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メジャー移籍第1弾『Halan'na-ca Darkside』をリリースしたVOLA & THE ORIENTAL MACHINE! 今作についてはもちろん、先日発表されたギター青木の脱退の件やバンドの今後も含め現在の心境について、前半はアヒト イナザワに、後半は有江+中畑に話を聞いた。
番外編として、VOLA結成前から個人的に付き合いのあるNew Audiogram編集長とメンバー3人による座談会も開催。お酒も入り、饒舌になった3人のトークはとまらない。ぶっちゃけ話も多数アリ! コチラも必見だ!

Interview : Keisuke Tsuchiya
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)
Halan'na-ca Darkside / VOLA & THE ORIENTAL MACHINE
【初回限定盤】 UPCH-9439 1,800yen (tax in)
【通常盤】 UPCH-1624 1,800yen (tax in)
2008.10.8 on sale
VOLA & THE ORIENTAL MACHINE - Halan'na-ca Darkside 
  1. S.E.
  2. self-defense
  3. An imitation’s superstar
  4. 深海における捕食行動考 (Interlude)
  5. soft genocide
  6. 人造人間症候群 (Interlude)
  7. Internal Division
  8. X線技師の苦悩 (Interlude)
  9. Double Standard
<アヒト イナザワ インタヴュー>
——メジャー1発目となる『Halan'na-ca Darkside』ですが。「self-defence」は、勢いのある音に、<青龍刀で切り裂いて>とか、かなり過激な歌詞が乗ってる曲ですね。
アヒト:
タイトルは“自衛”って意味で。自分たちの生きてく道や人生が変えられてしまうような、何者かの大きな力から自分で身を守らなきゃいけない。でも、ある程度の攻撃性もないと、今の世の中やられちゃうんじゃないかって思いから歌詞ができたんです。
——音でこだわったところは?
アヒト:
スピード感と攻撃性。元々、ライヴの最後にアドリブ的にガーッとやってる中から生まれた曲なんで、ライヴでのテンション、エネルギー感は損なわない感じで、最後まで気を吐きながら突っ走る感じでやりました。シンセもちょこっと入ってて、そこは、パンクっぽいけど四つ打ちでエレクトロニカな部分は出したかったから。バンドの方向性も最近の自分の好みも、そっち寄りなんです。いわゆるディスコパンク系、ちょっとバカっぽいところとクラブ・ミュージックとパンクが混ざったような雰囲気がすごくカッコいいと思ってるので。ドラムも、普通の8ビートはなるべく使わず、裏打ちから16の速いのでいきました。

——今回、曲間にインタールードが入って楽曲が繋がってるのは、ライヴ感とDJ的な側面も出したかったんですか。
アヒト:
SEやインタールード除くと実質5曲なんで、それだと普通のライヴでも繋げてやったりもするんです。ガーッといくライヴ感プラス、インタールードを挟むことでDJ的にもなるんで、その両方で受け取ってもらえると嬉しいです。
——「Internal Division」は、歌詞の鋭さはありつつも、一番ポップなナンバーですね。
アヒト:
最後に出来た曲で、そのころは怒りのエネルギーはずいぶん柔らかくなってて、内面の自分を見たって感じ。サウンドもいくぶん柔らかくなって、他の曲と雰囲気が違うけど、こういう曲があって良かったなって。音もいろいろ試すことできて、今までにない感じが出せたし。シンセやボコーダーも、これからのサウンドのおもしろい武器になるなって感覚もあるので、自分たちにとって新しい入り口になりそうな曲ですね。
——最後の「Double Standard」は、裏表があからさまな今の社会を風刺してるようです。他の曲もそうですが、今の時代性を反映させようって思いもあったんですか。
アヒト:
意図して今の世の中と照らし合わせたわけじゃないんです。逆に、今のいろんなことと歌詞が意外にリンクしてきて。それだけ、世の中が混乱してるのかなって思ったんですけど。この曲は、本音と建前ってことを歌ってます。この歌詞からEPのタイトル『Halan'na-ca Darkside』につながって、ループするように、また1曲目に戻る感じがありますね。
——今、新作が出来上がっての感想は?
アヒト:
曲数も分数も、一番いい形にまとまったし、短いながらも物語性は出せたなって。メジャー1発目の、インパクトのある名刺代わりになったと思ってます。
——あと、今回ギターの青木さんが脱退となりましたが。
アヒト:
一番は音楽性の違いですね。彼は彼なりにいいフィールドを見つけてやっていくほうがいいし、ウチらは自分たちの求めるギター・サウンドを遺憾無く出してくれる人を求めたほうが、お互いのためにもなるのでこういう形になったんです。
——では、これからメジャーでやっていく意気込みを聞かせてください。
アヒト:
メジャー、インディーって特に意識はしてないけど、メジャーになれば自分たちに関わってくれる人もたくさん増える。それに連れて、バンドの規模も大きくなっていきたいし、今よりもさらに上のステージを目指したいなって。何かに迎合することなく、自分たちのセンスと考えだけで、さらに盛り上がっていけたら良いなって。
——今のシーンに一石投じたい思いはありますか。
アヒト:
というか、つかみどころがないけど成立してるバンドたちのシーンができたらいいなって。僕らがその礎になりたいとは思ってます。
<有江嘉典 & 中畑大樹 インタヴュー>
——『Halan'na-ca Darkside』の曲は、いつごろ出来た曲なんですか。
有江:
年末から今年の頭かな。ライヴではすでにやってる曲なんです。そのころ、バンドの鬱憤の怒りがいろいろな対象物に向かっていたときだったので、速いだけじゃなく、アレンジやフレーズ、歌詞の内容も自然と攻撃的なものが多くなって。怒り&ダークって感じになりました(笑)。
中畑:
バンドの過渡期って感じだったんですよ。4人でやってることにブレはなく、逆に結束が固まったんです。過渡期を過ぎたら、あっという間に曲のタマゴができたような。今となってはいい経験だったなって。
——音の面では、どんな部分にこだわったんですか。
有江:
前のアルバム『ANDROID 〜like a house mannequin〜』は、パーティ・ソングやプログレ的な変態な曲もあってバラエティに富んでたけど、今回は統一性を持たせたくて。音に関しても、前作は詰め込もうって意識があった。今回は音数を減らして隙間を有効的に使いたい、でも攻撃性や熱さはほしいというのは、どの曲も一貫してました。
中畑:
前作は、リズムも実験的にやれるものは全部やるって感じだったけど、今回は曲のできる過程もすごくシンプルで、攻撃性があるものになるなってみんな思ってて、それが演奏に出ましたね。あとでアヒトさんがキーボードを入れたりして、ライヴでやった時とは違った印象にもなったし。それと、エンジニアの三好さんが、曲のイメージに合わせて音を足す人なんです。それは、ウチらの気づかない曲の良さを引き出してくれるんじゃないかって、あえてお願いしたんですけど。音のバランスも、パキッとしたおもしろいものになったなって。
——個人的に印象的だった曲は?
有江:
「Internal Division」かな。最後に出来た曲で、これを作ったときは、バンドが次の方向に向かってる状態だったので、次に出す音源の端っこが見えてるような気がしたんですよ。一番ポップで明るいけど、アルバムの中では同居してるし。気になる曲です(笑)。
中畑:
僕は、「soft genocide」が出来たときは、VOLAとして新しいなって。意外性、新鮮さがあるものをやっていくのがVOLAなんだろうなって意識が今ありますね。それがあったから「Internal Division」も、ポップだけどやっぱりVOLAだって肯定できるんです。
——まさに新作は、バンドの勢いと新鮮さが出せた作品なんですね。では、5月にイギリスでライヴをやったときの話を聞かせてください。
有江:
VOLAを誰も知らないよその国でやれたことは大きかった。日本のライヴハウスの環境ってすごくいいんです。海外はヒドい(笑)。そんな環境だと、バンドの結束が良くないとダメだし、もっとタフにならなきゃって思いましたね。
中畑:
過渡期を経て、バンドとして結束しなきゃって時期を経ていったからこそ、こんな場所でやるの?ってとこでも毎日できたと思うんです。それ以前に行ってたら、こんなとこでやるのかよ、とか思ってたかもしれない(笑)。
有江:
きっとズタズタにされたよ。甘えん坊だってことも気づかずに(笑)。このタイミングで行けてよかった。ここでやったらどこでもできるぜって、前向きに考えられたし。
——実際やってみて、どうでした?
中畑:
やっぱり、みんな耳が肥えてるんですよ。良ければ反応があるし、悪ければ心が折れそうになることもあったし。そこで感じたのが、バンドに必要なのはシンプルなことだなって。いい演奏をして、VOLAってこういうバンドですっていうのを届ける。まずはそれができれば良いんだって思いましたね。
——では、VOLAが、これからメジャーのフィールドで目指していくものを聞かせてください。
中畑:
たくさんの人に聴いてもらえる機会が増えたのは嬉しいですね。単にVOLAの音楽を聴いてほしいっていうような優しい感じじゃなく、ぶつけたいとかちょっと暴力的な気持ちなんです(笑)。この曲たちは、そのくらいのスピード、強さで届くべきだと思ってるので、手加減なしにぶつけていきたい。試聴機でもVOLAのだけ痛いとか(笑)、そんな感じで聴いてほしいんです。それはステージでも同じで。この曲たちに限らず、VOLAってバンドが噛みつきますっていうのを証明していきたいですね。
有江:
VOLAって変わったバンドじゃないですか(笑)。今回は攻撃的なアルバムだけど、まだまだ進化していくだろうし、もっとVOLAの幅を広げて、例えば、VOLAが1つのジャンルになったらいいなって。それをたくさんの人に観てほしい。これからが楽しみだし、気合いも入りますね。
番外編:VOLA座談会 <VOLA & THE ORIENTAL MACHINEの過去・現在・未来>
インタヴューも終了し、場所を居酒屋に変え、酒飲みメンバー3人とVOLA座談会に突入! 話はさかのぼりまくって、バンド結成前の話から始まります。

Interview : New Audiogram
●幻のバンド、VOLA FC
——VOLA & THE ORIENTAL MACHINEの前に、VOLA FCってバンド名があったんだよね。その時はなんでVOLAだったの?
アヒト:
まだナンバーガールやってたときの話になるんやけど、レコーディングしよる最中に、遊びで、憲ちゃん(中尾憲太郎)と(田渕)ひさ子さんと俺とで適当に曲作ってみたら、意外とちゃんと形になって。で盛り上がって、「じゃあバンドやろう。名前何にしよう?」ってなって。最初は、なんか魚の名前で考えてフナとか言いよったんやけど(笑)、ボラがいいんじゃないってことになって、綴りもVOLAにして、FCつけたら南米のサッカー・チームみたいでいいねーって言って、VOLA FCっていう名前を付けたん。
——そのときはVOLA FCで活動したんだっけ?
アヒト:
一回ライヴをしました。渋谷のネストで。斉藤(匡崇、EMIプロデューサー/エンジニア)さんのイベントで、downyとルミナス・オレンジとラムタグが対バンだったかな。で、その後もう1回福岡でライヴをやろうって話になったんやけど、俺の用事かなんかでダメになって、それで終わり、VOLA FCは。すごい爽やかなギター・ポップ・バンドでしたよ。
——そうだよね(笑)。アヒトくんギター&ヴォーカルで。憲ちゃんがドラム?
アヒト:
ドラムで、ひさ子さんがギター弾いて。
——で、それから数年経って、ザゼンを辞めた後にVOLA & THE ORIENTAL MACHINEっていうバンド名のバンドを結成して。このバンドをやろうと思ったのはなんで?
アヒト:
単純に自分でバンドやってみたいと思って。自分が歌うかっていうのは漠然としとったけど、でも、ドラムに専念するって気持ちはそこまでなかったね。
——(笑)フジロックのメイン・ステージ出ておいて?
アヒト:
まあいろいろ、本人にしかわからんことってあるやん?
——そうだよね。じゃあ、自分がイニシアティヴをとるバンドをやりたかった。
アヒト:
そうそう。でも結局、自分で曲作ったら、自分で歌メロ歌うのが一番手っ取り早いやん。きっかけとしてはそういう感じなんやけど。
——VOLA FCの時もアヒトくんが作ってたの?
アヒト:
うん、まあそう。あと、ナンバーガールの時って余興で歌うことがよくあったやん。それで、ちょっと本気でやったらものになるかなってちょっと思ったんよね。それが大きな間違いやったね(笑)。
——今どうなんだって話じゃん(笑)。
中畑:
でも歌うのは嫌いじゃないんですよね?
アヒト:
嫌いじゃないよ。楽しいし。でも、本気でやろうと思った時点でさ、壁が立ち上がってくるわけ。ぐあーって。ほら、パート・チェンジって最初は楽しいやん? その時はまだ責任がないし。でも、責任が出てきたらどんどん大きな壁が出来てきて、結局、ドラムを練習してた時のようなことをまた一から始めないかんみたいな感じになってくるやん。
有江:
結局何かに立ち向かうってことは、どのパートでも同じことやってことやね。
アヒト:
そうそう。まあそう甘くはなかったよね。
——最初にライヴやったとき、それまでは一番後ろでメンバーの背中見てメンバー越しにお客さんがいたのに、すぐ目の前にいるのってどう思った?
アヒト:
近っ!と思った。けど、それよりもギターを弾きながら歌を歌うことに一生懸命やったけん。だから、お客さんを感じられるようになったのはここ最近やね。ちゃんと客席を見られるようになったりとか、ここでこういうことしたらこういう反応になるのかなって考えられるようになったのが。
●VOLA & THE ORIENTAL MACHINE誕生
——じゃあ、VOLAを結成することになった時に、どうしてこの楽器の編成したの?あと、なんでこのメンバーになったか。
アヒト:
バンドの構成は、今までこれでしかやったことないし、生のサウンドが好きやから、特にDJ入れるとかも考えもせず。まあ最近でこそシンセ入れたらいいねって思ったりもするけど、でもまずは4人、ギターなりベースなりドラムがいるっていう形が、自分としては自然だなっていう。メンバーは、有江くんはノーツの時にずっと一緒にやりよったけん、どんなベース弾くか知っとうわけよ。で、中畑くんは、同じ事務所っていうのもあったし、「VOLAやるんやけどそこでドラム叩く?」って聞いたら、「うん、やる」って言いよったけん、やるんやろうなってこっちは勝手に頭数に入れてて(笑)。
——誘われた2人はどう思った?
中畑:
俺は誘われたっていうより、結果的にラストライヴになった、ノーツの新宿ロフトのライヴを観に行ってて、そのときにアヒトさんと話したら、ザゼンもやってるけど、時間があったら自分のバンドやりたいって言ってて。で、てっきりアヒトさんがドラムだと思ってたんだけど、自分で歌うって言ったから、「ドラム誰がやるんですか?」って聞いたら、まだ全然決めてないって言ったんで、もしほんとにやるんだったら俺叩きますよって言ったら、じゃあその時はお願いするかも、って。でもほんとにたまにやる感じなんだろうと思ってたら、その後にザゼン辞めるって聞いて、誘ってもらって。
マネージャー:
俺やりますって言ったときの心境ってどんなものだった?
中畑:
まだシロップはやってたから、ちょっと無責任にやるって言っちゃったなとも思いつつ、まだどんなバンドになるかも、どんなメンバーになるかも知らなかったんだけど、すごいおもしろそうだと思って。当時はシロップもちょっとお休みしようかって時だったし、どっか外でドラム叩きたいって気持ちも漠然とあったから、思いがけず声かけてもらったなって。
——有江くんはどうだった?
有江:
俺、一緒にバンドやる人、特にリズム隊は、この人おもしろいなって人としかやりたくないのね。手伝いとかでやるときはそんなん関係なくやるけど、同じバンドやるんやったら、この人いいな、この人おもしろいなって思える人やないとやりたくないっていうのがあって。アヒトくんはノーツで一緒にやって、この人おもしろいなーと思ってたんよ。人間もおもしろいけど、ドラムも、俺が今まであんまり絡んだことのないオカズとかも出してくるし。で、最初にVOLAをやるっていうことをメールでもらったんやけど、自分がヴォーカルやるってことは何も書いてなかったから、当然アヒトくんがドラムなんやろうと思ってて。で、俺も、この先アヒトくんと一緒にやれる機会があったらやりたいなとは思ってたけど、自分の中で、ノーツでは俺のベースが出し切れてないなっていうのがあって、もしかして俺のベースが伝えきれてなかったかもなっていうのがあったのね。だから、一緒にやろうってメールもらったときは嬉しかった、単純に。でもその後でアヒトくんが、「俺は歌います」「この人ドラムです!」って言った時は、「えー!」みたいな感じだったけど(笑)。
中畑:
最初にスタジオ入る前に、まず一回みんなで会いましょうってことになって、そのとき初めて会ったんですよ。俺はその時に、有江さんですって紹介されて、あんまり知らない苗字だったから、珍しい苗字の人だなーって。そういうところから始まって(笑)。あと、とにかくみんなで飲んだんですよ。だから最初の印象は、このバンドは酒飲みだと思って。俺当時そんなに飲めなかったから。
有江:
飲めるようになっちゃった(笑)。
中畑:
最初ちょこっとみんなで会って飲んで、じつはVOLA & THE ORIENTAL MACHINEってバンド名でって話して。
アヒト:
そのときバンド名発表して。
——なんで、THE ORIENTAL MACHINEが付いたの?
アヒト:
最初ね、ORIENTAL MACHINEだっていうのも考えたの。でもVOLAって響きもいいなと思って、じゃあエコー&ザ・バニーメンみたいな感じでVOLA & THEORIENTAL MACHINEってくっ付ければいいかなって。
——中畑くんは、そのときはまだシロップやってたじゃん。お休みしてた時期もあるんだろうけど、その2つはどういう割合でやってたの?
中畑:
VOLAが思いのほか本格的に活動し始めて、両方関わる身としては、シロップの活動とどっかでぶつかる日が来ると思ってたら、それが早いタイミングで出てきて。で、俺の中ではどっかで、VOLAのメンバーに対してもシロップのメンバーに対しても、どっちをとるんだってところに絶対なるだろうなって思ったから、それを真剣に考えてて。で、アヒトさんに一回話をして、VOLAとシロップやりたいんだけども、やっぱり自分はシロップの人間だから、どっちか選ぶってなったらシロップをとるんですよって言って、VOLAを抜けたいって話して。そのときに決まってた一番先のライヴが2か月先だったんだけど、そのライヴで辞めたいって言ったら、わかりました、って。
——それはいつ?
アヒト:
まだCD出してないとき。
中畑:
だから、結構入ってすぐ。みんなにも、こういうわけでこの日のライヴで離れようと思うんですって言って。そしたら、その最後のライヴの1か月くらいに急にライヴが決まっちゃって。で、アヒトさんが、1か月で3人だと難しいから、ヘルプとして叩いてくれない?って言われて、俺は、辞めて1か月でVOLAやるのってちょっと戸惑ったんです。やりたい気持ちもあるけど、辞めたからにはって。それを悩んでたら、シロップのベースのキタダさんが、困ってるんだったら助けてやんなきゃダメだって。じゃあわかりました、やりますって言って。で、その時に、やっぱりやりたいって気持ちになっちゃったんですよ(笑)。自分の中では、言った限りはちゃんと辞めなきゃいけないと思ってたんだけど、やっぱりやり足りない部分もあったし。最終的には、事務所の社長にやっぱやめたくないって言って、みんなにも、辞めたいって言ったけど、やっぱやりたいからやらしてくださいって。
——アヒトくんは、やっぱやりたいって言った時どう思ったの?
アヒト:
なんとも思わんかったよっていうか、嬉しかったよそりゃ。
有江:
でも、辞めるって言われた時のほうが衝撃は大きかったよね。
アヒト:
そりゃそうよ。
有江:
で、「戻ってくるの?」「うんうん」って。
アヒト:
戻ってくるときは、なんとなくの雰囲気でわかってたからね。
——アヒトくんは、ザゼンはもう辞めてたじゃない? だから、早く音源出さなきゃみたいな焦りはあった?
アヒト:
音源早く出さなきゃっていうより、バンドを早く軌道に乗せたかった。俺はこれを遊びでやってるんじゃないんだぞ、本気でやってんだぞっていうのをどうしても見せ付けたかった。そのためには音源出さなきゃいけんやん。で、確かに音源出した後に、ものすごい変わったもんね、お客さんも。「Principle of machine」のイントロだけでギャーってなったけんさ、うわーなんか戻ってきた!って感じがしたもん、俺は。
中畑:
あれはすごいびっくりした。こう違うのかって。
有江:
それまではすごいポカーンとされることばっかりやったんよね。
——それはレコ発?
アヒト:
レコ発のユニットのワンマン。音源出す前も同じことをやってたんやけど、たぶん、俺の歌の能力のなさとか、要するにグダグダやったと思うんよ。それが、音源化したら、レコーディング・マジックですごい整然とするわけやから、じつはこういうことやってたんですよっていうのをわかりやすく提示してあげることができたわけ。そしたら、あ、こんな曲やってたんだ、意外といいなってすごい盛り上がってくれたっていう感じ。
有江:
やっと、VOLAがやってることを理解してもらえたっていうか。
●インディーズ時代を経て
——で、ファースト・アルバムをリリースして、ツアーやフェス出たりして、状況が変わって。バンドの状況はどんな感じだった?
アヒト:
やっぱり、『WAITING FOR MY FOOD』を出したときは、これはいけるんじゃないかってみんなワーッてなったんよ。で、ワンマンやらないけんから曲も作らなきゃいけんって躍起になって曲作ったりして、次はどういうものを出すかって話になって、シングルを1曲出したいってことになって。歌モノみたいなのがいいんじゃないってなって、じゃあFC時代に作っとった「羽根の光」って曲があるけど、あれをもう1回リアレンジしてやるっていうのはどう?って言って。それで録ってみたけど、まあパッとせんかったね(笑)。
——(笑)。自分たちとしては新しい方向性のひとつとしてはありかなっていう感じだった?
アヒト:
そうそう。要するに、完全なギター・ポップの歌モノってよりも、多少四つ打ち感もありつつ、どっちかって言ったら80sの超ポップな曲、当時ラジオでかかっとってもおかしくないようなポップさ加減を出したかった。シンディー・ローパーとかああいう胸キュンソングを。
中畑:
キラキラした感じ。
アヒト:
そういうのをすごくやりたかったんやけど、なんとなくそれがうまくいかんかった。
——そんなこともありつつ、バンドの意識的にはどうだった?
アヒト:
うーん、ファーストの『WAITING FOR MY FOOD』って、みんなはどんなもんかって気にしてるわけ。俺がパート・チェンジしたばっかりだから食いつくっていうか。だから、その後の2枚目からが勝負だって思っとったんよ。だけど、それがうまくいかんかったから、3作目で頑張るしかないなと思って。で、次のフル・アルバムはもう、メーターを振り切ったものを作るしかないなと思って。
——その時は曲はどういう感じで作ってたの?
アヒト:
今と変わらんよ。基本的には全然。「メヒコ(Mexico Pub)」出来たときとか結構衝撃的やったけどな〜。
有江:
今までのVOLAにはそんなにない要素やったけん。
アヒト:
ちょっとすればコミック・ソングになる感じで、ギリギリのことをやっとるやん。でも、こういうガチャガチャした要素がほしかったんよ。乱痴気騒ぎやないけど、VOLA流のパーティ・ソングとして。で、この曲振り付けがあるんやけど、一番最初にライヴで<L・O・V・E>ってやったときは、すごいポカンとされて。なんだそれは、みたいな。
中畑:
スタジオで誰かが冗談で、「「YMCA」じゃないけど、振り付けをみんなでやったらおもしろいんじゃないか」「それいいね、アハハー」ってなったんですよ。でも、やるなら本気でやろうって言ってやったんだと思うんですよ。
有江:
ああいうのってやり始めて定着したら、みんな絶対やるんよ。それが楽しみで来るようになるけん。だからみんなであれをやったら、案の定定着したけんね。
——その時期、シングル出して、フル・アルバムを作ってた時期とかは、2人は個人的にどう感じてたの?
有江:
「羽根の光」出したときははっきり言って印象がよくなかったけん、あんまり話したくないんやけど(笑)、ファーストのミニ・アルバムの時は、自分がかっこいいことやってるなって感じはあって、シングルがうまくいかなくて、フル・アルバムでもう1回かっこいいこと取り戻したいって思ってて。で、その時は、「Mexico Pub」とか「MIND CONTROL」とかが出来て、VOLAにとって新しい扉が開けたなって思ったし。自分の気持ちとしては、ちょっと次のところに行けたっていうのがあった。
中畑:
俺はもうとにかく、楽しくて楽しくて。
——(笑)その時はシロップもあったでしょ?
中畑:
俺はそれまでバンドってシロップしかやってなくて、VOLAってシロップと全然また音楽のベクトルが違うじゃない。それはやってみないとわかんなかったことなんだけど、なんかね、簡単に言っちゃうと楽しいんだけど、ただ、何をやっても許されるような無邪気な楽しさじゃない。ピリピリしたところもある。シロップでも自分は頑張ってるつもりだったんだけど、VOLAをやって初めて、こういうこともあるんだとか、こういうこともできるんだってことがわかって。それも嬉しかったし、シロップって自分のバンドって意識も、がっちゃん(五十嵐)の曲を演奏するバンドって感覚も両方あったの。でもVOLAって、地道っていうのも違うけど、ちゃんと自分で歩いてる感じがすごいあって、嬉しかった。そういう音源を出すことが。
——アヒトくんは、いろんなフェスに出て、ザゼンともすごくかぶってるじゃない。今年もライジングで一緒だったけど、観た?
アヒト:
観た。めちゃくちゃ良かったよ。もうザゼンとVOLAって全然違うところにおるしさ、全然違うことしよるしさ、ちょっと前くらいから、冷静に一つのカッコいいバンドとして観られるようになってきつつあったのね、自分の気持ちとして。MySpaceの映像とか観て、ギター弾いとらんやん、ハンドクラップだけやん、でも、すごいサウンドやねとか思いながら。あの曲は地味やけど、でもアルバム聴いたらやっぱりすごいなって思っとって。で、ライジングの時は、吉村さん(bloodthirsty butchers)と一緒に観に行って、ライヴ観たら、ある意味、いろんなものに決心もついたし、ふっきれもしたね。
——それまで、抜けてから向井くんと話す機会あったの?
アヒト:
1回も話してない。ライジングの時にちょこっと話して、「ライヴすごい良かったよ」って。今自分がやりよるバンドとかに対してすごくもやもやしとったことがあったけど、今日のザゼンのステージ観て、すごく決断する気持ちになったって言って。で、昔向井くんがよく、イースタンのライヴ観てエネルギーをもらってくるわって言ってイースタンのステージ観に行ったりしよったんやけど、それと同じような気持ちになった、みたいなことを話して。
——アヒトくんは、ずっと向井くんと同じバンドでドラムを叩いてて、そして今は向井くんと同じ立場にいるわけじゃん、人をひっぱって真ん中に立って歌を歌って。
アヒト:
自分としては、あの人のやり方全部が全部、いいとは思わんよ。だけど、見習うべきところはいっぱいあるよ。だって純粋に、自分道を追求するのみ、みたいな所があるやん。その姿勢はすごいと思うし、出てくる音楽も、日本酒みたいな音楽やん、純米酒の。砥いで砥いで、漉して、濁りがない透き通った音楽っていう。アクは強いのかもしれんけど。ワールド・ワイドなもんやと思うし。
●メジャー・デビューと、バンドのこれから
——で、インディーから3枚出して、今回メジャーで。ナンバーガールもシロップもそうだけど、そうやって活動のフィールドを移すことについて、どういう思いがある? なぜこの場所を選んだかっていうのが聞きたいんだけど。
アヒト:
俺ね、インディーズしかやんないとかっていう思考がないんよ。どこでやっても一緒なわけよ、結局。例えば、「君たちカッコいいね〜。でもメジャーに行ったらこういう動きをしなきゃいけない」って言うようなところには行くわけないやん。出来るわけないし。その時点で違うやんっていうのはあるけど、そうやなかったら、メジャーは要するに、自分たちの音楽をどういうふうにしようかってことだけを考えて生活していけるからさ。あとは、やっぱりよりたくさんの人に聴いてもらえるっていうフィールドがあるから。で、レーベル側も遊びやなくてビジネスでやってるから、そのへんのことをしっかり考えてやってるっていうのもあるだろうし。
——じゃあ最後に、今後、それぞれVOLAをどうしていきたいとか、どうなっていきたいとかを聞きたいんだけど。
有江:
VOLAってバンド自体が一つのジャンルになって、もっともっとVOLAの音楽の幅が広がっていけばいいなって。で、それがみんなの耳に入れば。
アヒト:
説明するときにさ、例えば若いバンドとかが「それってどんなジャンル?」「VOLA」「ああ〜」みたいな(笑)。
有江:
そうそう。
——さっき言ってた、80年代の『ベスト・ヒットUSA』みたいなキラキラした感じっていうのが共有できる単語になってるように。
有江:
もうそういう表現ですらないの。もっともっとでっかいものっていうか、バンドにその音楽が集約されるような感じに。
中畑:
今俺思いついたけど、VOLAって、もしかしたら地球上じゃないところでライヴできるバンドになるんじゃないかなって。
有江:
「俺、言ってやった!」みたいな顔になってる(笑)。どこでやるんだろう(笑)。
中畑:
わかんないけど、やれるんならやってみたい(笑)。そういう、ギャラクシーな感じ。合いそうじゃない?
——じゃあ、それで(笑)。
アヒト:
俺はなんかね、職人みたいなバンドにはなりたくないなって。世間と関わっているような感じっていうか。今はすごくいびつなものかもしれんけどさ、だんだんメインストリームに入り込んで行くっていうか。
VOLA & THE ORIENTAL MACHINE OFFICIAL WEBSITE
http://www.volafc.com/
VOLA & THE ORIENTAL MACHINE OFFICIAL MySpace
http://www.myspace.com/volaofficial