2010.7.14 (wed) @ Shindaita FEVER, Tokyo
過去の光は、現在を照らしてくれない。現在の光だけが、過去を激しく照らし出す。その光多き場所に、"イッソン"こと磯部正文が姿を現した。「こっちへ来い!」と彼の手を力強く引っ張ったのは、あのヒダカトオルである。
05年にHUSKING BEE(ハスキン)が解散すると、同時進行でやっていたCORNERをやり、その翌年にMARS EURYTHMICSを始動させた磯部だが、今年3月に活動を休止させた。そして、今回ヒダカをプロデューサーに迎え、ソロ・プロジェクト第1弾シングル「Do we know ?」を8月25日にドロップする。今日はそれに先駆けた初ソロ・ライヴとなった。会場は音源発表前にも関わらず、満杯の観客で溢れ返っている。MySpaceで逸早くアップされた新曲を視聴し、何かを嗅ぎ取った人が多かったに違いない。
「磯部正文バンド、はじめます」と本人の折り目正しい挨拶を皮切りに、初っ端から「#4」、「LIFE」、「QUESTION」、「8.6」と初期ハスキン・ナンバーを畳みかけてくる。観客は凧糸が切れたように一気に前に押し寄せ、拳を上げてモッシュする。怒涛の4連発が終わると、「イッソン(あるいはイソベ)、ありがとう!」と歓声があちこちで沸き、「ハスキンの曲をやってもいいんじゃないの? とヒダカさんに言われたので、ヒダカさんのせいとおかげにしようと思います」と、照れ臭そうにエクスキューズを入れる磯部の表情が印象的だった。
そして、デビュー・シングルから表題曲、「花の咲く日々に」、BREADのカヴァー・ソング「The Guitar Man」と3曲続けてプレイし、伸びやかにまっすぐ歌い上げる熱きエモーションと、豊かな広がりを見せるメロディが融合したイッソン節は、手放しで絶賛したくなるほどの素晴らしかった。その歌声を支えるバックの演奏陣も最高の働きで援護する。安定感のあるタイトなリズムを刻み続ける恒岡章(Drums / CUBISMO GRAFICO FIVE)、ファニーなキャラを垣間見せる戸川琢磨(Bass / COMEBACK MY DAUGHTERS)、コーラス・ワークでも大活躍した下村亮介(Keyboard / the chef cooks me)、時にささくれ立った音色でロック熱を注入する田渕ひさ子(Guitar / bloodthirsty butchers、toddle)という盤石のメンツに囲まれ、磯部も「まさかこのメンバーでやれるなんて……」と感慨深く語っていた。結果フタを開けてみれば、デビュー音源を含めた新曲7曲(!)に、ハスキン・ナンバーを加えたセット・リストだった。
後半には「欠けボタンの浜」、「摩訶不思議テーゼ」、Ken Yokoyamaが初の日本武道館公演でも披露した名曲「WALK」(Ken YokoyamaがプロデュースしたHUSKING BEEのデビュー・アルバム『GRIP』収録)へ移り、ここで点と点が線となって強く結び付いたような感覚に浸り、胸が熱くなった。アンコールでも「the steady-state theory」、「新利の風」とこれでもか!と言わんばかりにHUSKING BEE時代の曲を惜しげもなく全力プレイする。その磯部の歌声は、拙い表現で申し訳ないが、ほんとに眩しいくらいキラキラ輝いていたのだ。
最後にもう一言だけ言わせてほしい。今日初めて聴いたシングル以外の新曲も出色の出来栄えだったこと。年内にフル・アルバムを予定しているそうだが、これはマジで楽しみだ。
Text : Ryosuke Arakane
Photo : Taku Fujii
磯部正文 OFFICIAL WEBSITE
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Do we know ? 磯部正文 |