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ゆらゆら帝国 "LIVE2009.WINTER"

今年の秋にDFA Recordsと契約し、US東海岸ツアーを行うなど、独自の道を突き進むゆらゆら帝国。年末まで精力的なライヴ活動を続けるが、ひとまず新木場スタジオ・コーストで行われたこのライヴが2009年最後のワンマン公演となる。

「あ、どうも、こんばんは」という坂本慎太郎のそっけない挨拶のあと、ライヴは「冷たいギフト」でスタート。激しいエコーですべての音がモワンモワンと渦巻き、まるで水の中にいるような気分になるが、不思議とドラムだけは乾いた音をはじき出していく。そのまま「なんとなく夢を」「ソフトに死んでいる」と白昼夢のようなナンバーが続き、軽快なリズムを繰り出す「男は不安定」でフロアがあたたまったところで、2曲の新曲が披露される。1曲目は変則的なベース・リフにギターが複雑に絡み合う、摩訶不思議な念仏風の曲。なにやら巨大な"穴ぼこ"について歌っているようで、"正気でいるのがツラい……"と繰り返す坂本の声が妙にエロい。

次の曲は和風マイナー調のリフを繰り返し、虚無感を誘う"田んぼ"の歌。間の抜けた音頭のようなサウンドで"おまえの田んぼに身がはまっていく"という歌詞を繰り返されると、なんとも気味が悪くていい。それにしても"穴ぼこ"だの"田んぼ"だの、声に出して読みたい日本語をセレクトする坂本の作詞センスは、ますます磨きがかかっているようだ。

その後は「グレープフルーツちょうだい」からディープな世界へ突入。ギターの轟音で聴き手をビリビリ痺れさせたあと、「3×3×3」の不吉な物語へと引きずり込む。"そして5年、そして10年、そして15年……！"と坂本の声のトーンが上がるごとに眩しい光が放たれ、激しいハレーションを巻き起こす。終盤では絶叫とともにテンポ・アップしていくカオスなアレンジで、ズブズブと仄暗い世界へと潜っていく。底へ、底へ……。

ここで少しのブレイクを挟み、メロウな「恋がしたい」で甘いムードにきり変えたあと、再び新曲を披露。ねっとりしたギターの音色が陶酔を誘うスロウ・ナンバーで、一昔前の刑事ドラマにハマりそうなベタな哀愁感がムンムン漂う。そしてトローンとまどろんだ空気のまま、名曲「空洞です」へ突入。不思議な明るさを持つこの曲で、やっと浮上できるのか……と思いきや、次の「あえて抵抗しない」で時空を曲げるような不協音を繰り出し、またもや暗い穴の中へ突き落とされる。ミヤンミヤンと虫の鳴き声に聴こえるギターの歪んだ音にいよいよ具合が悪くなってくるが、このキモチ悪さが快感に変わるまで、あと少し。この焦らしプレイのあとには、ギター・ノイズと強烈なライティングによる"解放"が待っている。ここからは比較的アッパーな曲が続き、フロアはやっと踊れるという開放感で狂喜乱舞。ステージ上の3人も髪を振り乱して轟音を繰り出し、坂本は激しくタンバリンを打ち鳴らす。

この勢いで最後まで走り抜けるかと思ったら、ここでまたもやダウナーな「ロボットでした」が投下され、再びどんよりした空気に逆戻り。ノイズの波に呑み込まれながら、この宴はどこに向かっているのだろう……と不安に襲われたところで、最後に演奏されたのは「無い!!」。突然ミラーボールがキラキラとまわりだし、朗らかなメロディがフロアの空気を陰から陽に染めていく。さんざんドープな世界を繰り広げながらも、最後はみんなでキレイな夕日を眺めて解散、みたいなあっけないエンディングに呆然。これはハッピー・エンドなのか、諦観の境地なのか？　最後までゆらゆら帝国の手のひらで踊らされ、翻弄される一夜だった。

Text : Reiko Tsuzura
Photo : Hitoshi Kato

EDITOR'S CHOICE LIVE REVIEW : ゆらゆら帝国 "JAPAN TOUR 2009"

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