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クラムボン "両国国技館"

"ドコガイイデスカ？"ツアーと題し、自ら機材車を走らせ、さまざまな場所を会場に変えながら全国48ヵ所を回ってきたクラムボン。彼らが2011年の集大成として選んだのは、両国国技館だ。ステージは広い会場のセンターに設営。3人の機材はそれぞれ中央を向くようにセッティングされている。この日は“白”というドレスコードが設けられ、開演前ぞくぞくと白い服の観客が集まってくる間には噺家の林家彦いち師匠が前説を引き受け、小話で客席を温める。

そこに登場したメンバーも、真っ白な衣装。ステージも白い幕で覆われ、会場全体がまぶしいほどの白い光を放つ中、1曲目、「シカゴ」からライヴがスタート。どんなときに演奏されてもその場のムードをガラッと変えてしまうパワーのあるこの曲を皮切りに「パンと蜜をめしあがれ」、「ドギー＆マギー」と、彼らがこの10年来演奏し続けている曲が並ぶ。

このツアーがスタートしたのは今年5月14日。福島から東北・北海道を回るスケジュールが組まれていた。震災の直後は開催が危ぶまれながらも予定通りに始まったツアーを、彼らがどんなセットリストで回るのか興味があったファンも多いだろう。もちろん、4月20日にリリースされた2枚のベスト盤『クラムボン -ワーナーベスト』、『clammbon-columbia best』からのセレクトではあるものの、前半は彼らのポップ・サイドを爆発させた曲が目白押しだった。

ヴォーカル・原田郁子の歌もいつにも増して語りかけるような柔らかなニュアンスがあって、途中に挟まれるMCでの観客とのやりとりやドレスコードも含めて、“会場にいる人全員と作る”ことを意識されたライヴだったと思う。これまでも、いかにその場にいる人たちとつながるかということを意識的にやってきたバンドだけれど、この日はそのことをもっときめ細かに一つずつ積み上げていく丁寧さがあった。

中盤は、青い照明の中、揺らめくように、ライヴの定番曲となったSmall Circle of Friendsの名カヴァー「波よせて」、さまざまなカヴァーがあるものの、もっとも優れたカヴァーと言いたい「ナイトクルージング」を演奏。続く「あかり from HERE」では、ヴォーカルをかき消すほどの力強い演奏とグル―ヴ。ベースとドラム、ピアノの一音一音が、音楽を奏でながらも何かを訴えているようで、改めて（いまさらながら）楽器を演奏することは表現することなんだなと思う。

後半、「GOOD TIME MUSIC」、「はなれ ばなれ」、「サラウンド」、「NOW!!!」からはまたポップ・サイドに戻って、まぶしいほどにきらめく展開。そのきらめきは彼らの演奏だけでなく、観客も含め会場全体から発せられるもので、「バイタルサイン」で見せるベース・ミトが楽器を叩きつける動きも全部、ライヴが生み出すパワーに支配されているのだろうなと思う。そして、ラストは「Re-Folklore」。“民間伝承”という意味合いのこの曲と、アンコール1曲目、ミトが一人ギターで弾き語りを披露した、震災直後に彼が作った「312」という流れもまた、彼らのこのライヴに対する気持ちの表れだったんじゃないかと思う。

そんなふうにメンバーと観客が作り上げたライヴは、観客全員のコーラス＆手拍子＆足拍子で国技館が揺れた新曲「ある鼓動」〜「tiny pride」で終わらせてしまうのがもったいないほどの連帯感に満ちていて、なんだか呆然としながら郁子ちゃんがつぶやいた「……終わりたくないね」という言葉は、みんなの気持ちを代弁していたよう。急遽追加された1曲「雲ゆき」は、その優しいピアノの音とヴォーカルで、すばらしいライヴのラストを飾ってくれた。

Text : Ayumi Tsuchizawa
Photo : Yoshiharu Ota / Masako Iwasaki

-Set List-
01. シカゴ
02. パンと蜜をめしあがれ
03. ドギー＆マギー
04. ジョージ
05. GLAMMBON
06. 波よせて
07. はなさくいろは
08. コントラスト
09. 便箋歌
10. ナイトクルージング
11. あかり from HERE
12. KANADE Dance
13. GOOD TIME MUSIC
14. はなれ ばなれ
15. サラウンド
16. NOW!!!
17. バイタルサイン
18. Re-Folklore

-Encore-
19. 312 (mitoソロ)
20. ある鼓動
21. tiny pride
22. 雲ゆき

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