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LIVE REVIEW

"Hostess Club Weekender"

2013.11.30 (sat) & 12.1 (sun) @ Yebisu Garden Hall, Tokyo
ACTs :
Day1 : NEUTRAL MILK HOTEL / OKKERVIL RIVER / SEBADOH / DELOREAN / TEMPLES
Day2 : DEERHUNTER / FOUR TET / JUANA MOLINA / OMAR SOULEYMAN / AUSTRA

毎回、魅力的なラインナップと、フードエリアやショップ、アーティストと間近に接することのできるサイン会にいたるまでのアットホームな空間演出で楽しませてくれるイヴェント "Hostess Club Weekender"。11月30日(土)と12月1日(日)、現在のインディー/オルタナティヴ・シーンが独自の視点でキャプチャされた2日間となった。

Day1 : 11.30 (sat)

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TEMPLES

初日の最初に登場したのはTEMPLES。まだフル・アルバムがリリースする前での初来日だが、同じUKのTOYやオーストラリアのTAME IMPALAら、現在次々と現れているテン年代のサイケデリックと言うべき酩酊感を持つバンド達に負けず劣らない、完成度の高いバンドサウンドを聴くことができた。スキニーでレイドバックしたルックスのカッコよさもさることながら、PRIMAL SCREAMのオープニング・アクトにも抜擢されるほどの確かなプレイヤビリティ、そう『SONIC FLOWER GROOVE』を出した頃の初期プライマルが現代にいたとしたら、こんな音を出していたんじゃないか、と思わせる。新曲としてプレイされた「Mesmerise」のディープなアウトロなど、随所に今後バケること間違いない、と思わせる頼もしさがあった。

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DELOREAN

続いてスペインから登場したDELOREAN。イーヴン・キックとシークエンスをベースに、分厚いシンセサイザーとトゥワンギーなギターが彩る。最新アルバム『Apar』からの楽曲を中心にシームレスに楽曲を繋ぎ、80年代後半のネオ・アコースティック的清涼さを持つメロディを主軸としながら、時折立ち現れるアンセミックなシンセ感とのバランスが心地よい。しかし、アップリフティングなムードなのにバンドの佇まいには享楽的なパーティー感は皆無で、彼らの音に内在するある種の「若さ」ゆえか、むしろひたむきさが強く伝わってくる。次は野外のステージでぜったい観てみたい!

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SEBADOH

そして、ささくれだった感情と奇妙な多幸感の両方を持つサウンドで90年代のローファイ・ムーヴメントの核を成したSEBADOHが、14年のブランクを感じさせない新作『Defend Yourself』を引っさげて登場。たまらなくメロウで人懐っこいナンバーと、暴力的にノイジーで破壊力ある楽曲を交互に淡々とプレイしていく、そのスタイルはまったく変わらない。客席には、若きころにグランジにハマったと思しき(自分含む)3~40代くらいのオーディンスが押し寄せていたけれど、彼らがこうして25年以上も活動を続けているのには、スリーピースの屈強なアンサンブルと、どこか琴線に触れてしょうがない歌ごころが共存しているからではないかと、ルー・バーロウら3人を呼ぶ声がひっきりなしに続くフロアから再確認してしまったのだった。

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OKKERVIL RIVER

4番目に登場したOKKERVIL RIVER。WILCOと並び、現在のオルタナティヴなルーツ~アメリカーナの系統のサウンドを響かせるバンドの筆頭として人気を博しているが、その丹念に編まれたソングフラフトはライヴでひときわ映えていた。「この美しい国に来られて光栄だよ」とMCで語ったフロントマン・ウィル・シェフは最新作『THE SILVER GYMNASIUM』が80年代の故郷の思い出をコンセプトにしていると解説したが、まるで良質なアメリカ文学を読んでいるような語り口と、演奏が続くにつれバックドロップに見下ろす街の画が浮かび上げる演出も心憎い。モータウンなリズムが軽快な「Lost Coastlines」からラストの「Unless It's Kicks」にある開放感に続く展開にはバンドの底力を見せつけられた。「次はNEUTRAL MILK HOTELだ!」とヘッドライナーにエールを渡して終了した。

NEUTRAL MILK HOTELの存在というより、彼らのレーベルElephant 6とその周辺のバンドたちの活躍はここ日本でも90年代後半にインディー好きの間にカルト的な人気を獲得したものの、その実態は想像するしかなかった。今回オリジナル・メンバーで来日した彼らのライヴは、セカンド『The Aeroplane Over The Sea』から「The King Of Carrot Flowers」でスタート。強烈なサイケデリアがぐるっと一周したポップセンスと、楽曲のインティメイトな雰囲気が横溢する。その反対に、フロアの前方ではクラウドサーフが起こるほどパンクな熱気が生まれている様子も面白い。本編ラストに配置された「Ruby Bulbs」~「Snow Song Pt.1」の荘厳な流れには圧巻。そして最も客席が湧いたのはアンコールの最初にプレイされた「Ghost」の時だったと思う。依然として彼らを突き動かしているものの正体がちょっとだけ掴めたような気がした夜だった。

Day2 : 12.1 (sun)

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AUSTRA

2日目のトップに出演したのはAUSTRA。新しいアルバム『OLYMPIA』と同じく「What We Done?」で幕を開けたステージ。ドリーム・ポップ的な現代感に、70年代映画を思わせる重厚なシンセを効果的に用いプログレの大仰さを加えたバンドのプロダクション。そこにPORTISHEADのベス・ギボンズやビョークを思わせる少しゴスが入ったケイティ・ステルマニスのヴォーカリゼーションが加わる。アルバムのリード曲でもある「HOME」の狂気を秘めた歌唱をはじめ、中盤で披露された、音源ではいささか控えめだったダークな世界観は白眉だろう。次々と革新的なアーティストが登場するカナダのインディ・シーンのなかでも異彩を放つ素材感を間近で感じることができた。

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OMAR SOULEYMAN

そして今回のラインナップのなかで、どんなパフォーマンスなのか最も謎だったのがOMAR SOULEYMAN。四つ打ちをベースに、独自のシンコペーションを追加し、ティピカルなアラビックの音階が駆使されたテクノなプロダクション。それに脳天気な掛け声と、OMARのコブシを効かせた妖術的なボーカルが延々と絡んでいく。近いといえばポンチャック、あの下世話さスレスレの感覚だ。相方のキーボーディストとともに、2人だけのステージながら、その過剰なまでに祝祭感あるサウンドにフロアもガンガン踊っている。ピンと背筋を伸ばしたままでオーディエンスを煽るそのカリズマティックな姿に爆笑しつつ、次に登場するFOUR TETをプロデューサーに迎え制作された『Wenu Wenu』にもあるように、彼が広めた「ダブケ」の真髄を生で堪能することができた。

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FOUR TET

そしてダンス・オリエンテッドながらインディ・ロック・ファンからも高い支持を集めるFOUR TETは、完璧な構成力を駆使したセットを披露してくれた。アルバム『Beautiful Rewind』から「Be Theaches Yoga」を皮切りに、インテリジェンスがあり、かつエモーショナルな「平熱感」を持つプロダクションが繰り出される。新作から「Our Navigation」「Buchla」「Kool FM」などヴォイスサンプルを要所要所に用いたナンバーが挟まれるのが印象深く、そこに時折ダビーな音響処理を加えていく。ラストの「Parallel Jalebi」まで、音響設計を楽しむだけでなく、そこにある不思議な郷愁を感じ取ることができた。

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JUANA MOLINA

アルゼンチン音響派の第一人者として日本でも高い人気を誇るアルゼンチンのJUANA MOLINA。ひとりでキーボード、ギター、コーラスをループさせてバックトラックにしていく技、今では多くのアーティストが用いて普通になったこのスタイルも彼女が先駆だった。今回はシンセ+ドラムという編成により、最新アルバム『Wed 21』にある緊張感に満ちたロックでダンサブルな面が強調されたセットであった。「新しいレコード買ってくれた?誰もいないの!?」とMCで呼びかけながら、オーディエンスを前にしたパフォーマンスというより、彼女の部屋に招かれて、その宅録制作の延長を観ているような感覚に誘われる。天然で愛らしいキャラクターながら、異次元にぶっとばされる。JUANA MOLINAのサウンドとは、素朴だけれどその正体は相当にドラッギーなのではないだろうか。

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DEERHUNTER

2日目のトリを務めるDEERHUNTER。アルバム『Monomania』はグズグズに崩れたシューゲイズなサウンドと、フロントマン、ブラッドフォード・コックスの50’s/60’s趣味が奇跡的なバランスで成り立っていた。以前にもATLAS SOUNDとしてこのHostess Club Weekenderに出演したコックスは、そのときとはうって変わりロックスター的なスーツできめている。ライヴにおいても新曲に「Rainwater Cassette Exchange」などを加え、オールドウェイヴな感覚とまどろみのなかに溶けていきそうなサイケデリックをミックスさせる。コックスの「この曲を日本でやるのが好きなんだ、なぜだかは分からないけど」というMCの後に『Microcastle』から「Nothing Ever Happened」を、そしてアンコールでは「Agoraphobia」もプレイした。2011年の『4AD evening』以来観るステージだったけれど、いい意味で「まっとうなバンド」としての屹立した姿が強く印象に残った。

Text : Kenji Komai
Photo : Kazumichi Kokei




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