2010.5.28 (fri) @ ZEPP TOKYO, Tokyo
全国ツアーのファイナル・ステージの開演を待つ、会場のざわめきを打ち破ったのは……なんとギターの岩寺基晴と、ベースの草刈愛美の2名による打楽器! 舞台両翼に立つ2人の打楽器奏者が重たい鼓動を連打、連打、連打……。純邦楽のビートとサカナクションのバンドサウンドが融合する「21.1」は、ジャンル的には遠い位置にいる両者が素晴らしい相性で融合した。太いリズムがフロアを揺らし、電子音に彩られたメロディが響き渡る、インパクト大なシーンでライヴの幕は上がった。
「みんなお待たせ! #SAKANAQUARIUM 2010 “kikUUiki”"ファイナル、みんな用意はいいか! いくぞ!!」。前方へ押し寄せるオーディエンスの目の前で、両手広げて全身に力を込めながら山口一郎が叫ぶ。岩寺と草刈も、鎖から解き放たれたようにステージを躍動する。そして、バンドのボトムをドラムの江島啓一が支え、さらにその上をキーボードの岡崎英美が多彩な音色で彩る。「21.1」~「明日から」と続けたオープニング・ブロックを筆頭に、アルバム『kikUUiki』収録の最新曲を要所に数多く配置しつつ、「セントレイ」を始めとする人気楽曲もこの日のセットリストには並んだ。
重たい響きのサウンドに、ファルセットを交えたボーカルが妖しく絡む「YES NO」。鮮やかなレーザー光線に、美しいシンセの音色が重なった「アンダー」。そして、「シーラカンスと僕」から、民族楽器の笛のような音色へ繋いだのは「Paradise of Sunny」。リズム隊はダブにも似たダウンテンポでビートを刻み、山口が操るカオスパッドの音色が広がり、沈み、広がり、沈み……。バンドが一体になって奏でるリズムの上で、優雅に水中を泳ぐ魚のごとく揺れる音色はめちゃくちゃサイケデリック! 強力な陶酔感に目を閉じて浸りたくなるのを“今日はレポートしに来てるんだ……”と、仕事意識で必死で抑えこむ(笑)。
「今日で最後、みんな思い残すことなく踊って帰って下さい!」。ギターに再び持ち替えた山口が、曲中でオーディエンスを煽ったのは「ライトダンス」。リズミカルなギター・カッティングと極太ベースにハンドクラップが重なり、フロアの人波が跳ねる。そして、会場全体がメロディを歌い上げる。流れて、流れて、僕らは今うねりの中を泳ぎまわる、疲れを忘れて――。CMから流れてきたサビメロで心をわしづかみにされた人は多いに違いない「アルクアラウンド」も、サカナクションの魅力を象徴するような作品だ。ロックやポップスなどの定型から逸脱する様々な手法を取り込んでいる彼らのスタイルは、間違いなくプログレッシヴ。それと同時に、メロディーはどれも、聴き手に思わず口ずさませてしまうキャッチさを強烈に発揮している。大衆音楽への意識を十二分に感じさせながら、芸術表現と言ってもいいくらいの進歩性を感じさせるサカナクションの世界、その醍醐味をこの日もたっぷり味わせてもらった。
そして、アンコールでは8月4日にリリースする新曲「アイデンティティ」もいちはやく披露。個人的にはFRIENDLY FIRESあたりの世界観に似たものを感じた、ラテン風リズムとコーラスが爽快なアッパーソングに沸くアンコールでは、さらに……。山口による日本武道館ワンマン・ライヴ決定報告に、祝福の歓声が爆発! 「ひとつのターニングポイントっていうか、僕らにとっても大切な瞬間になると思うんでね……。あまり"武道館!"って気負わず、ライヴハウスでやるつもりで楽しみますんで、みんなぜひ遊びに来て下さい」
北海道から飛翔して、いまやロック・シーンの枠を超えて世間からも注目を浴びる存在にまで成長した彼ら。メンバー自身にとってはもちろん、日本の音楽シーンに新たな歴史を刻むターニングポイントにすら、10月8日の日本武道館公演はなるかもしれない。あの日本屈指の名会場を、サカナクションらしい高揚感で染める日が待ち遠しくてしかたがない。
Text : Toshitomo Doumei
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