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LIVE REVIEW

"Hostess Club Weekender"

2012.11.3 (sat) & 4 (sun) @ Zepp DiverCity, Tokyo
ACTs :
Day1 : DINOSAUR JR / FUCKED UP / ...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD PERFORMING "MADONNA" / THE WAR ON DRUGS / DEAP VALLY
Day2 : THURSTON MOORE / LOCAL NATIVES / EFTERKLANG / POP ETC / CLOCK OPERA

今回から場所をZepp DiverCityに移してのHostess Club Weekender。回を重ねるごとに、確実に新しいフェスのスタイルを定着させている感のあるこのイヴェント。今回も2日間にわたり、世界のインディーシーンにヴィヴィッドに呼応したラインナップで楽しませてくれた。


Day1 : 2012.11.3 (sat)

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1日目の最初に登場したのはロサンゼルス発、ヴォーカル/ギター+ドラムのガールズ・ツーピースDeap Vally。ホワイト・ストライプス、ロイヤル・トラックスの系譜を受け継ぐブルージーでダーティーなグルーヴ、でもそこにベスト・コースト的陽性なガレージ感を感じさせるのが新世代。「バゲッジが届かなくて着る服がないのよ」と言いつつシャウトするリンジー・トロイとドラムのジェリーの佇まいには新たなオルタナ・セレブになれそうな華がある。最後にプレイしたニュー・シングル「End Of The World」もカッコよかった。


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昨年リリースされたアルバム『Slave Ambient』も高い評価を得たTHE WAR ON DRUGSは終始アップリフティングなムードをフロアに作る。途中テレキャスターに持ち替えながら訥訥と歌い続けるアダム・グランデュシエルと、彼の引き立てるイマジネイティヴなバンドのプロダクション。とにかく粒ぞろいな楽曲で、いわゆるSSW的な風情を醸し出しながら、彼らの場合、サウンドのドリーミーなムードが横溢するので野暮ったさは皆無。そう『Slave Ambient』のジャケットのような空間だった。


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続いて...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD。今回は2000年に発表された『MADONNA』からの楽曲をメインにしたセットという触れ込み。90年代~2000年代の名盤がこうしたかたちで再発見されることは素直に喜びたい、というよりのっけからエモく硬質なバンドの音の塊に圧倒される。11年ぶりの来日を喜び、フロントのジェイソン・リースが途中ドラムにパートを変わったりしながら、感情のブレや世界の不穏さそのまま伝えるようなストイックな演奏を続けた。


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そしてFUCKED UPは今年フジロックに続き2回目の来日。2曲目から既に半裸、「昨晩、新日本プロレスを観てきた」「誓ってもいいけど、バンドを組んだときから日本に来るのが夢だった。日本のハードコア・バンドは最高だ!」と日本愛を語る巨漢ダミアン。セットの半分ぐらいはフロアに降り立ち、オーディエンスとハグしハイタッチを繰り返しもみくちゃになりながらシャウトを絞り出す。そのお茶目で情熱的なパフォーマンスと正統的なギターサウンドのギャップがなんとも痛快だった。


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初日ヘッドライナーのDINOSAUR JR、『Green Mind』期に来日したチッタで観た時と変わらず、Jはマーシャルのアンプを積み上げている(20年後にオリジナル・メンバーでしっかりニュー・アルバムも出すほど精力的に活動してるとは思いもしなかったけど)。この日はのっけから「Just Like Heaven」をプレイし、「The Wagon」「Freak Scene」など代表曲を網羅。ルー・バーロウが新作『I Bet On Sky』のジャケットが掲げられたステージ後方を指差し「オーマイガッ、このバナー見ろよ!」とおどけたり、チューニングする姿も絵になるJのオルタナ・ギターヒーローぶりは見ものだった。どれだけノイズを放出しても決して耳障りにはならない、レジェンドぶらないレジェンドの面目躍如だった。アンコールにはなんとFUCKED UPダミアンも加わってのセッションを披露し、1日目は終了した。

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Day2 : 2012.11.4 (sun)

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2日目のトップはCLOCK OPERAはポップとダンスの微妙な狭間を突く、そのバランス感覚がいい。リミキサーとしても名を知られる彼らだが、バンド編成でのライブでは、ドラムを中心にパーカッションを鳴らし、パーカッシヴな要素を随所に取り入れている。折衷的に様々なジャンルを横断するというよりも、ワンアイディアをループさせ膨らませていく、というような楽曲のスタイルとドラマティックなヴォーカルが組み合わさり、オリジナリティとなっている。


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CLOCK OPERAに続きPOP ETCを聴くと、音楽的方向性と編成に近しいものがありながら、また異なるアプローチが垣間見れて興味深かった。ミッドテンポのシンガロングできるソングライティングを中心に、エイティーズのフレイヴァーやブルー・アイド・ソウルのエッセンスなどが散りばめられている。7色の照明を浴びながら歌うヴォーカル クリストファーの吸引力とともに、こうしたソングクラフトができるアーティストにもっとフォーカスが当てられるべきだと思う。まるでジョン・ヒューズの青春映画に出てきそうなキラめくナンバー「YoYo」がハイライトとなった。


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新しいアルバム『Piramida』を発表したばかり、初来日となるデンマークのEFTERKLANGは、メランコリックでノーブルな世界観を現出。「Apples」をオープニングに「Black Summer」「Monument」など、シガー・ロスとも共通する繊細で透明感溢れる楽曲が続く。「みんなとても静かだね」とじっと聴き入るオーディエンスに語りかけながら、自然の厳しさ、ダイナミズムを音楽化したかのようなイメージが続く。ロシアのゴーストタウンでレコーディングしたと紹介する『Piramida』は、制作に密着したドキュメンタリーも準備されているというから楽しみにしたい。


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今回のフェスで個人的にもっとも楽しみにしていて、そして満足度も高いパフォーマンスを見せてくれたのがLOCAL NATIVES。来年1月にニュー・アルバムを予定している彼らは「今日は世界で初めて新曲をプレイするよ」と宣言してくれたが、そのどれもが素晴らしかった。とにかくタイトなバンド・サウンドとハーモニー、オルタネイティヴな感覚とAOR的清涼感が音源よりもさらにダイレクトに伝わってくる。トーキング・ヘッズのセカンドから「Warning Sign」のカバーもハマりすぎ。どんなフォーキーなナンバーでもビートにひねりをもたせる彼らのポテンシャルを堪能できるアクトだった。


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そしてトリとなるTHURSTON MOORE、ギターのKeith Wood、ベースのSamara Lubelski、ドラムのJohn Moloneyととともに「We Are Chelsea Light Moving」と新バンドを紹介する。そのものズバリな「Burroughs」、「ニューヨークの詩人フランク・オハラにインスパイアされた曲」と紹介する「Frank O'Hara Hit」、おそらくチェルシー・ホテルから名付けられたであるバンド名も含め、ニューヨークのカルチャー、ビートニク・ムーヴメントから影響の影響をかなり直接的に表現している。誰もが活動を休止しているソニック・ユースと比較してしまうことだろうけれど、Chelsea Light Movingも決してワンマンバンドではなく、他のメンバーとのしのぎを削ることで純化させていこうとしていることを、この夜のパフォーマンスから感じずにはいられなかった。髪を切り少年のようなルックスで、歌詞カードとスタンドとともに歌うサーストン、途中フロアに飛び込みストラップを紛失するほどのアグレッシヴなプレイをみせ、ダブルアンコールにも応えてくれた。来年3月にリリースされるというアルバムを期待して待とう。

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Text : Kenji Komai
Photo : Kazumichi Kokei




LIVE REVIEW : Hostess Club Weekender (2012.6.23-24)
LIVE REVIEW : Hostess Club Weekender (2012.2.18-19)


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