2010.11.1 (mon) @ Shinkiba STUDIO COAST, Tokyo
NIRVANAの名作『Nevermind』がビルボード・アルバム・ランキング1位を獲得したのは、今からさかのぼること1991年。それから約20年の時を経て、ここ日本では、凛として時雨が4枚目のアルバム『still a Sigure virgin?』で自身初のオリコン・アルバム・ウィークリー・ランキング1位を獲得した。いわゆるオルタナティヴ・ムーヴメントが勃興して以来、様々な音楽的手法の異種配合が世界中でおこなわれ、日々進化を続けている現代のロック・ミュージック。そのシーンの日本におけるトップランナーと言っても過言ではない凛として時雨は、この日の新木場STUDIO COASTでも尋常ではない熱狂を生み出した。
今回のツアーのメニューの中心になったのは、もちろん『still a Sigure virgin?』収録の新曲群。「Can you kill a secret?」は、ビートとギター・リフがいきなり疾走を開始、そこへピエール中野がバスドラ連打でさらなる加速を加える。スピード感は強烈、かと思えば三位一体のグルーヴィーなアンサンブルへ展開し、僕が観戦していた2階席の床が揺れるほど観客をハネさせる。「シークレットG」も疾走感で攻めながら、広がりのあるギターサウンドが楽曲に奥行きを与え……。不穏なムードの音色から連打するビート、そして、TKと345の絶叫にも似た歌声が響きわたる目まぐるしい展開は、まさしくカオス! 多種多彩なフレージングが入り乱れる楽曲構成を、流れるように奏で挙げていく演奏はじつに見応えがある。
鬼気迫るテンションのステージ上と、それに激しいリアクションで応えるフロア。そのムードが若干変化したのは、「this is is this?」だ。暗闇の中で爪弾くアルペジオと、そこへ重なるささやくような歌声。演奏は疾走を開始するが、楽曲がかもし出す厳かな雰囲気がフロアは微動だにさせない。そして、ジャングル・ビートとともにフロアが動き出し、TKと345の絶叫がその躍動に火を注ぐ。「a symmetry」などでも見せた、激しいプレイはより激しく、抑制を効かせるところはより抑制を効かせる、いわば"動と静のコントラスト"はとてつもなく恍惚感を与えてくれる。聴き手の脳髄をぶん殴るかのような激音と、それを鎮めるかのごとく響かせる繊細な音色──。激しさ一辺倒ではない、凛として時雨の音楽的な懐の深さを、『still a Sigure virgin?』の新曲たちはより顕著に物語っている。
もちろんニュー・アルバム以外の作品からの楽曲も演奏された。これまでのライヴで鍛え上げてきた楽曲に『still a Sigure virgin?』で拓いた新境地が加わって、凛として時雨のライヴはさらに凄いことになっている。既成のものでは飽き足らない、刺激的なものを常に求めるロック・ファンの期待に、現在の彼らは間違いなく応えている。
Text : Toshitomo Domei
Photo : Kawamoto Yuki
凛として時雨 OFFICIAL WEBSITE
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