2009.10.19 (mon) @ NIHON BUDOKAN, Tokyo
2007年のサマーソニックでマリンステージのヘッドライナーに抜擢されたときは驚きを伴ったが、今回の日本武道館公演はすんなりと納得。もはや不動となった人気に合わせたというよりも、最新作『HUMBUG』での重厚かつ野心に満ちた世界を展開する場所として、これ以上はないと思ったからだ。開けた空間に共振する音圧や響きをダイレクトに感じ取ることができるのはホールの強みで、ライヴハウスでは感じ取ることができない魅力でもある。『HUMBUG』に収められた大半の曲はミッドテンポでじっくりと耳をそばだてて聴くものであり、この日本最大級とも言えるホールはまさにそのリスニング環境として最適だったと言っていい。
オープニング・アクトのTHE CRIBSが終えたあと、少し髪が伸びて大人っぽくなったAlex Turnerらメンバー4人が登場。アシッド感のあるゆったりとした「DANCE LITTLE LIAR」からスタートしたのだが、まずその圧倒的な演奏に一気に心が持っていかれてしまった。レコーディングされた音源は意図的に抑えられたものなのかと疑ってしまうほど重みがあってビッグな音像で、これがARCTIC MONKEYSの今の姿を投影しているのかと思うと空恐ろしくなるほどの堂々とした演奏ぶり。デビュー時の華奢で幼さの残る表情はまったくなく、とてつもなく大きくなってしまった姿に、こちらはただただ圧倒されるばかりだった。まるで恐竜を目の当たりにしているかのような迫力なのだ。
間髪入れずに鳴り響いた「BRIANSTORM」も、以前のような勢いが勝った演奏ではなく、これも重心がしっかりとした余裕すら感じさせる演奏で武道館を震わせていく。1st、2ndの曲はどれも同じようにアップデートされていて、ひときわ歓声があがった「I BET YOU LOOK GOOD ON THE DANCEFLOOR」も例外ではなく、勢いまかせにならずにじっくりと観客を見据えるように演奏していった。広いステージに立ちつくすメンバーたちからは、もはや貫禄すら漂うようで、『HUMBUG』という挑戦的で野心あふれる傑作を生み出した自信がひしひしと伝わってきた。
その一方で「CORNERSTONE」のようなスウィートな曲もさらりとやってしまうような柔軟さも見せ、あらためてARCTIC MONKEYSというバンドが持つ幅も示してくれた。彼らの音楽をいちども聴いたことがない人も、彼らの音楽が好きではないという人も、このパフォーマンスを前にすれば何かしら感じ入ることがあるはずだ。ライヴの構成や演出、演奏の出来、観客との一体感など、そうしたひとつひとつの要素ではなく、4人の存在という次元で感動させられた一夜だった。果たして、この充実ぶりを本人たちは実感しているのだろうか。
Text : New Audiogram
photo : Mitch Ikeda
Set List
01. DANCE LITTLE LIAR
02. BRIANSTORM
03. THIS HOUSE IS A CIRCUS
04. STILL TAKE YOU HOME
05. THE VIEW FROM THE AFTERNOON
06. CORNERSTONE
07. POTION APPROACHING
08. PRETTY VISITORS
09. CRYING LIGHTNING
10. SKETCHEAD
11. I BET YOU LOOK GOOD ON THE DANCEFLOOR
12. DANGEROUS ANIMALS
13. SCECRET DOOR
14. MY PROPELLER
15. RED RIGHT HAND
16. DO ME A FAVOUR
17. FLOURESCENT ADOLESCENT
18. THE JEWELLER'S HANDS
-Encore-
19. IF YOU WERE THERE, BEWARE
20. 505
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