーが雲の上に乗っているかのような幻想的な姿に見とれながら、ループする多彩な音色にただただ陶酔……。

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「"ロック"っていうフォーマットを壊した、こういう"ショウ"を……。"ライヴ"でもあり"ショウ"でもあり"クラブ"でもあるこれを、みんなに見せておきたかったんです」
音、光、演出が一体になって作り上げた、自身初の日本武道館公演への思いを山口はファンにそう届けた。レーザー光線とともにダンスビートが断続するナンバーは、日本武道館を巨大な“クラブ”に変えた。上下左右からさらに激く噴煙がたちこめ、メンバーがステージから姿を消してしまうかのように見えた「サンプル」など、視覚でもオーディエンスを魅了したナンバーはまさしく“ショウ”的アプローチの極み。そして、「アルクアラウンド」や「アイデンティティ」の昂揚的なサウンドは、ポップセンスも十二分に意識しながら、“ロック”ファンを強烈に刺激する。ジャンルの壁を壊し、新たな音楽のスタイルを提示するサカナクションの真骨頂を、この日の日本武道館公演で間違いなく見た。

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サカナクションの歴史に深く刻まれるに違いないライヴは、歓声が最後まで鳴り止まない。それに応えたダブルアンコール、正真正銘のラスト・ナンバーは「目が明く藍色」。メンバー全員の歌声がハーモニーを作り、オーディエンスのハンドクラップがそれを包む。シンセが激しく飛び散り、ギターは激しくディストーションを奏で……。そのバリエーション豊かに展開するサウンドにリズム隊が軸を通し、さらにその中心にはもちろん、山口が歌い上げる感動的なメロディがいる。ロックのダイナミズム、スタイルの壁をぶちこわす先鋭性、そして、ポップ・センス──。あらゆる要素を一体にして、サカナクションというバンドの真髄をあますところなく見せてくれた一日に、心から拍手を贈りたい。

Text : Toshitomo Doumei
Photo : Daisuke Ishizaka (Hatos)


-Set List-
1. Ame(B)
2. ライトダンス
3. セントレイ
4. アドベンチャー
5. Klee
6. フクロウ
7. 涙ディライト
8. アンダー
9. シーラカンスと僕
10. マレーシア32 ~ 21.1 ~Paradise of Sunny
11. 新曲(タイトル未定)
12. ネイティブダンサー
13. インナーワールド
14. サンプル
15. 三日月サンセット
16. アルクアラウンド
17. アイデンティティ
18. enough

-Encore 1-
19. GO TO THE FUTURE
20. 白波トップウォーター

-Encore 2-
21.目が明く藍色



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