2010.11.17 (sat) @ ZEPP TOKYO
ACTs : THE FLAMING LIPS / MEW
09年のSUMMER SONICでは大トリを務めたが、単独来日公演としては実に11年ぶりだったそうで、この日を長く待ちわびていた人も多いはず。今回はスペシャル・ゲストにMEWを迎えて(!)という豪華なツアーで、大阪、東京2公演の計3公演が開催された。美しくも抒情的なギター・ロックを掻き鳴らすデンマークの雄、MEWのパフォーマンスは、当然ながらオープニング・アクトなどというレベルのものではなく、音と映像と照明が混然一体となった幻想的なステージでオーディエンスを異空間に誘う。新曲"Do You Love It"ではじまり、全10曲を演奏。その存在感を存分にアピールしていた。
MEWが終了すると、オレンジ色のつなぎを着用したTHE FLAMING LIPSのスタッフたちがゾロゾロとステージ上に現れ、大急ぎでセットを組み立てはじめる。金づちをトントンと叩く音や電動ドライヴァーのギュ―ンという音が会場に響き渡る中(まさに文化祭の前日状態!)、ステージ中央に巨大なアーチ型のスクリーンが配置され、紙吹雪を出すマシーンやらいろいろなセットも設置されていく。このリップスならではの光景に、早くも会場のテンションも急上昇。さらにこのドタバタの中に、普通にWayne Coyneやメンバーも交じって作業を手伝っているものだから、まだ転換中だというのに、大歓声が沸き起こる。Wayne Coyneは歓声に応えつつ、日本人通訳を連れてきて、これからライヴを楽しむうえでの注意事項を発表。その内容は、超強力なストロボを使うので注意すること。また(Wayneが)スペース・バルーンで会場をまんべんなく移動するので押しあったりしないこと(笑)。最高だ。そして満を持して、会場が暗転し、いよいよ至福の饗宴がスタートする!!
ステージ中央に設置された型の電飾のスクリーンに裸の女性が映し出される。女性は楽しげにダンスを舞い、次第にオーディエンスに向かって(ちょうどM字開脚のような感じで)腰を下ろし、足を開いていくと、女性の性器のあたりがズームアップされていく。すると激しく照明が点滅!! その神々しいばかりの光の奥を見ると、突然(女性器の部分が)パカッと開き、メンバーが登場! さらにスクリーンの下部にはシワシワのスペース・バルーンがあり、中にはWayne Coyneが入っている! 「The Fear」のイントロが演奏されはじめ、ムクムクとスペースバルーンが膨らみはじめる。オーディエンスは早くも最高の盛り上がりに。
「The Fear」が高揚感を駆りたてながら響き渡り、Wayneはスペース・バルーンで会場全体を(約束通り)まんべんなく転げ回る。そして大量の紙吹雪や色とりどりのバルーンが放たれ、「Worm Mountain」へと続く流れは、もはや無敵といってもいいだろう(どちらもニュー・アルバム『Embryonic』に収録)。Wayneはクマのぬいぐるみに肩車しながら歌っている。あらゆる段階をすっとばして、いきなり天国へ突き上げられたような、クラクラするような感覚。早くも夢の世界だ。今日のライヴにこれ以上の"上"はあるのだろうかと、このハンパないカオスに巻き込まれながらも思ってしまう。
「Silver Trembling Hands」、「The Sparrow Looks Up At The Machine」、「I Can Be A Frog」など『Embryonic』収録の新曲を織り交ぜつつ、中盤の山場となったのは、アコースティック・ヴァージョンで披露された2002年の美しき名曲「Yoshimi Battles The Pink Robots, Pt. 1」。マイクに設置された特殊なカメラが、Wayneの表情を画面いっぱいに映し出し、その最高な笑顔を見ながらの「Yoshimi~」は、得も言われない幸福な響きを放ち、会場を包み込んでいた。
「Yoshimi~」の幸福なムードが会場を包む中、いきなり照明が落とされ(真っ暗闇)、『Embryonic』収録の「See The Leaves」の暗黒的なノイズが放たれる。天国から突然、突き落とされたような衝撃だ。しばし真っ暗闇の中で、ひたすら地鳴りのような轟音ノイズをくらう。この強烈なノイズのスコールが明けると、「Laser Hands」がはじまり、文字通り、レーザーが付いた巨大な手の模型を両手に装着したWayneが、それをミラーボールにむかって放射する。するとミラーボールに反射したレーザーが、会場中に乱射して、これまたどエラい光景が繰り広げられる。"急降下→急上昇"なこの盛り上がりから、「The Ego’s Last Stand」、「Pompeii Am Gotterdmmerung」、「Sagittarius Silver Announcement」へと駆け上がり、そしてラストの「Race for the Prize」までの流れはもはや筆舌にしがたい。
アンコールは、もちろん「Do You Realize??」。嵐のような大量の紙吹雪が舞い、Wayneの満面の笑顔がスクリーンに映る。まるで天地創造をひと晩で体験したかのようなあまりにいろいろなことが起きたこの夜の中で、(人それぞれではあると思うが)最高に至福な瞬間はやはりこの時だ。この圧倒的なパフォーマンスを前に、僕が何かを結論付けるなんてことは到底無理だが、改めて音楽というものが持つ底知れない力を垣間見ることができたということだけは確信している。THE FLAMING LIPS、次にいつこの地にやってくるかまだわからないが、まだ体験していない人は必ず必ず体験していただきたい。
Text : Naohiro kato
Photo : Teppei
-Set List-
1. The Fear
2. Worm Mountain
3. Silver Trembling Hands
4. She Don’t Use Jelly
5. The Sparrow Looks Up At The Machine
6. Morning Of The Magicians
7. I Can Be A Frog
8. Yoshimi Battles The Pink Robots, Pt. 1
9. See The Leaves
10. Laser Hands
11. The Ego’s Last Stand
12. Pompeii Am Gotterdmmerung
13. Sagittarius Silver Announcement
14. Race for the Prize
-Encore-
15. Do You Realize??
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