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LIVE REVIEW

mouse on the keys "『an anxious object』 release tour"

2009.9.10(thu) @ Shibuya O-EAST, Tokyo
ACTs : mouse on the keys / toe /envy

SLINTやTALK TALK、SLOWDIVEといった英米のロック・バンドをルーツに、90年代中期からTORTOISEをひとつの象徴として発展を遂げてきたポスト・ロック・シーン。海外の動きは落ち着きを見せている一方、日本におけるポスト・ロックは独自な発展を遂げ、インディーズ・シーンにおいてはじわりじわりと支持を広げている。そして、mouse on the keysのアルバム『an anxious object』リリースを記念して行われた盟友toeとenvy三つ巴ライヴを埋め尽くした1300人のオーディエンスによる盛り上がりは、その象徴といっていいだろう。

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envy

まず最初に登場したのはenvy。ステージ中央で客席に背を向けながらキーボードに向かい、襲いかかるようにマイクから思いの丈を絶叫する深川哲也を中心に2本のギターとリズム隊が爆音のサウンドスケープを生み出してゆく。アンプで増幅され、会場を満たすのは深い悲しみとせつなさ、そして美しさ。目を背けがちな感情と正面から向き合う彼らは、その先のすばらしい世界に向けて、行く手を切り開いてゆく。鉄壁のグルーヴをうねらせる5人のメンバーが激しくせめぎ合い、静と動のコントラストから映し出す世界の有り様は陰影に富んでいて、そのリアリティには圧倒される。なかでも「生きにくい時代だけど、がんばりましょう」という深川の短くも胸に残るMCを経て演奏された「A Warm Room」は激しい轟音に気持ちを持ち上げられ、光差す心象風景に辿り着いたような、そんな感情を抱かされたハイライトの瞬間だった。


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toe

そして、楽器セットを総入れ替えした後に登場したのがtoe。木村カエラのサポートを務めるなど、広くその名が知られつつあるドラマーの柏倉隆史とクラムボンやLITEの作品に携わるなど、レコーディング・エンジニアとしてのキャリアを重ねつつあるギターの美濃隆章を擁する4人がドラムを中心にステージに立つと、1曲目の「孤独の発明」でパフォーマンスは幕を開けた。

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toe

山嵜廣和と美濃が2本のギターで織り上げるしなやかでメロディックなサウンド・テクスチャー、そして、手数の多いドラミングとそのプレイに寄り添う山根さとしのベースが生み出すエモーショナルなグルーヴ。それらが一体となった音世界は、琴線のつかみ方が海外のポスト・ロック・バンドにはないtoeならではのものだ。3曲目では新曲も披露し、超絶的な演奏から高い熱と同時に不思議な大らかさを放っていた彼らは8曲を披露して、メイン・アクトを迎える会場の空気感を作り上げていた。


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mouse on the keys

そんな期待が高まるなか、ステージは幕が下ろされ、再びセット・チェンジ。しばしあって、幕が上がると、ドラムを囲むように3台のキーボードが配置されている。登場するのはもちろんmouse on the keys。ドラム / キーボードの川崎昭、キーボードの清田敦にもうひとりのキーボード、新留大介を加えた新編成の3人はスーツに身を包み、大きく映し出されたVJをバックに演奏を始めた。

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mouse on the keys

1曲目は資生堂CMに起用された「最後の晩餐」。打楽器でもある2台のキーボードとラウドなドラムが音の粒子をまき散らしながら激しく美しく疾走していく。メロディを清田、それをサポートしながらシンセ・ベースを加えるのが新留、そして、川崎は鍵盤3台のみの「dirty realism」を除いてドラムに専念することでバンドの表現力は一気に広がった。また、要所要所でトランペットの佐々木大介、サックス/パーカッションの根本潤が加わったことでプログレッシヴなジャズ・コンボへと発展。ジャズからロック、ポスト・ロックを経過して、これまたオリジナリティが突出した作風を展開していた。

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mouse on the keys

そして、アンコールに応えた演奏を前に、感慨無量な川崎はこの日のライヴが結成3年の集大成であることを伝え、出演バンドとオーディエンスに感謝の言葉を述べると、未発表曲の「the arctic fox」と「RaumKrankheit」をプレイして、ライヴは成功裏に終わった。mouse on the keysの都内でのライヴは今年これが最後ということだが、引き続き修練を重ねるであろう彼らは、この日の強力ラインナップに負けず劣らず新しい音楽の風景を切り開いてくれるに違いない。

Text : Yu Onoda
Photo : Ryo Nakajima (SyncThings)




EDITOR'S CHOICE LIVE REVIEW : mouse on the keys "『an anxious object』 リリースツアー"



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