2008.11.30 (sun) @ Shinkiba STUDIO COAST, Tokyo
明確なアルバム名に込められた、奥深い激情の発露に心底打ちのめされたlocofrankの3rdアルバム『BRAND-NEW OLD-STYLE』。そのレコ発ツアー、45本目の締め括りとなるファイナルがついにやって来た。前座はSLANGが務め、地の底を揺さぶる粘着グルーヴと野太い鼓動ドラム、そこに苦味を効かせたKOの怒号ヴォーカルが乗り、稲光の漆黒ハードコアをブチかます。
20時、巨大なバックドロップが上がり、「行こうか!」という木下(Vo,B)の軽快な掛け声を合図に1曲目「little wish」に雪崩れ込むや、獲物にいっせいに群がる狩人のごとく前方へ観客が押し寄せる。隅々までギッシリ埋まった場内は、モッシュ&ダイヴの狂乱図だ。3曲目「Tabako Smoke」のエッジ際立つギター・リフが刻まれると、ギアは完全にトップに入りっぱなしで怒涛の攻めを見せつける。
もちろん、それだけじゃない。「reason」では3人が丁々発止でやり合うキレ味抜群の演奏に溜息が漏れたし、「answer」の囁くような木下の優しい声音から一気に沸点へ駆け上がり、再び優しい声音で着地する陰と陽の対比激しい展開にも酔いしれた。そして、驚いたのはいつもラストを飾る彼らのアンセム・ソング、「START」が惜しげもなくここで披露されたことだ。後ろの観客が「マジかよー!」と絶叫する声が耳に飛び込んでくる。まだ30分も経過していないにも関わらず、もはやクライマックス的な活況を呈した。また、「Recall」「It’s OVER」「across time」の中盤3連打のバンドの猪突猛進ぶりも圧巻だった。
本編最後は、最新作の中で個人的にもっとも大好きな「survive」を解き放つ。体中を巨大ペンチで締め上げてくるような濃厚なエモーションは、まさに“生き残り”という切実な曲名を雄弁に物語っていた。木下は曲間のMCで「男として、バンドマンとして、人として……」と熱い発言を何度も繰り返していたが、今の彼らは野蛮で破天荒な勢いませかのプレイで聴き手を説き伏せるだけではない。時に寄り添い、語りかけてくる引きの美学を身に付けている。それにより、嵐の前の静寂、雲間から刺す一瞬の光、頬を撫でる柔らかな微風など、繊細な人間味溢れる描写力を備えたことで楽曲のドラマ性は格段に飛躍していた。
2回のアンコールを含む全21曲を観終えた後、あのアルバム名が頭を過ぎった。『BRAND-NEW OLD-STYLE』、それは手段に過ぎず、それは目的でもなく、それは最終ゴールさえも意味しない。答えは、ずっとその先にある。45本のライヴを走破し、最終日に観た彼らの姿には鮮やかな“その先”がクッキリと刻まれていた。
Text : Ryosuke Arakane