2010.6.14 (mon) @ Shibuya DUO MUSIC EXCHANGE, Tokyo
BBCが毎年年頭に発表する"今年ブレイク確実な新人"のリスト「BBC Sound Of 2010」で5位に選出されただけでなく、『NME』の今年第1号の表紙も飾るなど、本国アメリカよりもイギリスでの熱が高まっているTHE DRUMS。その熱波は遠く日本にも達し、一夜限りとなる初来日公演もソールドアウトとなった。
開演前にはSAINT ETIENNEやTHE UNDERTONESらの曲がかかり、彼らの志向性が80年代のインディ・ポップや、そのルーツとなったパンクであることを再認識したところで、メンバー4人が登場。ネオ・サイケのダークな雰囲気を現代に蘇らせたかのような「IT WILL ALL END IN TEARS」で幕を開けた。続く「BEST FRIEND」も80年代のリリカルなギター・サウンドを思い出させるナンバー。そうしたリヴァイヴァル的な音に対して、会場を埋め尽くした観客が大きな反応を見せていたのに目を見張るばかりだった。自分としては浴びるようにして聴いてきたジャンルの音楽が、約20年くらいの時を経て、今の若者たちが新しいという感覚と共に迎え入れている。彼らにとっては懐かしさなんて、これっぽっちもない。まさに'10年代の音楽として、THE DRUMSは受け入れられているのだ。
彼らが強く影響されたと公言しているTHE SMITHSのような陰影に富んだギター・サウンドがある一方で、THE DRUMSの名前が広まるきっかけとなった「LET'S GO SURFING」みたいなカラっと晴れてハッピーなフィーリングの曲もあったりするが、共通して言えるのはどこかに喪失感のようなせつなさをにじませているということ。かつてのNEW ORDERが放っていたものと近いとも言えるが、その感傷的な要素をライヴではみごとに(?)吹き飛ばしていたのが、ヴォーカルのJonathan Pierceのパフォーマンス。クネクネと身体をうねらせたかと思うと、カクカクと機械的な動きを見せたりと、本能のおもむくままに動き回っているかのような舞踏的な佇まいで、音のタッチから抱いていた俯き加減でナイーヴなイメージを払拭するに十分すぎるほどのインパクトだった。
活動の拠点がブルックリンなので、その多様な音楽性をはらんだ地域性と共に語ることはたやすいことだろう。しかし、THE DRUMSの音楽は、ほかのブルックリン産のものとは大きく異なっている。その決定的な違いは、やはり80年代のインディ・ポップを再発見した点にある。それも、そこはかとないせつなさをにじませて。焼き直しと見るか、それとも新しいサウンドとして受け入れるか。この日の観客の輝いた表情が、はっきりとその答えを出していた。
Text : Masashi Yuno (New Audiogram)
Photo : Kenji Kubo
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