<THE BLOODY BEETROOTS BOB RIFFO インタヴュー>
──98年からプロデューサーとして活躍していたようですが、THE BLOODY BEETROOTSとしてアーティスト活動をスタートさせたきっかけはなんだったんでしょうか?
BOB RIFFO :
もともとは、あるパーティのためだけの一夜限りのユニットだったんだけど、それがウケてね。もっとやってみようかということになったんだ。いつしか作品もリリースするようになって、こうして東京に来れたり、フジロックにも出演できたりしたわけだから、なにが起こるかわからないよな。
──ライヴやDJのときはいつもそのマスクを?
BOB RIFFO :
マスクをつけることによって、日常から非日常へとモードを変えることができるんだ。ヒーローが姿を変えて特殊な力を得るようなものさ。
──おばあちゃんの手作りだそうですね。
BOB RIFFO :
そう。だから、これひとつしかないから、大切にしないといけないんだ。
──いい話ですね。
BOB RIFFO :
ありがとう(笑)。
──ライヴではTOMMY TEAを迎えて、THE BLOODY BEETROOTS DJ SETとして活動していますが、彼をフィーチャーする意味合いは?
BOB RIFFO :
TOMMYはもともと俺がやっていたパンク・バンドのマネージャーだったんだ。イタリアの音楽マーケットはすごく特殊でね。バンドだけでツアーをするのは金銭的にも非常に難しいんだよ。だからバンドもありますけどDJセットもありますよっていう、AサイドがバンドでBサイドがDJという具合にパッケージして、各地のライヴハウスやクラブにオファーしていたんだ。そうしたスタイルでやっていたんだけど、いつしかBサイドの方がウケるようになってさ。だからその時のようにTOMMYと一緒にやってるわけさ。今回のフジロックも本当は両方で出たかったんだけどな(笑)。それでTHE BLOODY BEETROOTSが完結するからさ。
──さて、ここからは1stアルバム『ROMBORAMA』について聞かせてください。STEVE AOKIのDIM MAKからのリリースとなりましたが、彼とはどのようにして出会ったのでしょうか?
BOB RIFFO :
MySpaceを通じて、彼にアプローチしたんだ。DIM MAKのサウンドは最高だからね。MSTRKRFTのJFKを通じて仲良くなって、今は家族同然さ。レーベルもマネージメントも一緒だからね。
──STEVE AOKIはこのアルバムを聴いて、どんな風に感想を言ってましたか?
BOB RIFFO :
最高。その一言だったね。
──『ROMBORAMA』はずっとあなたが携わってきたプロデューサー的な視点で制作されたのか、それとも自らの中から自然に出てくるグルーヴをそのまま投影したもの、どちらでしょうか?
BOB RIFFO :
後者だな。アルバムは自分の感情をそのままフィルターをかけずに投影したものだ。俺のダークサイドに存在する音楽なんだ。
──あなたにとってのダークサイドとは?
BOB RIFFO :
たとえば目の前にいる君を殺したいという気持ちがわくとする。それがダークサイドなみたいなもんだ。逆に君に親切にしてあげたい気持ちにしてあげたい自分もいる。粗暴で感情的な自分と冷静で理知的な自分のバランスをうまくとっているというわけさ。
──その割合はフィフティ・フィフティなんですか?
BOB RIFFO :
時と場合によるな(笑)。
──タイトル曲である1曲目ラストの30秒にもわたってフェイドアウトしていく余韻が、なんだか不穏な雰囲気で、そのダークサイドを感じさせます。
BOB RIFFO :
まさにその通りなんだ。そのパートはまさにダークサイドの入り口であり、そこからこのアルバムのストーリーが始まると言っていいね。
──サウンドに関してはエレクトロと言われることが多いと思いますが、あなたのジャンルレスなリスニング体験を立体化して、ライヴ感覚でまとめていった感じがします。だから、エレクトロという表現だけではすべてを語りきれないように思えるのですが。
BOB RIFFO :
そんなに難しいもんじゃない。俺の音楽はアナーキーという一言ですべてを語ることができる。どこにもない、誰にも媚びない音楽なんだ。アナーキーであることは俺の人生のテーマでもある。
──悪い意味ではなく、THE CHEMICAL BROTHERSやFATBOY SLIMの断片が混じっているサウンドだと感じました。
BOB RIFFO :
なるほど。確かにそのふたつのアーティストは好きだけれどど、あまりこの作品に直接的な影響はないな。むしろDAFT PUNKには影響された、サウンドもパフォーマンスもね。
──参加アーティストについてコメントをください。THE COOL KIDSとRAW MANの参加には驚かされました。
BOB RIFFO :
THE COOL KIDSはまさに名前どおり、クールの一言だ。彼らの韻の踏み方がいい。メジャーになって大もうけしてやろうっていうような野心まるだしなところもないし、そのインディなスタンスも共感できるな。RAW MANは昔ハウスを作っていたので、ハウスへのトリビュートという感じかな。7曲目にフィーチャーしたLISA KEKAULAはBASEMENT JAXXの新作にもフィーチャーされているよ。声がソウルフルで、そういう熱い声が欲しいと思ったので、声をかけたんだ。思っていた以上に効果的なトラックになったね。VICARIOUSは天才でクレイジーだ! クラシック好きでバッハへのトリビュートをしたかったら、彼にピアノを頼んだんだ。いいピアニストなんだよ、彼は。
──TANINO LIBERATOREによるアートワークは、どのようにして生まれたのでしょうか?
BOB RIFFO :
TANINOは俺の人生を変えた人物だね。彼の絵に出会ったのは9歳のときなんだけど、まあ9歳であの絵を見るのはマズいんだろうけど(笑)、非常にヴァイオレントで絵もストーリーも言葉も過激で相当ブッとばされたんだ。こういう雰囲気にしてほしいと、彼にはリクエストはしたんだけど、俺たちは音を作る、彼は描くということで、同じゴールを目指して作業したという感じが大切だった。というのも、このアルバムはTANINOがアートワークを手がけたことで、ひとつの作品として完成するからなんだ。
──彼の過激なアートワークをジャケットに起用することによって、聴き手に何を伝えたかったのですか?
BOB RIFFO :
彼の絵には本物のアンダーグラウンドなスピリットが宿っている。そのことをみんなに伝えたかったんだ。だから、今回のアルバムはアンダーグラウンドの空気感や雰囲気をかたちにできた世界で最初のものかもしれないと思っている。俺がヴェニスの地下室で制作したこともあるしな(笑)。
──次の作品は本作とはまた違ったものになると思いますが、今後の創作活動を通じて、一貫してぶれないテーマや気持ちがあれば教えてください。
BOB RIFFO :
STEVE AOKIとのユニット、RIFOKIがスタートしたばかりだから、まだTHE BLOODY BEETROOTSのついての次の展開は考えられないけど、君の言う通り、まったく違ったものになるだろうな。それはまちがいない。明日、1か月後、3か月後に体験することによっても、日々変化していく気持ちによって音は変わってくると思う。でも、俺がこのインタヴューで何度も口にしたアナーキーというキーワードだけは変わらないはずだよ。
<フジロックでの超絶パフォーマンスをレポート!>
THE BLOODY BEETROOTS "FUJI ROCK FESTIVAL '09"
2009.7.26 (sat) @ RED MARQUEE
そのゲノムのマスクと、他のクラブ・ミュージックとは一線を画す、ロッキンな音づくりで世界各国のクラブ・ミュージック・ラヴァーズから注目を浴びているTHE BLOODY BEETROOTS。彼らの前に出演した80kidzからのフロアの熱を受けて、初来日となった深夜のRED MARQUEEは初っ端からいきなりアッパーな雰囲気に包まれた。
開始20分ほどで、前日のDIPLOもかけた彼らのキラーチューン「WARP 1.9 FEATURING STEVE AOKI」へ。彼らが所属するDIM MAK RECORDSのレーベルオーナーSTEVE AOKIのシャウトに合わせて、拳を突き上げ踊るオーディエンス。会場はいやおうなしに最高沸点へ達した。その後もベースライン重視の楽曲などをはさみつつ、しまいにはCDJも持ち上げてミックスをするなど、普通のクラブ・アーティストでは絶対に考えられないアッパーなパフォーマンスを披露してくれた。それも聞けば納得。中心人物のBOB RIFOはパンク・バンドで活動していたとき、ツアー・マネージャーとライヴの転換中に仮面をかぶってDJセットをやり始めたら、ウケたので本格的に活動しはじめたというなんともユニークなエピソード持っているからだ。
彼らはオーディエンスから求められているダンス・ミュージック以外の要素を元々持ち合わせており、それに加えてさらにアッパーに仕上げるロッキンなビート、腰に来るようなブーミーなベースライン、トランシーなシンセの音で喜怒哀楽を自由に表現する奔放さ、それらすべてを飲みこむヘッド・バンキングしてしまいたくなるような怒涛の熱量がある。文句なしに次世代ダンス・シーンを代表するにふさわしい存在になるだろう。
Text : Chihiro Onodera