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LIVE REVIEW

サカナクション "SAKANAQUARIUM 2012 ZEPP ALIVE"

2012.6.19 (tue) @ ZEPP TOKYO, Tokyo

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昨年11月に開催した自身初の幕張メッセ単独公演で、約2万人の大観衆とともに作り上げた巨大な一体感がいまだに記憶に新しい。その幕張メッセのステージで使った“チーム・サカナクション”という表現を、昨年に続いて開催された同名の全国ツアー“ZEPP ALIVE”の千秋楽、ZEPP TOKYOのステージでも彼らは再び使った。

山口「本編、MCなしで、“今”のサカナクションと昔の曲も色々混ぜながら……。新しい曲と古い曲を混ぜ合わせた、“今”の“チーム・サカナクション”を体感していただいたわけですが、楽しんでいただけたでしょうか?」

1曲1曲ごとの感触を自在に変化させながら、濃密かつ、あくまでも昂揚的に駆け抜けた本編全17曲を受けたアンコールで、彼らはそんな言葉を投げかけた。メンバーの演奏を、鮮やかな光や色彩、そして驚きに満ちた演出がサポートして、楽曲の世界観がよりダイナミックに広がっていく。そんな、聴覚と視覚の両面から大いなる刺激に満ちた“エンターテインメント”をオーディエンスに提供するのが、江島啓一、草刈愛美、岡崎英美、岩寺基晴、そして山口一郎からなる5人と、彼らのステージを作る全ての人間からなる“チーム・サカナクション”だ。

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全国6会場・9公演は全てソールドアウト、昨年以上の盛り上がりで展開された今年の“ZEPP ALIVE”。そのツアーファイナルとなったZEPP TOKYOは、SEのパーカッションにオーディエンスが手拍子を重ね、開演前から会場全体が一体となってリズムを刻む。そして、メンバー、スタッフとともにライヴを作るオーディエンスも加えた“チーム・サカナクション”の前に浮かび上がったのは、5人のシルエット。ステージ全面を覆う幕に浮かぶ、ラップトップ・パソコンに向かい電子音をループさせる人影にオーディエンスが激しく反応し、視界が一気に開ける! 始まりです、始まりです、始まりです……。まさにライヴの幕開けにふさわしいフレーズがリフレインした「Klee」から、「アルクアラウンド」「セントレイ」「モノクロトーキョー」と、これまでの数々のライヴでもオーディエンスを熱狂させてきたアッパー系のナンバーでZEPP TOKYOのオープニング・ブロックを飾る。

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“今”の“チーム・サカナクション”。山口が言った言葉を象徴する、これまでにない新たな試みが披露されたのは、まず「壁」だ。音と光が激しく交錯して熱気に包まれた序盤から一転、視界は突然さえぎられる。会場内の照明が落とされ、目に見えるのはステージ上に置かれたアンプなどの機材の赤色や青色の点滅のみ。そして、暗闇に包まれた中で、ゆっくりと、じわりじわりと音色が響いてくる。目から入ってくる情報が限りなく少ないからこそ、その空間では、音一つひとつを耳で全てとらえようとオーディエンスはステージへより強く引き込まれる。

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山口「今回のこの“ZEPP ALIVE”で、僕、ちょっと“見えた”んですよ。“ロック・エンターテインメント”っていうか、バンドっていうのを使って、もっと面白いことができるんじゃないかなって、今回のツアーをやってみて思いました。例えば、真っ暗になった曲とかあったじゃん。あれ、暗転だよ? 真っ暗になるとさ、音に集中するでしょ? で、バッと点いたら違うミュージシャンになってるとかさ(笑)。分かんないけど、でも、それすら楽しめるっていうこともできるかもしれないじゃん」

冒頭でも書いたアンコールでのMCで、オーディエンスをあっといわせた今回の演出について山口はそう語った。音の世界に聴き手をさらに集中させるために、普通では考えられない演出にトライするのもサカナクション流の“ロック・エンターテインメント”だ。他にも、新曲「ネプトゥーヌス」では、ドープな雰囲気を漂わせながら刻むリズムと音色の動きにその場で合わせたオイルアートの色彩がうごめき、『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』では山口が手をかざすと空中に浮かぶニンジャーライトがきらめき……。CDなどで音源を聴くだけでなく、会場に足を運び生のステージを目の当たりにするからこそ得ることができるものが、彼らのライヴにはたくさんある。

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そして、続けて強烈なインパクトを放ったのが、同じく新曲の「僕と花」と「boku to hana remix」。たおやかなサビのメロディが印象的な1曲を、桜色のやわらかな光が包む。サカナクションらしいダンサブルな感覚と、叙情感豊かな歌声の共存に胸を焦がされ、かと思えばビートがループする中でステージにスモークが立ち込め……。晴れた視界の先には、ライヴのオープニング同様にサカナクションのメンバー5人が並び、一同ゴーグルを着用してラップトップ・パソコンを操る。そして、ビート、メロディ、サウンド・エフェクトを5人が次々と放ち、それが絡まり圧倒的な高揚感を生み、フロアは踊り狂う。そう、この熱気と、お世辞ではなく本当に肌を振るわせるほどの音圧もまた、ライヴという現場に来なければ味わうことができないものだ。

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山口「どんどん“外”に発信していって、僕らの、ここに集まってるこのエネルギーに、音楽にさほど興味のない健全な若者が入り込んできてさ(笑)、みんなでエネルギーで包んでやったらたぶんその人音楽が好きになると思うんだよね。だから、外に出て行くことで変わったって思われるときもあるかもしれないけど……もし変わったなと思ったら、それは意図があるって思って下さい。かならずその裏では、考えてます。サカナクションは僕らだけじゃないからさ。ライヴのチームもあればレコーディングのチームもあるし、色んな戦略を立てて、本当に音楽が好きな人を増やそうと必死になってます。まず、自分が(音楽を)好きだからさ。だから、また新しく届いた曲だったりライヴだったりを、皆さんが気に入ってくれたら、またライヴに足を運んでください」

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前述の「僕と花」はドラマの主題歌(関西テレビ・フジテレビ系ドラマ『37歳で医者になった僕 ~研修医純情物語~』)、そして、アンコールでこの日初披露され、8月29日にニューシングルとしてリリースされることが合わせて発表された「夜の踊り子」は、世界的ダンサー/振付師・JONTE' がその音色を背に舞う姿が印象的な東京モード学園のTVCMに起用、etc……。昨今のサカナクションは、音楽シーンの枠を超える“外”の世界へ積極的に足を踏み入れる活動がたしかに印象的だ。そして、その数々の“連略”は、人それぞれで受け取り方や意見は様々あるに違いない。しかし、その“戦略”は山口が言うように、サカナクションの音楽を一人でも多くの人へ伝えるための手段であり、もっと言えば、サカナクションの楽曲も持つ“音楽のエネルギー”を感じてもらうための手段だ。高揚感、緊張感、叙情感、そして感動━━。様々な形で人の心を打つ、音楽だからこそ表現できる“エネルギー”を、他の多くのミュージシャン同様に、サカナクションもまた純粋に伝えるべく必死に試行錯誤しているのだろう。

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<この先でほら 僕を待ってるから行くべきだ 夢の続きは━━>。音楽を本気で愛する人々の輪を、もっと大きく広げられるように……。そんな“夢”を追い続ける彼らの足取りは、アンコールで披露した「ナイトフィッシングイズグッド」の歌詞とまさに重なるかのよう。<僕はシャツの袖で流した涙を拭いたんだ━━>。今回の“ZEPP ALIVE”を締めくくるダブルアンコールの「三日月サンセット」。も、自身の理想の音楽活動を続けていくために、ときには涙が流れるくらいの葛藤や苦悩を彼らは超えてステージに立っているんだという現実が浮かび上がってくる。そして、そんなハードな現実を超えて、音楽の楽しさを表現するサカナクションの真骨頂は、今回のツアーでもこれだけ多くの音楽ファンが全国で狂喜した彼らのライヴを観れば、一目瞭然で感じることができる。サカナクションだからこそできる、そして、音楽だからこそできる“エンターテインメント”が、これからもさらに一人でも多くの音楽を愛する人を増やしてくれることを願いたい。それができるだけの力を、“今”の“チーム・サカナクション”は間違いなく持っていると確信できたライヴだった。

Text : Toshitomo Domei
Photo : Daisuke Ishizaka (Hatos)




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