<another sunnyday 『YOLO』 Interview>
──1st、2ndと正直に言うとストレイテナーのリフやリズムを想像する部分が多かったんですが、今回ついにanother sunnydayのオリジナリティが分かりやすく出たなと感じました。この2年、何が起こってたんですか?
美登:
オリジナリティは如実に出てると思いますね。結成から3年経ってようやく人としての関係がガチッとできて、僕ら(美登と伊藤)からも提案できるようになったし。そこには僕らの成長もあるんで、今までけっこうガムシャラに付いてってる感じもあったんですけど、ようやく余裕を持って曲作りができて。僕らが主導した曲もあったりして、その辺は大きく曲調に出てると思いますね。
伊藤:
それまではスタジオでOJ(大山)さんの構成通りにやってたのを個々で自宅でもんで、また持ち寄ってみたいな感じだったのを今回はスタジオ内でいろいろ転がせるようになってきたのは大きな変化だったと思いますね。
──この2年はストレイテナーはメジャーデビュー10周年もあり、その先の段階にも来て。そういう活動がアナサニに影響している部分は?
ナカヤマ:
ストレイテナーと対比してっていうよりも、another sunnydayをやっていく上で、当初のコンセプトとして、ロックバンドの楽しい面を前に出したいと思って、曲もヴィジュアル・イメージも含めた作ってたんです。その中で漠然とポップとかキャッチーとか考えてたものがライヴをやっていくに連れて、そのポップさやキャッチーさが細分化されていった感じがしますね。で、まだ途上ではあるけど、「YOLO」は当初、思い描いてた到達点に一応これたアルバムなんじゃないかという気はします。だから何かと対比というよりは、バンドとして単純に経験値が上がったかなという。
──そのポップさやキャッチーさとは?
ナカヤマ:
ただ速けりゃいいとか、ただメジャーコードでメジャーのメロディが乗ってればいい、じゃないなみたいな。
──改めて訊くんですけど、ロックバンドの楽しさの指標みたいなところで共通言語になるバンドとかアルバムはあったんですか?
ナカヤマ:
いちばん最初に言ってたのはFOO FIGHTERSだったんですけど。あれ、俺らから聴いたらポップでキャッチーだけど、世間一般からするとオルタナティヴだってことに気づいて。でも一応そうかな?
大山:
うん。あとはGREEN DAYのバカっぽさであるとかもやりたかったし、っていうのは今回でみんなできた実感があると思うんですよね。僕らなりにだいぶ噛み砕いた出し方になってますけど。
──それは裏返して言うと、バカじゃないからやるんですよね。
ナカヤマ:
まぁそうですね、根は暗い人間が揃ってるから(笑)。
一同:
ははは。
大山:
意識しないと暗い曲ばっかりになる。
──バカになれない人の切実さが爆発してるような気がします。
大山:
憧れに近いのかもしれないです。
ナカヤマ:
でもね、FOO FIGHTERSやGREEN DAYがやるとすんなり受け入れられるんですけど、体育会系がやるバカってあまりに肉感的すぎると敬遠しちゃう。だから自分たちでやろうと思ってるのかもしれないですね。
──ずっと謎だったんですよ。アナサニが明るいバカっぽいことをテーマに掲げてることが。その謎が今回のアルバムも相まって謎が解けてきたというか。
大山:
最近、ロック・ミュージックが難しいなと感じることがよくあって。僕が憧れてたロック・ミュージックって極端に言うと、歌詞は<女抱いて、車飛ばしてサイコーだぜ!イェイ!>、わ、バカだなぁ、でもカッコイイ!と昔は思ってたはずなんだけど、今、そういうバンドって日本見渡してみても……いるのかもしれないけど、耳には入ってこない。で、ここでやったら面白いんじゃないかな?と思ったんです。
──その世界観は70年代後半以降、もう成立してないわけで。
ナカヤマ:
いや?西海岸パンクとかは成立してんじゃないですか?そのノリを現代風にちゃんと解釈できてるし。
──ああ、たしかに。あとはヒップホップにそのメンタリティは移行したのかなと。
ナカヤマ:
ああ、そうか。そこでは今でも脈々とあるな(笑)。
──モテとか成功っていう価値観。
ナカヤマ:
でも、モテとか成功じゃなくて、擬音で言えばスコーン!っていう音楽っていうことなんですけど、それがなんとなく疎遠かなと。現代の音楽は。それもなんかさみしいなっていう。
──その理想を天然じゃない4人がやるのが面白いんですよね。今回は音のパースペクティヴも広いし、何より今までよりヤンガーな印象があるんですよ。伊藤さんはソロも並行してますけど、「アナサニではこういうことが歌いたい」っていうのが明確になってきたのかな?と思ったんですが。
伊藤:
ソロに関しては自分の美意識の塊みたいなところで作ってるし、内に内にこもっていく作り方なんですけど、アナサニというところはそういう爆発しそうな気持ちを解放してくれる自由度の高い場所なんで、音楽の自由な楽しさを再確認できるんです。歌詞は当初はもっと意識的に分けてたんですよ。でもなんかそれもちょっと違うなと思って。アナサニのオケにアナサニっぽい歌詞を乗せるのは普通だと感じて、こういうオケなんだけどちょっとヒリヒリした内容の歌詞を乗せることで生まれる違和感が面白いと思ってますね。それはジャケにしてそうなんですけど、こういう西海岸みたいなバックに黒装束の人が立っている違和感が面白い。そういうところで全部動いてる気がするんです。
──伊藤さんは違和感と言うけれど、今回のほうが言葉も入ってくるし、「ユーグレナ」での攻撃的に喋る部分とかも面白いです。
伊藤:
(笑)。けっこう赤裸々な普段使うような言葉を使うとか、あんまり詞っぽくなく描いてみたりとか、そういうのは随所にありますね。
ナカヤマ:
俺が思うに伊藤はアナサニが受け入れられれば受け入れられるほど、たぶんどんどんアホな歌詞になって行く気はしますけどね。
伊藤:
フフフ。
ナカヤマ:
女抱いてスポーツカー飛ばして<今夜もブイブイだぜ!>の歌詞をいつか書く日がくると俺は思ってます(笑)。
大山:
目指そう(笑)。
伊藤:
いや、面白いと感じればやると思いますよ……。
──(笑)。話を戻すんですけど、さっき大山さんがロックバンドが難しくなってると話してましたが、それは嫌悪感ではないんですか?
大山:
そうじゃないです。それも大好き。実際「これは難しいだろう」ってことはストレイテナーでやってるんですけど、もっと単純なものも届けたいなって欲も出てくるし。
──でも今は誰でも分析というか、揚げ足を取るでしょ?
ナカヤマ:
まぁする人はするな、ぐらいの。絶対数にしたらね、評論してないんだよ。やっぱり聴いてるだけの人の方が多いんだよね。それは気分だと思うんですよね、僕が思うに。あんまり分析されてるとか評論されてるとか思うと、奇をてらいたくなるというか、がんじがらめになっていいかっこしようってなるじゃないですか。でもたとえば日本全国、300人のハコから3000人のハコから、フェスに出たら何万人の前でやるけど、さすがにそんだけの数の意見は聞かないし。熱狂したり受け入れてる人のほうが多いし、それを見たら腑に落ちたっていうか、あんまりそこには囚われないですね。で、実際SNSとかそういうとこでの意見を読んで影響される人もそんなにいないし。
──それはさすがに年間ずっとツアーしてる本人から聞くと説得力あります。
ナカヤマ:
うん(笑)。
──アルバムの話に戻すんですが、歌はじまりの1曲目「MORNING STIR」は最初のほうにできてた曲ですか?
美登:
けっこう最終ですね。「1曲目になる曲を作ろう」ってテーマでやりました。で、取っ掛かりがないからシンペイさんがキーを聞いたんですよね。
大山:
「AからGまで好きなアルファベット言って」、で、「F」って言ったんですよ。「Fで曲書いたことないね!」って。
一同:
(笑)。
大山:
そんな、書きづれ〜!ってとこから始まった。
ナカヤマ:
やったことないヤツって話だったんだよね?で、「F」、「じゃ、それ」みたいな体(てい)。それで1曲できたねー。
伊藤:
早い段階でこれはAメロができてて、それが良かったんで、「これはいいよね」ってことで1曲目になるのは確信した。
ナカヤマ:
たしかに原型の原型からメロが良かったね。
──驚きもありましたけど、これを待ってたって気もします。
ナカヤマ:
ちゃんとできたって感じだよね?やりたかったことが。飛び込みがうまくいったみたいな(笑)。
──スタートダッシュばっちりな感じで。では、レコーディングしてて面白かったなという曲は?
伊藤:
それは「ライオネルベイビー」じゃないですか?これは当初、ガヤも入ってない曲だったんですけど……。
ナカヤマ:
歌入れの最終日のコーラス入れのときにもーのすごい舵を切ったっていう。
伊藤:
「こういうの、しよう」って、シンペイさんが。
──でもこのガヤの入り方が真面目な感じがするんですよね。
一同:
ははは!
ナカヤマ:
ま、たしかに真面目なんだけど。ちょうどこの前後になぜかユニコーンを聴いてて。まだシリアスになる前あたりのを。で、ただただ遊んでんじゃんってのに気づいて、「あ、やっぱやっていいよな」って我に返った部分。それでやったっていう。
──「ふざけました」っていう真面目さがあるんですよ。
美登:
まだ板についてないですよね、ふざけが(笑)。
ナカヤマ:
一応、ビール飲んだんですけどね、「飲まなきゃやってられねぇ」みたいな(笑)。
伊藤:
でもシンペイさん、飲んでも全然酔わなかったっすもんね(笑)。
──(笑)。それはストレートに面白い部分ですけど、全編やりたいことが詰まってるんじゃないかと思います。
ナカヤマ:
たしかにそこに対する迷走はないですね。だからさっきも言ったけど人の意見で動いてるんじゃなくて「やりたい!」って言ってやってるから、そこに対してのブレはまったくないですね。
──では、「ここは聴いて」というポイントをおのおのお願いします。
大山:
「ハログレア」と「夜道のハイライト」のメインになってるフレーズは高校のときに作りました。
伊藤:
いいな、そういうネタあるの(笑)。
ナカヤマ:
高校時代の大山純がやっと成仏できたよね、きっと。
伊藤・美登:
ははは!
──伊藤さんは?
伊藤:
なんでしょうね……むずかしいな。
──じゃあアナサニの伊藤文暁にまだ出会ってない人に「ここからどう?」という意味では?
伊藤:
「マリネ」とかいいんじゃないですか?聴きやすい。
──美登さんは?
美登:
僕は1曲目ですね。これっぽい感じは今までも何曲かあるじゃないですか?こういう「ザ・疾走感」みたいな。その中でこれはようやくアナサニっぽいというか、アナサニ節というか、真似ごとじゃない意味でのこの「リンドバーグ感」(笑)。
ナカヤマ・大山・伊藤:
ははは!
ナカヤマ:
リンドバーグができるっていいよね?
美登:
FOO FIGHTERS見てやってきたけど、リンドバーグだったという。
──(笑)。美登さんうまいですね。ナカヤマさんは?
ナカヤマ:
僕は「Bucket Mash」と「Prelude」は世紀の名曲だと思います。こういう曲が出るからやっぱ続けられるなバンド、っていう気がしますね。
──大人になってからの人間関係でこんな突き抜けた音楽やろうとしてるわけで。
大山:
しかもそれを短い期間でやんなきゃいけないわけで。
ナカヤマ:
それがね、すごいと思うんですけど出来てるんですよね。こんなに短期間でこんなにバンドになるものか?と僕もすごい客観的に見て思ってるんですけど。なんかもっとよそよそしかったりもする人間関係のバンドって、長くやっててもいると思うんですけど、ここはそういうのがほぼないに等しい。この巡り合わせが良かったなと思って。単純に全員が酒呑むとか、全員がちょっとだらしないとか、すごくいい感じに相性がいい人間が揃ったから「ラッキー!」って思ってますね。
──大事なところですよね。ところでこの「YOLO」ってタイトルは何を意味してるんですか?
伊藤:
「You Only Live Once」、人生は一度きりっていう言葉の頭文字なんですけど。
ナカヤマ:
アメリカで流行ったことわざ的な言葉なんですよ。それを「YOLO」ってラッパーか誰かが略して爆発的に流行ったらしいけど、日本にまったく入ってこなかった言葉なんだよね?成り立ちとしては。で、それがしっくりきてて「YOLO」。
──歌詞のどこにもないですけど、ニュアンスはそうですね。伊藤さんは曲との違和感がある歌詞が面白いって言ってましたけど、今回、聴く人をフックアップする歌詞が多いと思います。
伊藤:
そうですね。それはいつも意識としてはありますね。具体的にそうは言わないんですけど、自分が現状を打破したい、打開していきたいっていうのがあって、みんな人間、別々ですけど同じ感覚はきっとどこかにあるはずだと思ってるんで、自分が打開するために書いたものはみんなにも共感してもらえると思うから。そういう意味で自分への応援でもあるし、同時にみんなへの応援でもあるってことです。
──年が明けるとツアーが始まりますね。
ナカヤマ:
でも3ヶ月で10本なんで。
伊藤:
ゆとりツアー(笑)。
ナカヤマ:
まぁ、他にもあるし、曲作りもするからゆとりはないんですけど。過去に平日にツアーを組んで痛い目見てるんで、そのビビりもありつつなんですけど(笑)。
──たしかに週末に集中してますね。年齢層が高いとか?
ナカヤマ:
それもあるでしょうね。単純にまだティーンエイジャーには届いてないっていう(笑)。でも本数はやらないとバンドの経験値も上がらないので、これは完全にそのための組み方ですね。
──対バンとワンマンの両方あって、対バンも楽しみなところで。
ナカヤマ:
意外と俺ら、対バン選びうまいんだよね?前のツアーもブレイク間近のバンドを並べたら、ホントにみんなブレイクしたから(笑)。俺、バンド見る目あるなぁと思いながら。
──ネクストブレーカーズも占う、アナサニのツアー(笑)。
伊藤:
登竜門として「あいつらのツアー出とけ」って(笑)。