2012.7.15 (sun) @ LIQUIDROOM ebisu, Tokyo
開演前、満員のリキッドルームの場内には、盟友LOSTAGEの新作『ECHOES』(辻がゲスト参加している)が流れている。ファーストEP『into the green』発売記念のワンマン、『望郷』と名付けられたこの夜のライヴは「水平線は夜動く」「たっぷりやりますので」という前半のMCの通り、全20曲にわたって、cinema staffの個性を楽曲のヴァリエーションとヴォリュームで提示してみせた。全ての楽器の鳴りが有機的に絡み合うスケールの大きなアンサンブルを武器に、彼らの軌跡とディスコグラフィーを辿るセットリストも、メジャー・デビュー作ということよりも、あくまでこれまでの表現の延長線上にある作品であることの表明であると感じた。
とはいえ、『into the green』でリ・レコーディングされた「AMK HOLLIC」「KARAKURI in the skywalkers」といったこれまでの楽曲の説得力の深まりには目を見張るものがあったし、途中でベースの三島が「LOST IN TIMEの海北さんが『(メジャー・デビューは)ベストタイミングだ』というのはほんとうだと思う」という発言など、随所に彼らの並々ならぬ決意を感じた。なによりも、この日のアグレッシヴさとリリカルな歌ごころの双方のレンジを拡張したライヴ運びは同輩のなかで一頭地を抜いていた。途中、機材のトラブルにも動じず、矢継ぎ早にテクニカルな楽曲を連発。そのなかでも、9月5日にリリースが決定している4枚目のミニ・アルバム『SALVAGE YOU』からプレイされた「奇跡」は彼らのストレートなポップサイドが前面に出た疾走感あふれる楽曲で、バンドのポテンシャルをこうしたポップネスで見せることができるところに、バンドとしての成長を感じてやまなかった。そしてやはり、この日のハイライトは本編最後に演奏された「into the green」だろう。タイトルの通り緑の照明のなか、草いきれや夏の匂いなどがボーカル飯田の伸びやかで憂いを持つ声から取るように伝わってくる。
そしてアンコールでは、「まさか自分がここでやるとは思っていなかった」と思い出を語ったリキッドルームで初めて観たバンド、9mm Parabellum Bulletの「Talking Machine」をリスペクトを込めてカヴァー。これがまた、いい意味で両バンドの個性の違いが浮き彫りになる解釈で興味深かった。cinema staffのほうが狂気をその内省に隠し持っていると言えばいいだろうか。もちろん最後に付け加えておきたいが、エキセントリックで無軌道な彼らの暴力性も薄まったわけではない。アンコール「Poltergeist」では辻に加え、飯田もダイブを決行し、新たな船出をオーディエンスとともに祝った。とにかく叩き上げのライヴバンドという形容がふさわしいcinema staffのこれからの歩みを見逃さないように。
Text : Kenji Komai
Photo : Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)
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