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The Mirraz "Top of the fuck'n world tour 2010 ～世界には行きません～"

全12公演すべてがソールドアウトした今回の3rdアルバムを携えての『Top of the fuck'n world tour 2010 ～世界には行きません～』の関東地方ファイナルとなったこの日。オープニング・アクトにはレーベル・メイトのYUEY（ユウイ）、今春、一時The Mirrazのサポートをしていたメンバーが在籍するCzecho No Republicが登場。The Mirraz目当てのファンも彼らを畠山制作のミュージック・ヴィデオとか呟き経由で知ってるらしく、"いいスターター"以上の役目を果たしていた。

さて、肝心のThe Mirrazはというと、グループ魂の新作『1！ 2！ 3！ 4！』収録のナンバー「しにものぐるい」（いきものがかりのパロディか？）を流しながら、それをバンド・ネームに持つ架空のバンドが出演するFM番組仕立てのコントをオープニングに延々、流し続ける。よくある新人バンドをわかったように扱ういけすかない感じと、女性ヴォーカルがゴリラ（！？）というわけわからん設定で、シニカルな笑いが続く。優等生的に解釈すると「ルックスじゃなくて曲で勝負してるんです！」みたいなことが、いまThe Mirrazが言いたいことと重なってるのかもしれないが、まぁ、これはこれでしょう。面白いけどもういいんでは？ と思うタイミングでようやくメンバーが登場。

イントロから激クールなニュー・アルバムの1曲目「TOP OF THE FUCK'N WORLD」でスタート。サポート・メンバーとして、再びThe Mirrazに戻ってきた中島（Bass）、佐藤（Guitar）のスキルとキャラが今のバンドにとってかなり大事なことを再認識。ダースベイダーみたいなコートを脱いだ畠山はオーヴァーサイズの黒Tとプリーツ・スカートというヒップホップ×パンクないでたち。やはり凄まじくキャッチーなキャラである。

4曲目には歌えるかどうか考えずに作ったらしいミイラズ史上、いや、たぶん世界的にも類を見ない句読点のほぼない長文歌詞が凄まじい「ハッピーアイスクリーム」を完奏！ というか、完全歌唱！ 歌でもラップでもリーディングでもないようで、あるようなヴォーカル・スタイル。いっそアイスクリームみたいに融けてしまえたら。でも僕も君もたぶん一人じゃ生きていけない……郊外のコンビニの漫画の棚の前で生まれたような泣きそうにリアルなリリシズムが、ロジカルかつフィジカルに放たれるカタルシス。この曲のイントロの男子の歓声に、畠山がいかに同世代もしくは年下男子の共感を得ているかがわかる。このカッコよさはできそうでできないもんな……。

ニュー・アルバムを軸にした今回のメニュー。新作で畠山が冴えてたのは、60年代ロックンロール……たとえばTHE BEATLESやTHE MONKEESのヘンテコなようで、普遍的なニュアンスに目をつけたとこじゃないだろうか。もはやR & Rリヴァイヴァルでもなかろうと。R & RはR & Rじゃないのか、と。それが「サーチアンドデストロイとグローリアスとソレとコレと」や「ふぁっきゅー」や「Make Some Noizeeeeeeeeeeee!!!」で明かるみに出た。そして、全日本ボーイズ＆ガールズに聴いてほしい「君の料理（レシピNo.2027）」や「ただいま、おかえり」で、「ハッピーアイスクリーム」同様、また琴線が揺さぶられまくる。大人になることへの漠然とした嫌悪感、でもナシにできない生への執着のようなものが刺さる。

そしてライヴ後半には新作を3rdとすると「3.5アルバムみたいなもの」という年明け1月19日にリリースされる『We are the fuck'n World』から、キラキラ系四つ打ちナンバー「あーあ」を披露。若干、意表を突かれた。終盤はタイトルからイメージされるリフそのまんまの「ハイウェイ☆スター（仮）」、イントロだけエキゾな「いつまでたってもイスタンブール」と割と威勢良く盛り上がっていく。というのも、照れてるのは自明だが口を開くたびに「やっとツアー終わりだ。帰れる」みたいなことばかり言ってるのだから。その上、アクションで沸かせるバンドでもない。あくまで、曲の持つ感情が振り切るような熱量で持っていく、それがThe Mirrazだ。

本編ラストは今いる街を後にする歌で、アルバム最終曲でもある「グッバイ…エイジ、ダテ」で、ライヴという物語を終える。アンコールにも淡々と登場。そこで発表されたのは、来年の渋谷AXワンマン！ しかしこの時も会場限定で配布される告知チラシで紙ヒコーキを作り、演奏前に客席へ飛ばした畠山だった……。ARCTIC MONKEYSのパクリを公言し利用してた時期も過ぎ、このイノセントな知能犯は、裏・ミスチルどころか、テン年代ロックのど真ん中に駆け上がりそうな気さえする。

Text : Yuka Ishizumi
Photo : Yuki Shimbo

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