2010.1.8 (fri) @ Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
ACTs : 磯部正文 / BACK DROP BOMB
音楽を辞めるべきか。その崖っぷちまで追いつめられていた男が、再び最前線に立つことを決意した。MARS EURYTHMICS活動休止後、アコギ活動などに専念していたけれど、やはり彼にはバンド・サウンドが最高にマッチする。ヒダカトオルをプロデューサーに迎え、磯部正文はソロ活動に踏み切り、1stシングル同様、デビュー・アルバム『SIGN IN TO DISOBEY』でそれを見事に証明した。内容的にもファンならば拍手喝采を送り、初めてイッソンに触れるリスナーをも唸らせる傑作だった。
そのレコ発ツアー東京公演には、白、赤、黒の三色を顔にペインティングし、まるでLIMP BIZKITのWes Borlandを彷彿とさせる元ZUINOSINの寿千寿(コトブキチトシ)を新ギタリストに迎えたばかりのBACK DROP BOMBがオープニングを務める。人力の躍動感漲るミクスチャー感は健在で、変幻自在にして縦横無尽のボーダレスぶりに興奮した。今後新体制でどう化けていくのか、非常に楽しみになってきた。
そして、7月の初ソロ・ライヴと同じく田渕ひさ子(Guitar)、戸川琢磨(Bass)、下村亮介(Keyboard)、恒岡章(Drums)の強力なバック・メンバーを従えて、1曲目「Sound in the grow」からALLのTシャツを着たイッソンは右斜めに顔を上げ、首筋の血管を浮き彫りにして伸びやかな歌声を放つ。その生命力に溢れた明るいメロディは、満員の場内を煌々と照らしつけた。1stシングル収録の日本語バージョンによる「花の咲く日々に」では、イッソンのまっすぐな突破力に溢れる歌のパワーに度肝を抜かれる。「ハスキンの解散ライヴDVDで最後にやった曲」と前置きした後、無類のポップ感を爆発させた「QUESTION」、それから「8.6」とハスキン・ナンバーが続き、本人も歌い込んできた楽曲だけに気持の入り具合が半端じゃない。観客も一緒にジャンプ&大合唱で応える。去年はターニング・ポイントだった、としみじみ振り返りながらも、「摩訶不思議テーゼ」、「欠けボタンの浜」、「Walk」と再び吹っ切れたようにハスキンの楽曲をプレイし、本編を締め括る「飛ぶユートピア」、「A bird's eye-view」へと雪崩れ込む流れは白眉だった。とりわけ個人的に大好きな「A bird's~」の天高く飛翔するような田渕ひさ子のギター、スペーシーな鍵盤で壮大な空気を演出する下村亮介、そこに歌心をしっかり堅持したイッソンのハイトーン・ヴォイスが響き渡る。その絶唱ぶりは、背筋がゾクゾクするほど有無を言わせない説得力に富んでいた。
アンコールでは明日(12月9日)誕生日を迎える田渕ひさ子のために、イッソンが花束を渡し、下村亮介と一緒に「Happy Birthday To You」を歌う和やかムードも垣間見せた。「今回のツアーでハスキンの曲をやるのは最後にしようと思います」と告げると、観客の一人から「それもあり!」という声が上がり、「……僕はやる気マンマンですけど」と本心はどっちなんだ!とツッコミを入れたくなるやり取りもあった。とにかく、新作をメインに据えたライヴは、イッソンのパンク魂炸裂の熱唱とポップ性抜群の豊かな歌心の両翼を思う存分に広げ、多くの観客を終始酔わせた。すべての演奏が終わり、メンバーがステージ袖に下がる段階で、「あっ、メンバー紹介忘れてた!」と零し、改めて一人ひとりきちんと紹介するイッソンの姿にも歌声同様、ニクめないまっすぐな人柄が表れ、実に微笑ましかった。
Text : Ryosuke Arakane
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