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「望郷」 Music Video
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<cinema staff 『望郷』 Interview>
──この前横浜F.A.Dで行われたbloodthirsty butchersやLOSTAGEとの対バンの時、飯田さんのパフォーマンスが以前観たときよりグッとアグレッシヴになっていたので驚いたんです。
飯田:
最近はこんなモードです。それまでとぜんぜん違って、3日間連続のときも、その日声を潰すつもりで、明日死ぬかもしれないから、この一本のライヴを死に物狂いでやるというという気持ちでやっています。いろいろ考えることがあって、仲いいバンドが失踪したり、尊敬するバンドが解散したりするのを見て、バンドっていつまでも続くものじゃないと考えたんです。お客さんもその日だけの出会いかもしれない、ということはいつも感じていたことなんですけれど、もっとリアルに考えようと。僕たちはずっとこれだけ当たり前のように10年間やってきたけど、11年目に終わるかもしれないことをちゃんと考えてやっていかないと後悔しそうだなと、気持ちが変わりましたね。
──そうした気持ちの変化は他のメンバーとも共有していた?
飯田:
特に話してはいないですけれど、絶対感じてはいますね。もちろん、バンドのなかのムードはいい感じで、すごく前向きにやっています。かっこいいバンドが評価されずに終わっていく姿も見ていて、かっこいいだけじゃだめだし、ではどういう風にお客さんに聴かせるか、ということを考えていった結果、自分たちが自分のために、4人のためにやるだけだなと思って、いまやっています。
──その感情は今回のアルバムの制作にも影響していますか?
飯田:
このアルバム自体は、2年半くらい前から「この時期に出す」と決めていました。そこに至るまで、どのようにリリースしていくかを考えて、そして、自分たちのなかでは起承転結の結に当たる部分がこのアルバムなんです。このアルバムもライヴとまったく同じで、自分たちがあと何枚アルバムを出せるだろう、メジャーでやらせてもらうのも、きっとそんなに多くないぞ、ましてやフルアルバムなんて簡単に出せない。そう考えたときに「これが最後かもしれないと思ってやろう」と話していました。もちろん前向きな話としてね。
──アルバムはダブル・シングル「小さな食卓」「西南西の虹」で表現されたcinema staffの歌の美しさとライヴの攻撃性という二面性が融合している作品だと感じました。
飯田:
メジャーで最初のシングル「into the green」からはじまって、自分たちが成長して救いを求めたところから、救われた自分や救われる前の落ち込んだ自分とかすべて許し受け入れた上での最終章としてフル・アルバムを出そうと決めていたんです。『SALVAGE YOU』ができた後に「望郷」ができて、フル・アルバムのタイトルもどんな曲を入れるかも決まってなかったんです。この曲は断片的には「into the green」のときからあったんですけれど、制作に入って「望郷」ができたときに、始まりを予感させる曲でもあるなと思ったし、cinema staffらしい壮大なところもあったので、1曲目にしようと決めてから、アルバム制作が進んでいきました。
──アルバムは難産でしたか?
飯田:
「into the green」が出る前からできた曲もあったので、曲作りから考えたらかなり時間をかけていたんですけれど、レコーディングも含め、楽しくできました。その間にダブル・シングル「小さな食卓」「西南西の虹」のリリースもありましたし、アルバム作りにはそこまで悩みませんでしたね。
──現在のバンドのアイディアを形にしていく方法論がうまくいっているということなんでしょうか?
飯田:
「望郷」も三島のイメージがあって、オケも最初は頭があんなに壮大になるとは考えていなかったんです。でも三島のイメージに辻が近づけた音を加えていくやり方で進めていって。この後はもしかしたら他のメンバーが曲を作るかもしれないけど、今回は今までの方法論で最高の形を作ろう、ということになりました。
──飯田さんは三島さんのイメージを聴いてどのように感じましたか?
飯田:
最初はメロディも歌詞もなかった時だったので、ぜんぜん分からなくて。今まで通りの曲になるかもしれないと感じていたんです。「小さな食卓」で初めて歌詞とメロディがついたときの感覚が相当大きかったんですけれど、この曲もそうで、三島が他の3人の気持ちも代弁してくれたような、cinema staffが思っている言葉だったんです。歌詞とメロディがつくことですごく化けた曲です。そして、最初がギター2本だったり、けっこう音を重ねて音作りをしていくことで、完成させました。
──孤独を感じながらも前を向いていこうという意思をはっきりと歌っています。『小さな食卓』以降、今回のアルバムでも、これまで以上に日常について歌うことが多くなってきていますよね。
飯田:
それは大きなことで、今まではフィクションや事実を描写するものが多くて、聴いてくれた人も「その発想が面白い」「その風景は分かる」といった感想をたくさんもらいました。でも今は、分かりやすく「こう歩いていけばいいのか」と、道筋を提供しているような曲が多いと思うんです。生活に関する曲が多いのは、自分たちが東京に来て、音楽をやってることが生活になったからかもしれないです。今までは学生だったり、バイトしながら音楽をやっていたのが、音楽しかやっていない毎日を続けていくなかで、聴いてくれる人のために、普段の生活に寄り添ったものにしたいなと、変わっていったんだと思います。
──バンドを始めた頃って24時間音楽のことだけ考えていればいい生活って憧れだったと思うんです。それが実現して、どうですか?
飯田:
ほんとに望んでいたものですけれど、実際やってみると、想像していたものより厳しいかもしれないですね。覚悟が必要です。ある程度気分転換できることをやっていないと潰れてしまうだろうなと。でも、「やっている意味があるな」と感じることができるので、救われていますけれど。例えば、自分は朝から激しい曲は聴けないし、朝、昼、夜と時間ごとに聴く音楽って変わるんですけれど、『望郷』はそれに適応したアルバムのような気がしています。日常のふとしたときに背中を押してくれるような曲が多いし、毎日のなかで聴いてもらいたい作品になりましたね。
──アルバム全体のバランスについては?
飯田:
13曲もあるとどこかで飽きてしまいがちなので、今までもそうでしたが、曲順や曲間も特に考えました。例えば「夏の終わりとカクテル光線」はアコースティック、バンド・サウンド、そしてアコースティックで終わるアレンジになりましたが、これはプリプロをやっていくなかで決まりました。いろんなパターンの曲順を何度も聴いて考えていて、「あのスポットライトを私達だけのものにして」からの流れがあまりしっくりきていなくて、ここからラストまで聴かせるためにどうしたらいいかを話し合ったんです。そこで、それまで通してバンド・サウンドだったのをがらっとアレンジを変えてクラシック・ギター2本と歌だけにすることで、フックにすることにしたんです。そうすることで次の「蜘蛛の巣」がもうひとつのフックとなって、立ち止まらせない構成になるようにしました。流れのためにアレンジを変えるというのは初めてです。今回のアルバムは、1曲だけリピートしたりシャッフルするよりも、全曲ループして聴いてほしいんです。bloodthirsty butchersやLOSTAGEといったバンドのアルバムもそうですよね。そうしたバンドへのあこがれや影響もありますね。
──「夏の終わりとカクテル光線」は曲調もあいまって、飯田さんの歌も前面に出ているように感じますが、世界観をうまく表現できたと感じますか?
飯田:
去年からアコースティックで弾き語りのライヴをやるようになったんです。そこで、アルバムでもそういうアレンジの曲ができてくるなと感じていたし、ひとりでやってみると、アコースティック・ギターに寄り添う歌い方になってくる。シングル『西南西の虹』に収められている「発端」もそうしたタイプの楽曲で、そこでけっこう身になったという感覚があったので、この曲がアコースティックに変わることになっても、できると思ったんです。
──アレンジの幅が広がったことで、cinema staffのバンドが持っているライヴ感や攻撃力も振りきれて表現されている印象があります。
飯田:
メリハリや振れ幅は意識していました。1曲1曲エンジニアさんと話をしながらやりたい音になるようギターやアンプを変えたりして進めていけたので、満足しています。そしてどれだけうまくできても、勢いが大事なので、4人のバンド力をしっかり出せたらという気持ちがあります。
──この流れで聴くとシングルの「小さな食卓」もまた違った感動を覚えます。
飯田:
アルバムでは少しヴァージョンを変えていて。音の重ねを減らして、辻のループもスタジオで実際にループさせた上で弾いていたり、「西南西の虹」もシングルを出した後ライヴでやっていくなかでもうちょっとBPM速くていいんじゃないかということで、BPMを2上げたりして、ライヴ盤みたいな感じで録り直しています。
──そしてラストの「溶けない氷」は9分以上に及ぶシンフォニックなトラックですが?
飯田:
これは三島が、オープニングの「望郷」に負けない、最後にふさわしい壮大な曲を作ろうということで持って来ました。歌詞の内容も「望郷」とテーマは同じなんです。そして以前から入れてみたかったチェロを加えてみたらすごくはまって、最後はわざと長くループをさせてトランス状態になるような構成にしています。そしてこの許し受け入れること、というテーマについては、メンバーが同じように生活してきたから、考えていることが似ているんです。自分のなかにもこういう気持ちがありました。そして、ひとつ受け入れることとしては、たくさんのバンドがあって、これだけの数のなかでかっこいいと思われるのって、何かが突出してればいい。それまではすべてが平均的に良くないとダメだと思っていたんですけれど、それではいけないんだとひとつ受け入れることで、自分たちの武器はここなんだと見つけることができて、これを伸ばすしかないんだと気づいたんです。「できない」ということを受け入れることが自分のなかではいちばんこのテーマで感じたことです。そもそも、勉強もできて仕事もできるような人だったら、音楽をやってないと思うんです。僕らは一般の人より音楽が突出していた人たちのなかで、自分たちのやりたいことをどうお客さんに伝えていくか、と考えたときに、そこで何かを見つけなきゃいけないということです。
──音楽の世界で凌ぎを削っていくことで、音楽をやっていく〈覚悟〉ができた作品、と言えるのでしょうか。
飯田:
そうですね、このアルバムもある意思をもってこういう曲順になっているんだよ、ということは、聴いてくれた人にもしかしたら伝わらないかもしれないけれど、自分たちは、このインタヴューを読んでくれた人には「こういう風に考えて作っているんだ」と気づいてくれたらな、と思っています。その姿勢にめちゃめちゃこだわっているんです。そこは泥臭くてもやっていこうと思います。
──飯田さんはクールな印象があるので、そこまで言ってもらえるのが嬉しいです。
飯田:
ぜんぜんクールじゃないですよ(笑)。ずっとこうやって活動してきたし、みんな「こんなもんじゃないぞ」っていう闘争心がある。今回のアルバム制作で、そうした気持ちを確認できたし、ライヴではそれをもっと発散していっていいなって。僕は「いつまでも音楽を続けていきたい」という気持ちではなく、「いつか辞めてやる」というギリギリの気持ちでいることで、いいライヴをやることができるんです。
──刹那的かもしれないけれど、その一瞬に賭けて表現するほうがかっこいいですよ。
飯田:
その結果が5年経ってました、ということだと思うんです。
──最後に、今作のアルバム・タイトルになっている『望郷』について教えてください。飯田さんにとっての故郷とはどんな意味があるのでしょうか?
飯田:
まだ分からないけど、いつか帰る場所なのかなと思ってるし、みんなもそうだと思います。なにか音楽で迷ったときや悩んだときは、地元の音楽やってる友達と朝まで歌い続けてリフレッシュして戻ってくることができる。前に進むために必要なものです。過去を振り返るだけではなく、許し受け入れることとして、この全てが僕たちを構成しているものなんだと、だからこれを受け入れて次に進むんです、という前向きな『望郷』なんです。
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