2009.11.3 (tue) @ LIQUIDROOM ebisu, Tokyo
新メンバー楢原英介が加入して初となるフル・アルバム『SAKANA ELECTRIC DEVICE』のリリース後、約4か月を経てようやく実現したレコ発ツアー3本の最終日。ある意味、4か月待ちきれたファンだけが集合してるワケで、会場の空気も密度が濃い。中には邦楽フェスのTシャツ着用の人もいて、リリース後の夏フェスやイヴェントで新たに付いたファンの存在も伺わせる。そこへ待ちかねたのは自分たちも同じ! とばかり意気揚々とメンバー登場。
最初のブロックを「ORIENTAL MACHINE」「Turnig Turnig」というニュー・アルバムの曲順どおりに展開し、シンセのパッドを叩いたり、ハンドマイクで歌い、オリジナルでオリエンタルなダンスをしたり、誰にも似てない"パフォーマー・アヒト"の突きぬけっぷりに圧倒される。楢原もギターにシンセにと忙しい。セッティング的にはBATTLESのような"マスロックの最果て"バンド並の機材が並びつつ、曲そのもののポップさで機材の存在を忘れてしまう。ちなみにヴォーカル・マイクもレギュラー、オートチューン用2本が存在してたのだが、それも途中で忘れてしまった。
最初のMCらしいMCで、アヒトがリリースからワンマンツアーの時間が空いたことを詫び、ツアータイトル「DEAD OR DANCE」に引っ掛けて「今日は踊り放題、死に放題ですから! 僕は踊りたいです。死にたくはないけど」と、いつも通りオチないMCをしながら「楽しい!」を連発。中盤には早くも新曲「みなごろしの歌」(!)を披露。踊れるロックのダークサイド部門に属するナンバーだが、闇すらもポップのまな板に乗せて踊らせ得たのは、ニュー・アルバムを作り上げ、ファンも聴きこんできた今ならではの化学反応というべきか。続いて「日本人は病んでるんですよ、病んでるんですよ、Sick、Sick、Sick!」(連呼はアヒトのパフォーマンス芸のひとつだと思う)と「A sick island」になだれこむ。
今回のセットはアルバム同様、コテコテのシンセが醸すエレポップ感と、有江のPeter Hookばりのベースがひんやりとした感触を残し、中畑のドラムはむしろ機械的に焦燥感を煽るように時間を切り刻んでいくようなニュー・ウェーヴ感が混在している。単に踊れるロックのライヴを見たいなら、VOLAじゃなくてもいいのだ。"自分、こんなにポップが好きだったっけ?"などなど、痛気持ちいツボを直撃されるのがVOLA中毒の原因だと思う。エレクトリックな要素はVOLAの本質にデバイスをかけちゃいるが、それは"面白くなるから"でしかないんだと思う。
本編の大ラス前の「DEAD OR DANCE」で自ら黒い風船をブチまけ、歌い踊り、シンドラも叩きまくるアヒト、スタンディングドラムで雄たけびを上げる中畑たちを見ていると、"一緒に高みに振り切れ!"というような開放感を身に付けたと同時に、やっぱり後ろ手にはナイフ持ってましたか……的な殺気を再認識して嬉しくなる。"L.O.V.E.!"の振りも今や失笑する人はいない「Mexico Pub」で本編終了。ダブル・アンコールにもサクッと熱く応え、独特のスタンスがポピュラリティを得た実感を持てたライヴだった。が! 早くも実験的な場所を求めて、2月からは自主企画イヴェントをマンスリーへとパワーアップさせるという。アヒトはもう次のモードに入りつつあるのだろうか……だからVOLAはやめられない。
Text : Yuka Ishizumi
Photo : Yuka Komai
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SA-KA-NA ELECTRIC DEVICE VOLA & THE ORIENTAL MACHINE |
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Halan'na-ca Darkside VOLA & THE ORIENTAL MACHINE |