<ジョニー・シアラ インタヴュー>
--まず初登場ということで自己紹介をお願いします。
ジョニー:
ハーイ! 俺は世界をまたぐ面白パンクバンド、デスセットのメンバーで、日本に行くのを超、超、超楽しみにしているジョニー・シアラ。
--サウンドを聴いて、バックボーンにパンクがあると思うのですが、音楽(パンク)との出会いから、バンド結成にいたるまでを教えて。
ジョニー:
バンドがスタートしたのは2005年。俺が友達のボウ・ヴェラスコに会ったときだよ。俺ら2人は同じ音楽に興味を持ってたんだけど、それぞれ違う時期にその音楽をやってたんだ。俺は高校と大学の時パンクバンドでプレイしていて、だんだんエレクトロミュージックに興味をもつようになってきてたんだけど、ボウはその逆で、先にエレクトロミュージックをやってて、後からパンクミュージックに興味を持ちだした。方向は正反対だったけど、俺らは共通の音楽に関わっていて、ちょうどその中間で出会ったのさ。俺らはいつもパンクロック、エレクトロ、ヒップホップを聴くし、その中間をとってるから、なんかいろんなものが混ざった変な生き物みたいだなってことでデスセットっていう名前がポンと出てきたってわけ。
--パンクとエレクトロとヒップホップの3つが要素なの?
ジョニー:
そう。その3つはどれも同じくらい大事だよ。まずパンクロックのエナジーってすごく大事だと思うんだ。そしてそのエナジーを残しつつ、もっとエレクトロっぽくする。ね、なんか何個かのピースがくっついてできた、奇妙なちっちゃい生き物みたいだろ?
--今の自分たちのサウンドを形成する上で、インスパイアされたバンドは?
ジョニー:
そうだね、俺らの友達のバンドからは、もちろん大きな影響を受けてるよ。BEST FWENDSとかNINJASONIK、JAPANTHERとかね。俺はハジけたパンクロックが好きなんだ。だからBEASTIE BOYSのパンクなんかが好きだな。彼らのヒップホップも好きだけどね。いっぱいいすぎてバンドの名前は特に言えないけど、エレクトロやボルチモアのクラブは好きでよく聴いてるから影響を受けてるよ。でもやっぱりインスパイアされてると言えば、さっき言ったような友達のバンドだね。
--個人的にはどう?
ジョニー:
Japanther! 彼らは俺が初めて自分の目で見たオーストラリアのDIYバンドだったから。おそらく彼らの前は、オーストラリアでDIYバンドを見る機会ってそんなに多くなかったし、DIYバンドそのものがあまり存在していなかったんだ。だから彼らを見たときすごくインスピレーションを受けたんだよ。
--パンクにエレクトロサウンドを取り入れようと思ったキッカケは?
ジョニー:
うーん、というよりは、まず俺らはコンピューターやサンプラー、キーボードで曲を作るんだけど、これってエレクトロサウンドのやり方と同じだよね? だから俺らはエレクトロのスタイルで曲を作ってるような感じ。で、それをプレイするときはパンクになるんだ。パンクロックのエナジーが、そのプロジェクトにすごく自然にマッチするんだよ。だから曲ができるまでのプロセスはエレクトロっぽくて、それをプレイするときはパンクになるってわけ。
--チープなエレクトロサウンドを生み出すのにこだわりの機材などがあれば教えて。
ジョニー:
何か特別なものを使うというよりは、ノーマルなものをどう扱うかだと思うんだ。僕らはきっと、普通のツールを違った方法で使ってるんだよ。例えば、俺がレコードをミックスしようとしたとき、サウンドエンジニアの奴らはよく怒ってた。僕の好きなサウンドがわからなかったみたいで…。彼らにとっては、ギターやボーカルが軽すぎたらしいんだ。さっきも言ったけど、エレクトロのスタイルで曲を作って、パンクスタイルのライブ音を上から加える。そうすると二つが混ざるから、それぞれ完全なエレクトロ、パンクではなくて、ちょっと違うサウンドになるよね。ローファイだな、俺らが作っている&作ろうとしている音は。
--じゃあ機材ではなくて、そのサウンドを作るためにどういうテクニックを使ってる?
ジョニー:
そうだね。やっぱりエレクトロやパンクロックにはヘヴィーなギターや叫びなんかは必須だよね?だから俺らはそれを消そうとはしてないんだ。そのかわりに、曲そのものをメロディックにしているよ。歌える部分もあって、その間に超デカイ音も入れば、叫びも入る。そんな感じ。それでちょっと軽い感じのサウンドになってるんじゃないかな。
--私でさえ、口ずさめるもんね!
ジョニー:
そう! まさにそれがコンセプトさ! CDを聴いたり、ライブを見たりした後に道を歩きながら口笛でふけちゃうような、そんな音楽を作ろうとしているんだ。
--アートワークにもこだわりが見うけられるけど、コンセプトなどあれば教えて。
ジョニー:
あるよ。俺はこのコンセプトを気に入ってるんだ。真逆のものがひとつになってるのさ。例えばトラは、アグレッシヴなイメージをもった動物だろ? でもCD全体のレイアウトはポップな感じで色も明るい。そして結果的にその正反対の二つがうまく調和してるんだ。攻撃的なトラと、幼稚園みたいな背景がね。アートワークはボルチモアに住む俺らの友達に頼んでるんだけど、彼は天才だよ。彼とは本当に仕事がしやすい。彼のアイディアを聞いたとき、俺はその全部を気に入ったんだ。7インチ(EP)のデザインなんかもそうだよ。とにかく、あのコンセプトは好きだね。アグレッシヴなイメージと、明るい色使い。あと子供っぽいデザイン。悪の幼稚園って感じかな(笑)
--活動場所をオーストラリア、ブルックリン、ボルチモア、フィラデルフィアと変えているけど、楽曲やバンド活動にどのような影響がある?
ジョニー:
そうだなぁ。まずオーストラリアからブルックリンやボルチモアに移った点では、曲の届け方が変わったかな。シドニーから、小さくてクレイジーなウェアハウス・パーティーの世界に場所が変わったわけだからね。曲を披露するチャンスも少なくて、ショーの時間も短くて、流れも速い。だから、音楽のデリバリーの仕方が変わったんだ。シドニーでたくさん曲を作って、それは殆ど再構成することはなかったけど、ブルックリンやボルチモアにきて、もっとウェアハウスのパーティーキッズたちがどう思うかとか、どうやったらみんなクレイジーになれるかを考えて曲を作るようになったよ。最近はまたちょっと違うんだけどね。いろいろな場所でショーをするようになったからさ。だから次回の作品はまた曲調が変わってくるかもしれないね。
--今はフィラデルフィアに落ち着いてるでしょ? 次また場所を変えたりはしないの?(笑)
ジョニー:
どうだろうね(笑) 俺らはいつも“スペース”があるところで活動しようとしてるんだ。場所は関係ないと思ってる。必要なのはスペースなんだ。ボルチモアに引っ越したときはラッキーだったよ。俺らはボルチモアのことを何にも知らずに足を踏み入れたんだけど、そこがたまたまミュージックシーンの盛んな場所だったんだ。でもその時は、もうチャンスをつかむスペースがなかったんだよね。だからフィリーに引っ越した。フィリーが大好きなわけでもないし、大嫌いなわけでもない。ただより大きなスペースがあったから引っ越したんだ。人口とか、ショーができるチャンスがどれくらいあるかとかね。シドニーには特にそれが少なかったんだ。
実を言うと、アメリカにくる時はそこまで深く考えてなかった。ただ、アメリカにいって、3ヶ月くらい滞在して、できるだけギグをやってみよう、くらいの勢いで渡米したんだ。で、ギグをやっていくうちにEPを作ろうって話になって、評判がよかったから、次はそれがレコードになって…だから行けるとこまで行こうって話になってアメリカに残ることにしたんだよ。
--シドニーからアメリカに渡った時は、もちろんさっきも言ったように変化があったんだろうけど、ブルックリンやボルチモア、フィラデルフィアは国は同じじゃない? 動く度にそれに応じて変化があったり、やっぱりベターな場所に移ってきたなっていう確信は引っ越す度にある?
ジョニー:
変化とかベターかを説明するのは難しいけど、やっぱり自分達が住んでたときは、その場所にはスペースがあったとは言えるね。ブルックリンは最高のミュージックシーンを持ってた。でも物価がかなり高かったから出ざるを得なかったんだ。2006年くらいにブルックリンにいたけど、たくさんのバンドが集まってて、そのほとんどはまだレーベル契約をしてないようなDIYバンドで、賑やかだったと思うよ。でも今はメインストリーム化してるとも言えるよね。ボルチモアも同じ。未だに良いミュージックシーンを持っているとは思うけど、ビーチハウスみたいな、地元で、まだレーベル契約していないバンドがショーをやりまくって、それが人気だった時代があった。でも今はそういったバンドが全部ビッグになって、外でのツアーに忙しくなってる。そしてファンももうそのミュージックについていってしまってるから、アンダーグラウンドがまだそこに存在してるのは確かなんだけど、かつてと同じくらいの勢いがあるとは言えないんだ。だからDIYバンドの活動の場が減るんだよ。それでフィリーに引っ越したわけ。ボルチモアと近いし、住めるところもたまたまあったし、バンドメンバー全部がそこに引っ越せたからね。
--それぞれの地域には地元のシーンがあると思うけど、それぞれシーンはどう?
ジョニー:
ボルチモアのシーンも面白かったし、特にブルックリンは最高だったよ。ウェアハウスの、アンダーグラウンドでDIYのバンドが盛り上がってた。NINJASONIK、TEAM ROBESPIERRE、JAPANTHERなんかが人気だったよ。健全なアンダーグラウンドのミュージックシーンだったと思う。フィリーはまだ引っ越したばかりだからわからないな。でもフィリーは良いノイズ・シーンをもってると思うよ。でもそれは僕が大好きなシーンではないんだよね。嫌いではないし、好きだけど、ハマってるシーンではないんだ。俺の意見では、アメリカではやっぱりブルックリンとボルチモア、LAの3都市に一番おもしろくて大きなパンクシーンがあると思う。パンクっていうのは、ゴリゴリのあのパンクじゃなくてアンダーグラウンド的なほうね。ブルックリンでは結構いろんなバンドと友達になったよ。NINJASONIK、TEAM ROBESPIERRE、CEREBRAL BALLZYとか。あとフィリーではSPANK ROCK! ボルチモアではPONYTAILとかかな。
--あなたたちを取り巻く、現在の音楽シーンについてどう思う?
ジョニー:
うーん。前に言ったように、俺たちはずっとツアーにでていていろんな場所を旅してるから、今の音楽シーンについていくのってすごく大変なんだ。忙しくって。時々まるで自分が泡の中にいるような感じがするくらいさ。今ってどうなんだろうね。でも去年のシーンではローファイバンドが注目されたって言えるんじゃないかな。例えばNO AGEがグラミーにノミネートされたとか。クールだよね!! 僕らのリビングルームでプレイしたことのあるバンドが、グラミーだよ!? すごいよね。超クレイジーで最高だよ。だから2008年のシーンってクールだったと思うな。ローファイのパンクロックバンドがスポットライトを浴びたんだから!
--次ってどんなシーンがくると思う?
ジョニー:
何がくるんだろうね。俺は自分の好きな音楽のことしか気にしないから、実はシーンがどうとかってのはどうでもいいんだけど、スーパーポジティヴな、インストゥルメンタル中心のパンクロックに若者がハマり初めてるって聞いたよ。あのエナジーを再び求めてるのかもね。でっかくてヘヴィーで、ハードコアなサウンドが流行りそうなんだってさ。
--2月のジャパン・ツアーではYOUR SONG IS GOOD、Riddim Saunterという日本のバンドとツアーするけど、どんなツアーになりそう?
ジョニー:
最高だね。Riddim Saunterは去年フジロックで俺らの前にプレイしたんだよ。クレイジーな奴らだった(笑) キーボードを振り回しながらステージをかけまわってたよ(笑) いいエナジーを持ったバンドだと思う。東京で一緒に遊んだしね。原宿をブラブラ(笑) 楽しかったよ! 超いい奴らなんだ。だから彼らと一緒にツアーするのを楽しみにしてるよ。YOUR SONG IS GOODともインタヴューをしたことがあるんだけど、彼らもクールだった。YouTubeで彼らの曲をいくつか見たよ。見事なエナジーをもったバンドだと思う。だから彼らとのツアーももちろん楽しみだね。
日本でのツアーは…超ヤバくて最高に楽しいモノになるよ! 汗びっしょりになるから! どんなに寒くてもね(笑) フジロックとは、また違ったものになると思うよ。アメリカでたくさんショーの経験を積んだあとのギグになるからね。それを日本でも披露するのを本当に楽しみにしてる。
--何か、日本のファンのためだけに特別なことはしないの?
ジョニー:
どうしようかなぁ。日本語で話そうかな(笑)たぶんね。聞けたらラッキーだと思って(笑)
--ジャパン・ツアー後の予定は? 2009年のTDSはどうなりそう?
ジョニー:
ジャパン・ツアーの後は、まずは2、3日メキシコでツアーがあるよ。そのあとはSXSW。超楽しくなるから! だって、5つのバンドで一緒に周るんだけど、それが全部友達のバンドなんだ。ずーっと前から計画してたんだよ。俺らと、CEREBRAL BALLZY、TEAM ROBESPIERRE、TOTALLY MICHAEL、あとNINJASONIKね。
2009年は、ちょっと休憩が欲しいな。新たに曲作りがしたいからさ。新たに何人か一緒に仕事する仲間が増えたんだ。だから次回の作品は更におもしろいものになると思うよ。
--違ったスタイルのものになる? それとも今のスタイルを保ったまま、それがベターな感じになった作品になる?
ジョニー:
ぜーんぜん決めてない(笑) まだ何にも計画してないんだ。6、7ヶ月後にまた聞いて(笑)
--最後に日本のファンにメッセージを。
ジョニー:
皆が汗だくになって、クレイジーになるのを楽しみにしてるよ! そこに俺がジャンプするから! フジロックみたいにね。ツアーで会おう!!