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THE BAWDIES "ONE MAN TOUR 2009"

誕生から50年以上の月日が経つ"ロックンロール"という言葉には、時の流れと共に、随分と曖昧で観念的な意味合いが付きまとうようになった。ロックンロールは自由な音楽？ 確かにその通り。じゃあ作り手やメディアが、"これがロックンロールだ"と言ったら何でもそうなのか。もちろんそんなわけはない。互いに帰る場所を持たない者同士の間に生まれた混血のダンス・ミュージック。それがロックンロールだ。そして今年、このロックンロールという音楽を正しくリスナーに伝えるバンドが日本のメジャー・シーンに登場した。

THE BAWDIES。メジャーからの1stアルバム『THIS IS MY STORY』をリリースして以降の彼らの快進撃は、考えれば考えるほど痛快だ。根っからのロックンロール好きはもちろん、巷で騒がれるポップスにはどうもなじめず、居場所を見つけられずにいた若い世代が一斉に彼らを発見し、飛び付いたのだ。THE BAWDIESを通して彼らは"ロックンロール"という未知の音楽に出会った。これに興奮しないわけがない。

ワンマン・ツアーのファイナルとなるこの日のリキッドルームも、ロックンロールに飢えたオーディエンスでみごとに膨れ上がっていた。視線がステージ上に集まる中、いよいよ4人が登場。すぐさまモータウン譲りの軽快なビートが鳴り始める。「EMOTION POTION」だ！ アルバムのリード・トラックでもあるこの曲でフロアは一気に狂喜の渦へ。なによりもまずROYの声に驚かされる。どの音域でも太さの変わらない彼のしゃがれ声は、もはや真似事のレヴェルでは片づけられない。これだけでこのバンドが本物だと確信するのに十分すぎるくらいだ。

緩急をつけることなくステージは進行していくのだが、フロアの熱は一向に落ちない。ひとつとして同じリズム・パターンが出てこないから、とにかく飽きがないのだ。これは彼らの音楽的レンジの広さと、それに伴う技術あってのものだろう。フロアは縦ノリと横ノリの動きが入り乱れている。そんなオーディエンスに向けて彼らは執拗な程にコール＆レスポンスを求める。ロックンロールという音楽の多彩さを演奏と楽曲の力のみで伝えながら、会場の一体感は切らさない。オーディエンスも楽しむことに本気だ。

ROYとTAXMANが掛け合いで歌う「MY LITTLE JOE」、フロント3人の見せるアクションが楽しい「I BEG YOU」などを経て、いよいよ「IT'S TOO LATE」へ。南部のフィーリングを漂わせるJIMのスライド・ギターにROYのソウルフルな声が乗っかる。彼らが探求を続けてきたリズム＆ブルースやソウルと、Hi-STANDARDと出会って以降、培ってきた感性が合致しつつあることを告げる、まちがいなく現時点で最良の1曲だ。フロアの反応も格別。その余韻に浸る間も与えず「YOU GOTTA DANCE」になだれ込んで、本編は終了。息つく暇もなかった。

アンコールを求める声は1度では鳴り止まず、最後の最後に披露されたのが「SHAKE YOUR HIP」。そう。ロックンロールはケツふって踊んないとね。ホント最後までやることがニクいバンドだ。彼らを見ていると、日本のポップ・シーンの最前線にロックンロールがやってくる日も遠くないような気がしてくる。もしTHE BAWDIESに対して"ルーツ・ミュージックに固執したレトロなバンド"という誤解がまだ残っているようなら、ここで意地でも払拭させようと躍起になるところだったけど、もはやそんな必要はないのかもしれない。この日に集まったオーディエンスのがむしゃらに踊る姿を見ていると、そんな気持ちになった。

Text : Yuya Watanabe
Photo : Takuma Mori

PREMIUM : 「IT'S TOO LATE」 Interview

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