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MASSIVE ATTACKが約7年ぶりとなるニュー・アルバム『HELIGOLAND』を発表した。彼らが友人と呼ぶ多彩かつジャンルレスな才能の持ち主たちと編み出していったサウンドは、やはりMASSIVE ATTACKだけしか発することができない孤高の響きをたたえている。示唆に富んでいそうなアートワークや聞き慣れないタイトル、そして制作の過程を、3DことRobert Del Najaがじっくりと語ってくれた。

Interview & Text : Satoshi Kurihara (Zelig)
HELIGOLAND / MASSIVE ATTACK
TOCP-66942 2,500yen (tax in)
2010.2.3 on sale
Massive Attack - Heligoland (Deluxe Version) icon icon
  1. PRAY FOR RAIN
  2. BABEL
  3. SPLITTING THE ATOM
  4. GIRL I LOVE YOU
  5. PSYCHE
  6. FLAT OF THE BLADE
  7. PARADISE CIRCUS
  8. RUSH MINUTE
  9. SATURDAY COME SLOW
  10. ATLAS AIR
  11. FATALISM (坂本龍一 & 高橋幸宏 REMIX) (日本盤ボーナス・トラック)
<MASSIVE ATTACK インタヴュー>
──ニュー・アルバム『HELIGOLAND』は、間にベスト盤『COLLECTED』があったものの、前作『100TH WINDOW』から7年ぶりになりますね。あなた自身、アルバムの仕上がりについてどう感じていますか?
Robert Del Naja (3D) :
そうだなぁ……マスタリングのときに"けっこういい音じゃん"と思ったな。プロダクションには満足してたんだ。うんとダイレクトでシンプルなステイトメントを持ったレコードを目指してたからね。ミニマルだけれども大胆で、アコースティックなところはあくまでアコースティックに、エレクトロニックなところはとことんエレクトロニックに……と、あらゆる要素がちゃんと存在していて、互いにコントラストをなしつつ良好な関係にある……みたいな。わかる? 前作『100TH WINDOW』はすごく複雑で、ミックスも難しかったんだ。今回は違う。
──シンプルな方向性も、それはそれで難しさがあるのでは?
Robert :
そういう場合もたしかにあるよ……うん、実際、今回も苦労した箇所がいくつかあった。でも、全体として難易度は前回より低かったね。ほとんど自分たちのスタジオで、自分たちのスピーカーを使ってミックスしたのも良かったのかもしれない。ロンドンのオリンピック・スタジオじゃなくてね。ミックスであそこを使わなかったのは久しぶりだったんだ。ここ4枚のアルバムは、Spike (Mark "Spike" Stent)にロサンゼルスからロンドンに来てもらってミックスしてたんだけど、今回は彼がブリストルまで来て一緒にやってくれてね。それもすごくありがたかった。Spikeとの関係を今回のスタジオでも継続することができたおかげで、スタジオそのものをも信頼することができたし、なんといっても安心感があったから。その場にいる人間がみんな同じランゲイジを話すことが確認できると、作業は格段にスムーズに進むようになる。お互い言ってることが通じてるかどうかがわかるまで、どうしても少し時間が必要だろ? 例えば……同じ"大きい"という表現でも、一人は"big"と言い、もう一人は"enormous"と言い……大きさの度合いも実にさまざまなんで、実際にはどれくらいの大きさなのかを探り合わなければならなかったりしてさ。だから、全員が同じことを同じ物差しの上で喋ってるっていう確信が先にあるというのは、本当に作業を楽にしてくれるんだよ。
──特にここ数年はライヴ活動を多くこなしていましたが、新作の制作にライヴでの経験は影響していると思いますか?
Robert :
ある程度はあるだろうね。『100TH WINDOW』が出てからは、ハンパじゃない数のギグをこなしてきているから……でも、ライヴ活動の影響というよりは、『100TH WINDOW』の制作過程そのものを踏まえてのことなんじゃないかな、今回こういうシンプルな方向へ持っていきたいと思うようになったのは。
──前作『100TH WINDOW』からの影響?
Robert :
できるだけシンプルに……というか、ナチュラルな状態にとどめておきたかったんだ。オーガニックというよりはシンプルに。エレクトロニックであれ、アコースティックであれ、それぞれの響きを大事に、意識しながら作っていったんだ。聴いてすぐ何の音かわかるように……そう、あたかもその場にいたかのような感覚で聴いてもらえるような音に……うん、だから、たとえ音そのものは加工されたものであったとしても、響きそのものは違和感なく、同じ部屋のなかで実際に鳴ってる音を聴いているような感覚……っていうかな。『100TH WINDOW』は本当に濃密で何層にもレイヤーされていて複雑で、そのぶんミックスも本当に大変だったんだけど、今回はまるで違う音楽的体験になった。まぁ、レコードは毎回そうやって異なる体験であるべきなんだけどね、制作の過程も、聴いた感じも──そうでなきゃ、同じことの繰り返しだなと作ってる側も感じ始めて、そしたらもう新しいものをクリエイトしていることにはならないんだから。
──『HELIGOLAND』というタイトルは、ドイツの島と関係があるんですか?
Robert :
うん(笑)。タイトルにはね、ヘンなアナグラムがいろいろと仕組まれてるんだよ。"LEGO LAND"にもなるし、"HELL EGO" にもなるし、"HELL EGO LAND"にもなるし……そういう文字遊びができるっていうのが一つ。あと、あの島って、実にユニークでおもしろい歴史を持っていて、ほとんどフィクションなんじゃないかと思えるくらいでね。イギリスにとって歴史的な場所なんだ。そこが俺は気に入ってる。興味があったら調べてみてよ。ウィキペディアに載ってるから。あ、そうだ。"HOLY LAND"っていう意味もあるらしいよ、あの島の名前には。完璧だろ。
──アルバムのアートワークはあなた自身の作品ですが、一度見たら忘れられないような魅力がありますね。
Robert :
このアートワークは、混乱をきたした人間のコラージュだ。自分の来し方も行き方も、どの国の人間で、どこの旗を振るべきなのかも、何もわからなくなっている人間。実は以前Daddy G (Grant Marshall)と一緒に考えていたコラージュの延長線上にある作品でね。当初は俺たち2人の顔をミックスしたコラージュだったんだけど、こっちの方が風変わりで、マンガちっくで、よりシュールに仕上がっていると思う。2人の顔のコラージュのアイデアに関してはボツにしたわけではなくて、フォトグラフィーを使って形を変えて存在するんだ。
──『HELIGOLAND』の制作中、前身のTHE WILD BUNCH時代や1stアルバム『BLUE LINES』といった昔を思い出す瞬間はありましたか?
Robert :
いや……音楽的に『BLUE LINES』に通じるものはどこにもないし……そもそも既にやったもの……しかも、最初にやったものを繰り返すなんて無理な話だ。初体験は一度きりさ。そうだろ? ただ、コミュニティー・スピリットという点は、今回のレコードにも間違いなく通じるものがあるな。大勢の人間が関って、コミューン的な雰囲気が強かった。『BLUE LINES』の本質もまさにそこにあって、あれは実にコミューン的なレコードだったから、そういった独特なエネルギーという点ではたしかに共通しているな。
──『HELIGOLAND』にはDamon Albarn (BLUR / Gorillaz)、Guy Garvey (Elbow)、Hope Sandoval (MAZZY STAR)、Tunde Adebimpe (TV On The Radio)、Martina Topley-Bird、Tim Goldsworthy (DFA)、Adrian Utley (PORTISHEAD)、そしてHorace Andyら、多数のゲストが参加していますね。"コミューン"とは現在のMASSIVE ATTACKに相応しい言葉ですね。彼ら、ゲストに単にお願いした、ということではなく……。
Robert :
そう、俺たちの友人が手伝ってくれている、という感覚だからね。これはよく聞かれる質問なんで毎回同じ答えなんだけど、俺もGも"招いている"という感覚がないんだ。Damonなんて長年の友人、ファミリーみたいなもんだし、Guyも有名になる前から知ってる。MartinaはTrickyのガールフレンドだった時代からの知人で、常にポッセな一員だし……なんと言えばいいのかなぁ、他のミュージシャンたちからオファーをもらうことももちろんあるんだけど、そうじゃないんだ。俺たちが一緒にセッションして、結果、ハッピーでいたいだけなんだ。
──前作『100TH WINDOW』には参加していなかったDaddy Gも戻ってきましたしね。
Robert :
そういうこと。Gと仕事して、あらためてクールだと思ったよ。あいつは俺とは仕事の手法が違って、どっちかっていうとアプローチがDJ風だから、まずはサンプリングしてループして、場合によっては後からサンプルを生演奏と入れ替える……なんてことを手際良くやってのけるタイプ。天才肌だ。俺はというと、悲しいかな、スタジオでの編集作業に悪戦苦闘するタイプ。曲を書くのもアナログのキーボードだしさ、日本製の(笑)。緻密に作業をコツコツと進めるタイプとでもいうのかな。それを使って、何とかステキな曲を書こうとジタバタやってるんだ。延々時間をかけて、あれこれサウンドを試しながら実験を繰り返す。そんなわけで、作業の仕方は違うんだけど、それを組み合わせるとおもしろい化学反応が起きるんだ。
──今回のゲストとはどんなセッションだったんですか?
Robert :
Damonとは、彼のスタジオで1週間一緒に曲作りをしたよ。あとは……あ、そうだ、おかしいんだけど、Guyとは4〜5日ワインを飲みつつ曲を書いた。最高のセッションだったな。Martinaは週末に何度かスタジオに顔を出してくれた……実際に同席しなかったゲストはHope Sandovalぐらいだよ。あの曲 (「PARADISE CIRCUS」)だけは、大西洋を挟んでトラックのやり取りをして作った。Tundeとは、俺がニューヨークに飛んで彼とレコーディングして、2009年の春また2度ほど一緒にスタジオに入って新しいヴォーカルを入れたんだ。もともとDave (David Andrew Sitek)と知り合いでね。Gも大好きなバンドでお互い興奮したのを覚えてるよ。
──そのTundeが歌う「PRAY FOR RAIN」は、後半の抑揚ある展開が鳥肌ものですね。TV ON THE RADIOのメンバーとの共演はずいぶん前から伝えられていましたが、この曲の具体的な制作過程はどうのようなものだったんでしょう?
Robert :
トラック自体はスタジオでのジャムから生まれたんだ。俺とNeil (Davidge)と……Neilがキーボード……っていうかピアノを弾いて、Damon (Reece)がドラム。このメンツでジャムってできたものをコラージュにした。Dan (Austin)っていって、俺が組んでるプログラマーがいるんだけど、そいつと2人でコラージュを仕上げたんだ。週末に会って作業するって具合でね。何気に時間がかかったトラックだった、何週間もね。でも、その後、あらためてアレンジし直してる。最初に作ってからしばらく寝かせてあったんだけど、その後、ニューヨークに行ったときに、Tundeに"どんな曲があるの?"って言われて聴かせたなかにこのトラックがあって、彼が気に入って自分でやりたいと言い出したのがこれだった。で、さっさとヴォーカルを入れてくれて、その状態のままデモとして、実は2〜3年放置されてたんだけど……そして2009年になってまたニューヨークに行く機会があって、そのときに未完成のトラックをいくつも持参してね。Tundeとも会えたから、このトラックを持ち出してみたところ、喜んでヴォーカルの構成を考え直してくれたんだよ。ハーモニーを付けたり、あれこれヴォーカルの手直しをしてレコーディングしてくれたんだ。それを俺が持ち帰って、ドラムを大々的に付け加えたりしてアレンジをまたガラリと変えて……ドラムを付け加えてくれたり、途中にキーボードを増やしたり、ロールを増やしたりと……とにかくアレンジにアレンジを重ねた末、ようやく世に出ることになったわけ。本当に長い間かかったよ、この曲は(笑)。
──昔に比べるとコラボレイションの作業も楽になったのでは?
Robert :
すごいよね。インターネットでどれだけのことが可能になったか考えると……今はこんな小さなドライヴにアルバム1枚分の情報を詰め込んで、それをポケットに入れて世界中どこのスタジオにでも持ってて、そこでPro Toolsに入れればマルチ・トラックとして機能するんだから。昔を知ってる人間にとっては、まったくの驚きだ。1日かけて作ってた音が、サンプリングで10秒ぐらいでできちゃったりしてさ。曲のなかの、ほんのちょっとした一部分だけ取り出して遊ぶこともできるんだから、本当におもしろい。そりゃ、アイディアも尽きないよ。だからヒップホップが育ったんだろうし、俺たちみたいな音楽作りを楽しめるようになったわけで……昔のような音楽作りの手法に捉われていると、ヘンに制約されてしまうから……"Welcome to the 21st century"だな。
──やはりテクノロジーの進歩とは密接なわけですね。
Robert :
たしかにそれを最も謳歌しているのが俺たちのような音楽の作り手だろう。テクノロジーとインフォメイションの革新をリアルタイムで経験して、活用しているんだからね。今やラップトップ1台あれば、音楽を作るところから発信まで自分でやれてしまうしね。いわば、聴き手も作り手も同じ立ち位置にいるわけだ。俺自身、音楽を作るのも売るのも買うのもラップトップ。リスナーだって同じだろ? 昔ながらのやり方で、レコードを作ったらラジオ局に持ってって、反応を伺いながらリリースして……っていうのに比べたら、今はもっとずっと民主的といえるんじゃないかな。音楽業界の象牙の塔なんて、もうどこにも存在しないぜ。
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