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EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX "デッドヒート" ツアー

9月15日に世に放たれた通算7枚目のフル・アルバム『ないものねだりのデッドヒート』のリリースを受けての全国ツアーとなる"デッドヒート" ツアー。今回はその初日となった渋谷AX、そして終わりから数えて2公演目の新木場STUDIO COASTの2公演をレポートさせていただいた。

『ないものねだりのデッドヒート』が世に送り出されてから、たった2日後におこなわれたツアー初日となる9月17日の渋谷AX。この日の幕開けは、まったくもって意表を突くものだった。多くの場合は暗転してから（会場の照明を落としてから）、満を持してメンバーがステージに現れるようなものだが、今回はその間を一切排除し、なんの前触れもなく、いきなりアルバム1曲目の「デッドヒート」のタイトなドラムの音が鳴り響き、ステージを覆っていた幕が開く。まるで急に後ろから背中を押されて、お祭り騒ぎ中に投げ込まれたような、そんな感じだ。ステージにはテディボーイ風にリーゼントをキメ、ダボダボのスーツに黒い羽根を背負った中納良恵、浅草のマジシャン・ショップで揃えたようなチンピラ風（自称大阪堺のファッション）の出で立ちでギターを鳴らす森雅樹、そしてTHE GOSSIP OF JAXXの面々が姿を現す。オーディエンスは突然のその登場に意表を突かれながらも、一気に沸点に達したかのように、歓声を上げる。続く「Bell 5 Motel」（アルバムの2曲目に収録）で会場の高揚感は、そのまま一気に最高潮まで駆け上がる。ヒステリックに掻き鳴らされる森のギターとホーンとの絡みは、まるでJames Chance & The Contortionsのようなかっこよさだ。次は一転して、しっとりとした名曲「方舟」へ。この曲で中納はなんとマトリョーシカも演奏。秋の夜長にピッタリ合いそうなメランコリックな曲のムードが、急激に温まった会場を緩やかにクールダウンさせる。

中納からは「まっさらな状態の曲を楽しんで欲しい」とのMCもあったが、当然ながら、『ないものねだりのデッドヒート』からの楽曲はこの日が本邦初公開。真新しい曲を演奏する楽しさと緊張感、パフォーマンスする側のそんなフレッシュな気持ちを少なからず共有できるのが、アルバム発売直後のツアー初日の楽しさのひとつでもある。もちろん、この日は、たっぷりと『ないものねだりのデッドヒート』からの楽曲が演奏された。ブラックライトで光る骸骨の衣装を身にまといキュートなダンスで会場を沸かせた「スカル」、文字通り心拍数のBPMが得も言われる心地よさを生みだす「heart beat」、ロックンロールの陶酔感と爆発力を秘めた「黒いセーター」、軽やかなメロディと伸びやかな中納のヴォーカルが不思議な音空間を作り出す「キリがない」、圧倒的な盛り上がりと熱いエネルギーを生みだすキラー・チューン「BRAND NEW DAY」、そしてアンコールにてマーチング隊のような編成で披露された「moment to moment」……、終わってみると、過去曲を織り交ぜながら、ニュー・アルバムに収録の10曲をすべて演奏。オーディスンスの反応もすこぶるいい。「Mother ship」、「GO ACTION」、「BRAND NEW DAY」と畳みかけた最後の3曲は、もはやリミッターを振り切っての半狂乱に近い盛り上がりに。ツアー初日からこの盛り上がり、いったいこの後はどうなってしまうんだろう……そんな熱い余韻を残しながら、初日の公演は幕を閉じる。

10月31日──あの熱狂の渋谷AXからおよそ1ヶ月半ぶりの──新木場STUDIO COAST。すでに全国ツアーのほとんどの公演を終わらせ、残すは本公演をあわせて2公演のみ。全国各地で演奏しながら、さらに磨きをかけれらた演奏、パフォーマンスは"初お披露目"を共有した渋谷AXのそれとはまた異なり、より精度と強度を増しているのがわかる。

幕開けは渋谷AX同様の不意打ちスタートだったが、幕の中から出てきたメンバーは、ブラックライトに反射するマスクを全員がまとい、ステージに色とりどりの風船が敷き詰められているという演出で登場。この嬉しいサプライズに会場は最高に盛り上がる。MCでは中納が「毎度！ 全国がっつり回ってきました。これで18ヶ所目。ありがとうございます！」とツアーを振り返りながら、「今日、（すでに東京に関しては渋谷AXでネタばれしている）さすがに2回目のスカル・ダンスの反応は薄いような（笑）？ やりながらちょっと負けそうだった（笑）」と笑いも織り交ぜつつ、オーディエンスと気さくにコミュニケーションを交わす。

それにしても、今回の公演で強く感じたのは、EGO-WRAPPIN'のロックな側面だ。ノ―ニューヨーク、あるいはGANG OF FOURあたりのポスト・パンクを彷彿とさせる「Bell 5 Motel」、あるいは「黒いセーター」や「キリがない」といった『ないものねだりのデッドヒート』からの楽曲は、ライヴで演奏されると、明確にロック的な陶酔感、爆発力が全面に浮き上がってくる。贅沢な話かもしれないが、思いっきり狭いライヴ・ハウスで、思いっきりロックなセットのライヴも聴いてみたいなんて思ってしまった。

後半には渋谷AXでは演奏されなかった「くちばしにチェリー」も披露される他、アンコールの「moment to moment」では「富士サファリパーク」、内山田洋とクール・ファイブの「東京砂漠」のサビが歌われるなど、嬉しい（？）アドリブなどもあった。EGO-WRAPPIN'のライヴには、そのひとつひとつの公演に、必ず何かスペシャルな仕掛けがある。当り前だが、同じ公演はひとつもない。だからこそ、彼らは百戦錬磨のライヴアクトたるのだろう。12月からは今年10周年を迎える年末の恒例ライヴ"MIDNIGHT DEJAVU"を10公演おこなうというスペシャルな企画も用意されている。The TRAVELLERS、清水ミチコ、八代亜紀、吾妻光良＆The Swinging Boppersという豪華（流石！）なゲストを迎える前半戦、そしていつもの東京キネマ倶楽部に加えて、大阪、韓国でもおこなわれる後半戦。ここではまた今回とはまったく違うパフォーマンスが披露されることだろう。ぜひ足を運んでみていただきたい。

Text : Naohiro Kato
photo : Hiroshi Nirei

EGO-WRAPPIN' MIDNIGHT DEJAVU 10TH ANNIVERSARY 10DAYS
TOKYO OSAKA KOREA

-In TOKYO with Guest-
DATE : 2010.12.2 (thu)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 19:00 / START : 20:00
ACTs : EGO-WRAPPIN' / The TRAVELLERS
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

DATE : 2010.12.3 (fri)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 19:00 / START : 20:00
ACTs : EGO-WRAPPIN' / 清水ミチコ
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

DATE : 2010.12.10 (fri)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 19:00 / START : 20:00
ACTs : EGO-WRAPPIN' / 八代亜紀
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

DATE : 2010.12.11 (sat)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 18:00 / START : 19:00
ACTs : EGO-WRAPPIN' / 吾妻光良＆The Swinging Boppers
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

-In KOREA-
DATE : 2010.12.17 (fri)
VENUE : Seoul SEOUL-AX, Korea

-In TOKYO-
DATE : 2010.12.22 (wed)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 19:00 / START : 20:00
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

DATE : 2010.12.23 (thu)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 18:00 / START : 19:00
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

DATE : 2010.12.25 (sat)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 18:00 / START : 19:00
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

DATE : 2010.12.26 (sun)
VENUE : Tokyo KINEMA CLUB, Tokyo
OPEN : 18:00 / START : 19:00
INFO : SOGO TOKYO 03-3405-9999

-In Osaka-
DATE : 2010.12.29 (wed)
VENUE : Osaka NAKATSU GEIJYUTUBUNNKAMURA PIERROT HARBER, Osaka
OPEN : 18:00 / START : 19:00
INFO : NAKATSU GEIJYUTUBUNNKAMURA PIERROT HARBER 06-6451-7780

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