2010.10.25 (mon) @ Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
去年秋の"実験期間突入"宣言以降、主にバンド外活動をおこなっていたMO'SOME TONEBENDER(以下、モーサム)が、ジャンルも世代も異なる4組のバンド/アーティストを対バンに迎え、10月の毎週月曜におこなってきた"STRIKES TOKYO"。ブランニュー・モーサムの本格始動となったこの2マン・シリーズ・ライヴ。これまで、torio、PILLS EMPIRE、avengers in sci-fiと"激戦"を繰り広げてきたのだが、ロックの意味や意義を更新し続ける、テン年代を前のめりに疾駆するバンドばかりなことにモーサム自身のテンションの高さを感じる。
そしてシリーズ最終章は最も意外視された雅 -MIYAVI- が相手だ。先日、再デビュー作と位置づけるアルバム『WHAT’S MY NAME?』をリリースした雅 -MIYAVI- 。両者のファン同士に様子見な印象は拭えないが、興味は注がれている。そこへタイトル・チューン「WHAT'S MY NAME?」に乗せて"トライバルな宇宙人"めいた雅 -MIYAVI- が登場。テクニカルかつフィジカルなスラップ・ギターと、BOBOのカッチカチにタイトかつ重量級のドラムで最小編成とは思えないグルーヴを生み出していく。しかもギター・プレイヤーかつヴォーカリストかつシャウターかつダンサー(!?)でもある彼にマイク1本で足りるワケがなく、基本ポジション以外に計3本のスタンド・マイクを立て自由自在にステージを跳ぶ。
相棒、BOBOを紹介するにあたってのギターとドラムの掛け合いは、剣豪対決にも似た緊張感。その緊張感は静謐なスロー・ナンバー「MOON」でピークを迎え、ラストはそのテンションを高揚感に転化するように、その場でギターでループさせ、怒涛の四つ打ちナンバー「FUTURISTIC LOVE」へ。ギターを叩き、指を鳴らし、叫び、囁き、ジャンプを続ける、そのすべてが音楽だ。たったふたりのステージがこれほどエンターテインメント性にあふれるなんてことは、なかなかあるまい(誕生した次女の命名が大幅に遅れて焦ってることまで笑いにしてしまうフランクさも含め……)。安易にオールウェルカムな態度は示さないモーサム・ファンも、リズムと取らせるぐらいまでは間違いなく引き込んだと見た。
セットチェンジを経て、登場したモーサムの編成は、なんとドラムの藤田が今回はギター兼キーボード兼シンセ、SE。元来、曲やサウンドメイクの要である彼だけに、違和感はない。そこにサポート・ドラムを加えた4人編成で、冒頭から「Young Lust」、「Happy Icecream」の連発で、すさまじい音圧。雅 -MIYAVI- の間の多い音像とはまったく異なる音の洪水だが、曲が持つポップな骨子と、子どものようなメンバーのフリーキーさに笑いさえ出てしまう。百々は、今回のシリーズに手ごたえを感じているようだが、MCは「今日の雅も面白かったし」と、いつも通り思い浮かんだことそのまんま、だ。序盤に初期ナンバー「カム」、「FREEZE」をプレイしたのも印象的で、表現者として引き出しを増やした今でも、このバンドには常に贅肉がないことをこの2曲で改めて実感した。
そして、この日は新曲2曲をリアルタイムでUSTREAM配信されるという目玉企画も。「なんかカメラが5台ぐらい、俺のほうを向いてるんだけど」と、新曲の配信についても百々らしいMC。肝心の新曲、まず1曲目の「youth」は、タイトル通りどこか青さを感じるモーサムのメロディのポピュラリティが光るロックンロール。これまで何度か転機を迎えるたび、無意識かもしれないが普遍的でポップな側面を新曲に反映してきた彼らの新たなシーズンを感じさせる曲だ。続くもう1曲は、ダビーな要素も含むミディアム・ナンバー「けだるいDays」。歌詞の内容は聴き取れた範囲だと、誰に起こってもおかしくないこと……事件や病気? など、それに対してただ淡々と生きようとしているある女性と、(その女性との関係まではわからないが)自分との対比を心象風景として描いているように感じた(他のストーリーもあったように思う)。諦めでも悲しさでもない、でも少し悔しさを感じながらの日々をモーサムならではの乾いた叙情に昇華した曲だった。演奏のエクストリームな様子より、"聴かせる"タイプの曲を配信した理由は本人に聞かなければわからない。そして、この2曲だけがモーサムの新機軸とも限らないが、肝のひとつには違いない。
その後、ライヴはこの日最高のレッドゾーンに「ばちかぶれ!」で突入。いよいよ本格始動し、12月8日にはニュー・アルバム『STRUGGLE』がリリースされることがアナウンスされ、さらに新曲「Hammmmer」をプレイ。ATARI TEENAGE RIOT(SEでも流されていたが)的なちょっと懐かしいデジコア風味も、Enter Shikari的な踊れるエクストリーム・ミュージック・シーンとも重なるイメージ。藤田のチープさが逆にクールなシンセ、武井のうごめくブッといベース。奔放な演奏にさらにあっからかんと放たれる百々のヴォーカルが渾然一体となる時、このバンドのいい意味での腰の軽さに感動する。年齢にもキャリアにも演奏スタイルにも縛られたくないのだろう。引力に逆らうように今のモーサムは青いし、若い。
今回の"STRIKES TOKYO"の対バンに共通していたのはたぶん、過剰さだ。孤高のバンドとしてマイペースに進むのもいいが、意外な化学反応を起こそうと試みた今回の対バンで、現状のその先に伝わる/繋がるライヴの手ごたえを感じていたんじゃないだろうか。来るべきニュー・アルバム、そしてこじんまりまとまることのない、まさに東京発信の新たなシーンに期待したい。
Text : Yuka ishizumi
Photo : Yosuke Torii (雅 -MIYAVI-) / Hiroaki Ishikawa (MO'SOME TONEBENDER)
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