2009.11.24 (tue) @ Shibuya CLUB QUATTRO, Tokyo
ACTs : MAE / OWL CITY
会場に入ると目に飛び込んできたのは、ステージ後方を覆う黒い幕に書かれたOWL CITYという白い文字。先陣を切ってオープンニング・アクトを務めるのは、そのアメリカでビルボード・シングル・チャートを賑わせている大型新人だ。初来日でMAEのサポートを務められたことは、OWL CITYにとっても、この日のオーディエンスにとっても有意義なことだったはずだ。
場内が暗転するとOWL CITYことAdam Youngがキーボード、ヴァイオリン、チェロ、ドラムの楽隊を引き連れて静かに登場。エレクトロ・ポップをベースにしながらも、生楽器でのプレイをレイヤーすることによって、打ち込みの無機質な印象を人間味のあるサウンドとして変換していく。何よりも、その表現の真ん中にあるのはAdam自身のプレイであり、歌であったのは言うまでもない。オーディエンスの賞賛と熱気とは対象的に、すべての演奏を終えたAdamは静かにステージを後にした。
OWL CITYが暖めたフロアは受け入れ体勢万全。ステージ上のスタンバイも整うと、いよいよ本日のメイン・アクトであるMAEが登場した。ステージ上は先ほどのOWL CITYとは対照的に白いスクリーンがステージ後方を覆っている。今回のライヴでは3D映像での演出もあり、オーディエンスが赤と青のフィルムの張られた3Dメガネを手にして要所要所でメガネを片手にライヴを楽しんでいた。
ステージ後方のスクリーンに映し出された朝日を背に「EMBERS AND ENVELOPES」からスタート。映像の演出が曲の持つ壮大さを最大限に引き出していく。「THE HOUSE THE FIRE BUILT」では軽快なドラムのビートに合わせて、オーディエンスがハンドクラップで応戦して盛り上げていく。そして、序盤にして早くも誰もが望んでいた「SUSPENSION」のイントロが鳴り響くと、会場のヴォルテージが一気に上がり、サビのフレーズで頭上に拳と手のひらを掲げての大合唱が早くも巻き起こった。
映像に誘われるように、曲が進む。スクリーンに時を刻むデジタル表示が映し出されて始まった「THIS TIME」では、ヴォーカルのDave Elkinsが足りないとばかりにハンドクラップを要求する。静かな鍵盤の旋律にギターとベースのハウリング音が徐々に重なっていき、音の渦がピーク迎えると同時に「SOMEONE ELSE'S ARMS」のイントロが鳴り響くと歓喜の歓声で会場が揺れる。そう、今日のMAEに出し惜しみという言葉は無用。曲のサビではマイクをオーディエンスの方へ向けて歌わせたり、ブレイク後のアカペラ部分を観客に歌わせたりと、この曲で会場の一体感をさらに加速させていく。
シンセとベースのユニゾンが印象的な「READY AND WAITING TO FALL」をプレイし、笑顔で満足げなMCを少し挟んだ後、デビュー・アルバムから、疾走感で持っていくキラー・チューン「SOUNDTRACK FOR OUR MOVIE」、感情的なサビへの展開が印象的な「SUMMERTIME」、ギターのディレイが印象的な「Just Let Go」を立て続けに披露。初期の楽曲もバンド経験と新たな演出や表現によって、また違った息吹が吹き込まれる。
短いMCを挟んで、ライヴは続く。新曲「THE FIGHT SONG」ではDaveがギターを置き、ハンドクラップでオーディエンスを先導。曲の終盤にはマイクの側にセットされたフロアタムを一心不乱に叩き、いつもとは違ったパフォーマンスも見せてくれた。続く「ANYTHING」でDaveは再びギターに持ち替え、このミディアム・ナンバーを力強く歌い上げる。そして、オーディエンスが待ち望んだ「THE EVERGLOW」をここで投下。サビでは800人のコーラスが手を挙げての大合唱が起こる。本編の最後は「NIGHT / DAY」で締めくくり。オーディエンスは曲が持つ"静と動"をメンバーと共に感じ、曲の最後まで感情をリンクさせ、歌い、身を委ねていた。
止まないアンコールの拍手に応え、再びオーディエンスの前に姿を見せた彼ら。2曲をプレイし、再び止まない拍手の中、ステージを後にした。終わってみれば、新しいアルバムの楽曲の良さもさることながら、過去の曲の素晴らしさも、MAEというバンドの経験値によって、今もなお進化し続け、生まれ変わり続けている。メロディの素晴らしさが突出した2バンドの競演が生み出した多幸感に満ちた空間の余韻をいつまでも感じていたいと願うライヴだった。
Text : New Audiogram
Photo : Masanori Naruse