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LIVE REVIEW

サカナクション "SAKANAQUARIUM 2011 DocumentaLy"

2011.11.6 (sun) @ MAKUHARI MESSE, Chiba

「"SAKANAQUARIUM2011 DocumentaLy"にお越し下さいまして、本当にありがとうございます。僕ら、『DocumentaLy』というアルバムをリリースしまして、それのツアーなんですけど……。MCをなくして曲が繋がっていくことでそのアルバムの世界観みたいなものをライヴで表現できるんではないかなと思いまして、こういう形でライヴをやらせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?」

アンコールで登場したステージから、今回のツアーに込めた思いを語りかける山口一郎。じつに2万人もの大観衆が埋め尽くした幕張メッセからは、爆発的な歓声が沸き上がる。5thアルバム『DocumentaLy』で表現した“今”のサカナクションをライヴで再現し、そこにある様々なサウンド・アプローチや感情をあますところなく伝えた、サカナクション史上最大規模のワンマン・ライヴ。そこにあったのは、まさしく現在の彼らだからこそ創り得た、壮大なミュージック・エンターテインメント・ステージだ。

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ライヴの幕開けは、巨大スクリーンに映し出される、PCのキーボードに打ち込まれる“R”と“L”の文字。どんどん上がる打鍵のスピードへシンクロするようにビートが響き、客席から巻き起こる手拍子と歓声にメンバーの生演奏が重なる。『DocumentaLy』のオープニングと同様の1曲目「RL」から一体感たっぷりにスタートしたステージから、続く「モノクロトウキョー」のメロディが幕張メッセの広大な空間に向けてエコーする。発信音のようなシンセとツインギターは多彩に音色を変化させ、リズム隊はそれをガッチリと支えながら、2万人の巨大な人波をビートで揺らす。陶酔的なサウンド、踊れるリズム、そして、キャッチーかつ心を揺さぶる歌声──。これまでの数多くのライブでも見せ続けてきたサカナクションの真骨頂的な要素が、何倍にもスケールアップして幕張メッセに響き渡る光景は圧巻としか言いようがない。

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「セントレイ」、「アドベンチャー」、そして「アルクアラウンド」を始めとする既発曲が要所にインサートしながら、まさに山口の言葉どおり『DocumentaLy』収録の最新楽曲群で強烈な印象を何度も与えられたこの日のライヴ。「アンタレスと針」は、深い青色の光に包まれたステージで、妖しい雰囲気を漂わせる音色に合わせ山口が手をうごめかせ……。次の瞬間にはシンセがうねり、肌を震わせるかのごとく強烈な威力のディストーション・ギターが放たれる。その重厚な響きから、「years」では鮮やかなレーザー光線が広がる中でビートがダンサブルに躍動する。かと思えば、「エンドレス」はピアノの旋律をイントロに、一語一語をかみ締めるかのように歌われる歌詞が胸に響く。<見えない世界に色をつけるのは僕だ──>。ときには、進むべき道が見えなくなってしまうことがあろうとも、自分の力で前に進んでいく。連打されるリズムを軸に、ベース、ギター、シンセ、そしてボーカル、全てのパーツがひとつになってそんなメッセージを伝えているかのような、たまらなくエモーショナルなシーンだった。

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ライヴ中盤からは、サカナクションならではのエンターテインメント精神が様々な趣向で展開する。「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」では、ミュージックビデオで話題になった“山口人形”がステージに登場! 演劇集団air:manを主宰する杉谷一隆と菊口真由美が中心となり、CM・PV・映画・舞台など様々な分野で活躍する振り付けユニット“振付稼業air:man”が手がけたあの“バッハダンス”が目の前で展開される光景に、山口本人も思わず笑顔を浮かべる。そんな楽しげなムードから続いた「ホーリーダンス」では、音色の変化に合わせて山口が手をかざし、そのかざした手の動きに合わせて色とりどりの光が宙を駆ける。サカナクションのダンサブルなビートに合わせ、コンピュータ制御された灯体“ニンジャーライト”が舞うステージは、まるでサカナクションの音楽がその光の粒の動きを操っているような感覚すら覚える。他にもオイルアートの独特な紋様が音色を彩った「流線」など、サカナクションのライヴにはオーディエンスが見惚れてしまう美しいシーンが本当に多い。さらに「DocumentaRy」は、メンバー全員がゴーグルを装着してステージに並びサンプラー、カオスパッドを駆使、強烈なビートで2万人をさらに踊らせ……。映像、照明、演出効果とのコラボレーションで作るサカナクションならではの刺激的な音楽体験は、『DocumentaLy』のエンディング・ナンバーでもある「ドキュメント」の情感豊かなメロディで感動的に締め括られた。

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「僕ら、北海道から出てきたんですよ。メンバー全員、北海道出身で。サカナクションっていう名前で初めてライブやったときって、札幌のクラップスホールっていうライブハウスだったのね。ドラムの江島とギターの岩寺と3人でライブやったのが、5年前?」

アンコールで登場したステージで山口は、自らのこれまでの歩みを振り返るように言葉を紡ぐ。サカナクションの始まりのライブでは20人だったものが、5年をかけて2000倍まで飛躍した動員数に、ファンは祝福の歓声を贈る。

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「9月28日に『DocumentaLy』というアルバムをリリースしました。2011年にアルバムを出すっていうことってどういうことなのか、すごくサカナクションなりに考えて作ったんですけど……。10年後とか20年後に、絶対にこの2011年っていう年を振り返られると思うんですよ。子供とか孫にも、『2011年ってどんな年だったの?』って訊かれるだろうなって僕は思いました。だから、そんな年に自分がミュージシャンをやっていて、アルバムを作らなくちゃいけないという状況ってすごいことだなと思ったし、どんなアルバムを作るべきか本当に難しかったです。だけど僕は、今っていうこの時代を歌いたかったし、サカナクションはこの時代のバンドだし、それを嘘なくリアルに音楽にすることで今のこの時代を音楽にできるんじゃないかなって思ってアルバムを作り上げて、そして今この『DocumentaLy』というツアーを回っています」

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「ネイティブダンサー」と「三日月サンセット」でアンコールに応え、さらに大きくなる歓声に応えたダブル・アンコールで、山口はファンにそう語りかけた。多くの人の尊い命が奪われた悲しい出来事にも、今年、2011年に僕達日本人は見舞われてしまった。人生における苦しみや葛藤、そして、その先にある希望──。今、この時代に生きているからこそリアルに感じる様々な心情を、『DocumentaLy』という作品でサカナクションは“ドキュメント”した。そして、今回のツアーでは、現代の最先端な技術を音楽と融合させて素晴らしいステージを作り上げた。彼らの音楽はまさに、“今”の時代と呼吸しているからこそ生み得るものだろう。メンバー全員の演奏と歌声がひとつになり、スピードを上げ、かと思えば雄大に広がっていく「目が明く藍色」でエンディングを飾ったこの日のライヴ。音楽ってこんなに凄いんだ、こんなに楽しんだ、こんなに切ないんだ、こんなに感動させてもらえるんだ……。音楽だからこそ伝えることができる、そして何より、サカナクションというバンドだからこそ伝えることができる様々なメッセージを、同じ空間を共にした2万人は共有したに違いない。

Text : Toshitomo Domei
Photo : Daisuke Ishizaka (Hatos)




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