PREMIUM:ココにしかないレアなオリジナルコンテンツが満載!

あまりに壮大なイマジネーション。オーケストラとロック・バンドが織り成す圧倒的なエネルギー。今年で結成10周年を迎えた孤高のインストゥルメンタル・バンド、MONOは、最新作『Hymn To The Immortal Wind』でいよいよ異次元に突き抜けた。彼らが凡百のインスト・バンドと一線を画す理由とは何か。必要なのは“癒し”ではなく“勇気”であると語る、リーダーのTAKAに話を聞いた。

Interview & Text : Eriko Ishii
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)
Hymn To The Immortal Wind / MONO
HECY-1028 2,310yen (tax in)
2009.3.4 on sale
  1. Ashes In The Snow
  2. Burial At Sea
  3. Silent Flight, Sleeping Dawn
  4. Pure As Snow (Trails of the Winter Storm)
  5. Follow The Map
  6. The Battle to Heaven
  7. Everlasting Light
<TAKA Interview>
 
――99年にMONOを結成した時、どんなヴィジョンを持っていましたか。
TAKA:
それまでずっとヴォーカル入りのバンドを作ってたんですよ。でも曲を書くのは僕でヴィジョンも僕の中にあるから、続けていくとヴォーカルに違和感が出て、バンドが解散するのは当然なんですね。それをずっと繰り返してたら20代後半になって、やっぱり音楽を辞める人たちもいますよね。ご飯を食べていくための音楽の仕事に転向する人もいるし。でも自分はそうなるのが絶対嫌で、もう完全に音楽を辞めるか、一生できる、誰にも媚びない自分の表現をするのか、自分の中でものすごい覚悟を決めて。それで結成したのがMONOなんですよ。
――当時インストといえば、モグワイの名前が出てきたような時代です。
TAKA:
そうですね。僕、スティーヴ・アルビニが好きでずっと追いかけてきたんで、彼の周辺で生まれる、のちに音響系と呼ばれる人たちに敏感ではあったんです。モグワイが出てきた時もなるほどと思ったし。でも日本ではドラムンベースとかビッグ・ビーツとかのギターレス・ミュージックが主流で、ギターがダサいんじゃないかという風潮があった。僕からしたら、またギター弾いてもいい時代が来たのかな、って感じてたのは事実です。98年とかそのころ。
――MONOではまず、ギターをメインで出したかった?
TAKA:
僕はギタリストですからね。当時はいろんな衝動がありましたよ。極端な話、人生で一度も体験したことないような大音量を出してやろうとか(笑)。歌がないんで、音量いくらでも出せますしね。一回見たら忘れられない衝動が欲しくて、そんなことばっかり考えてました。とにかく居場所がなくて、世に溢れかえってる音楽もおもしろくなくて、自分にも何もなかったですから。
――何かと闘う気持ち、敵に向かっていく気持ちが強かった。
TAKA:
音楽はカウンター・カルチャーじゃないといけない、そうじゃないと残っていかないと僕は思うんです。70年代のロックをいつ聴いてもいいと思うのは、やっぱり文化として残っているから。音楽って、文化や思想と密接になった時に初めて意味を発するんじゃないかって思うし。僕は今アンダーグラウンド・シーンにいますけど、アングラって言葉は嫌いなんですよ。インディペンデントって言葉は好きだけど、もっと大きな舞台で闘いたい。それで文化や価値観自体を動かせたら、一番やり甲斐があることかなと思っていて。
――だけど10年間で音楽も進化していきましたよね。今のMONOは、大音量や衝撃という言葉だけでは語れないサウンドになっています。
TAKA:
そうですね。僕、洋楽ファンだったんですよ。アメリカのインディペンデント・バンドみたいになりたくて、ずっとスティーヴ・アルビニが好きで。だけど自分がヒーローだと思ってた人たちと実際会って友達になって、そこで話してて気づかされていくんですね。自分の表現は洋楽の模写だって。そこから大きく変わりましたね。洋楽のファンだった自分は完全に消えたし、だったら自分個人というものを表現したくなってきた。それでシンフォニックでエピックなものに惹かれていきましたね。もっとロマンチックでシネマティックなもの。たとえばベートーヴェンやエンニオ・モリコーネと同じくらい壮大な感動を出してみたい。そういうことを考えるようになりましたね。
 
――新作は特にそうですね。過去の作品の中でもとびきりロマンチック。
TAKA:
最初は小さいバーで、どんだけの人にインパクトを残せるかって大音量でギターを鳴らしてたんですけど、無名だし人も集まらない。続けてるとどんどん暗くなってくるんですよ。その退廃的な時期に書いたのがセカンド・アルバムで。でもある日、最初5人だった客が400人になっていた。そうなると気持ちが変わって、今度はその人たちに感謝する曲を書くようになった。それがサード・アルバムなんです。それまで、“なんで俺は日本人に生まれてきたんだ”ぐらいのことを思ってたのが、初めて日本人で良かったなと思ったし、だったら自分たちを堂々と出していこうと思って、広島の原爆の話をモチーフにした曲を書いたり。そしたら今度はそれが認めてもらえて、もっとバンドが大きくなった。それで前作の『You Are There』を作って。あのアルバムでは、苦境や逆境を乗り越えて歓喜に至る、その歓喜の部分を表現したかったんです。それが世界中で評価してもらえて、今回は初めて、死ではなく生から始まってみようと思ったんです。もっと希望に溢れたものに変わりたい、って。
――スタートの原動力が大きく違ったわけですね。
TAKA:
そうですね。悲しみって同調しやすいし、怒りもそう。ブッシュが嫌いだってみんなすぐ同調できますよね。でもオバマが出てきて、これから何か変わるかもしれないっていう希望を感じる、その同調の仕方って全然レベルが違うじゃないですか。悲しみや怒りで同調するのは、あまりいいエネルギーだと思わなくて。願わくば、オバマの笑顔のような光に対するエネルギーのほうがいい。特に2009年の今は、漠然とそういう音楽が必要じゃないかと思ってました。悲しくてヘヴィな音楽を書くべきじゃないと思っていて。
――ただ、これまでの曲の書き方とかクセってあるじゃないですか。新しいテーマに向かう時の苦労も多いかと思うんですけど。
TAKA:
苦労の連続でした(笑)。“煌々としたエネルギーに溢れるものを”っていうテーマは頭の中にはあるんですよ。だけど頭に描いてたものを形にしたら……確かに上っ面は変わったけど、自分がときめかない。それですごく落ちちゃって。で、その曲には後半に50人とか100人くらいの合唱を、ベートーヴェンの「第九」のような合唱を入れようと思ってたんです。合唱という形で言葉を残したいと思って。その言葉をL.A.で出会った脚本家に書いてくれって頼んでいたんですね。結局その曲は全部ボツにしちゃったんですけど。
――もったいないですね。
TAKA:
でも、当時は曲が書けない状態でしたから。そのころから作曲スタイルを変えたんですね。最初から最後まで書き切るんじゃなくて、パッと浮かぶ何かのパーツ、キーもテンポも違うピースだけを毎日毎日残していったんですよ。で、2か月経った時に、そのパーツをパズルみたいに組み合せたら曲が姿を現した。すごくイビツで構成もどんどん変わっていくんですけど、なんかすごいものを感じて、それを脚本家に送ったんですね。そしたら、どんどん変わっていく構成を、彼女はどんどん言葉にしてくれたんですよ。それを読んで僕はストーリーの続きを書いて、それを送ったらまた言葉が返ってくる。その中からまた音楽のピースだけを作っていく。今回は全部その組合せで作ったものですね。
――確かに、今回は言葉とストーリーが非常に重要で。インストゥルメンタルのバンドとしては珍しいですけど。
TAKA:
はい。でも世界中で僕たちみたいなバンドが溢れかえって、みんな「曲にスペースがあるからこそ、いろんなことを考えられる」って言いますよね。それは曖昧だし、インストゥルメンタル・バンドの長所でもあり欠点でもあると思って。でも僕たちが言葉を残して、自分たちのヴィジョンを聴く人と共有できるなら、その表現はより深いものになる。もう映画とか本に近い世界を音楽で提示できると思った。インストゥルメンタル・バンドだからってそこにあぐらをかくわけにはいかないなって思いますよ。
MONO World Tour 2009 -Hymn To The Immortal Wind-
DATE : 2009.3.11 (wed)
VENUE : Unagidani SUNSUI, Osaka
OPEN : 18:00 / START : 19:00
INFO : SMASH WEST 06-6535-5569
DATE : 2009.3.14 (sat)
VENUE : LIQUIDROOM ebisu, Tokyo
OPEN : 18:00 / START : 19:00
INFO : SMASH 03-3444-6751
2009.3.20 (fri) Digital, Brighton, UK
2009.3.21 (sat) Hare and Hound, Birmingham, UK
2009.3.22 (sun) Rescue Rooms, Nottingham, UK
2009.3.23 (mon) Stereo, Glasgow, UK
2009.3.24 (tue) Corporation, Sheffield, UK
2009.3.25 (wed) The Croft, Bristol, UK
2009.3.26 (thu) Scala, London, UK
2009.3.27 (fri) Glaz'Art, Paris, France
2009.3.28 (sat) Patronaat, Haarlem, Netherlands
2009.3.29 (sun) Hafenklang, Hamburg, Germany
2009.3.30 (mon) Loppen, Copenhagen, Denmark
2009.3.31 (tue) Debaser, Stockholm, Sweden
2009.4.1 (wed) John Dee, Oslo, Norway
2009.4.2 (thu) A2, St Petersburg, Russia
2009.4.4 (sat) Lido, Berlin, Germany
2009.4.5 (sun) Stary Browar, Poznan, Poland
2009.4.6 (mon) Beatpol, Dresden, Germany
2009.4.7 (tue) Republic Palac Akropolis, Prague, Czech
2009.4.8 (wed) Arena, Vienna, Austria
2009.4.9 (thu) Feierwerk, Munich, Germany
2009.4.10 (fri) Fuzz Club, Athens, Greece
2009.4.12 (sun) Domino Festival, Brussels, Belgium
2009.4.13 (mon) Zentrum-Altenberg, Oberhausen, Germany
2009.4.14 (tue) Nachtleben, Frankfurt, Germany
2009.4.15 (wed) Grabenhalle, St Gallen, Switzerland
2009.4.17 (fri) La[2], Barcelona, Spain
2009.4.18 (sat) Ritmo Y Compas, Madrid, Spain
2009.4.19 (sun) Festival Lacrymal, Toulouse, France
2009.4.20 (mon) BT59, Bordeaux, France
2009.4.21 (tue) Olympic, Nantes, France
2009.4.22 (wed) Printemps De Bourges, Paris, France
2009.4.23 (thu) Rockhal,Esch-Alzette, Luxembourg
2009.4.24 (fri) Roadburn Festival, Tilburg, Netherlands
2009.5.8 (fri) Society for Ethical Culture Concert Hall, New York, NY
2009.5.9 (sat) (Le) Poisson Rouge, New York, NY
   
MONO OFFICIAL WEBSITE
http://www.mono-jpn.com/
MONO OFFICIAL MySpace
http://www.myspace.com/monojp